ホーム > Global Perspective 2013 >
Global Perspective 2013
2013年6月25日掲載

フランス:NFCはスーパーマーケットを変えるか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

フランスの大型スーパーマーケット「E Leclerc」のパリの店舗では2012年末にNFC(Near Field Communication:近距離通信)を装備した商品陳列棚が設置された。昨年末にフランスのソリューションメーカーStore Electronic Systems (SES)が47,000のNFCを装備した商品陳列棚を開発した。1948年に設立された「E Leclerc」はフランス全土に569店舗あり、欧州諸国で114店を展開している。フランスではよく見かける。2013年中にフランスの6店舗にNFCを装備した商品陳列棚を設置する予定である。
 2013年6月6日、SESはNFCを装備した商品陳列棚の拡大に向けてオランダのNXPと提携することを発表した 。現在4か国で8つのスーパーマーケットチェーンに導入しているが、今後は何百万ものNFC装備の商品陳列棚を展開していく予定である。

NFCで変わるスーパーマーケット

ユーザはNFC対応のスマートフォンに専用アプリケーションをダウンロードし、商品棚にかざすと、アレルギー表示など商品の説明がスマートフォンの画面に表示される。商品説明の他にスマートフォンへのクーポン配布なども行われる。さらに購入した商品のリストと専用支払機にかざすことによってスマートフォンで支払もできるシステムである。

今までスーパーマーケットや小売店でのNFCを活用したソリューションはもっぱら支払時(ペイメント)にかざすことか、クーポンの配布がメインだった。今回は商品陳列棚がNFC対応しており、商品の前で棚のラベルにスマートフォンをかざすと商品の詳細な説明が表示され、ユーザはそれを見て商品情報を把握して購入を決定するのである。
なおNFC対応のスマートフォンをかざして情報が表示されるシステムは街の観光案内、美術館・博物館、クーポン取得などでは既に多く実用化されている。

NFC装備の商品陳列棚、たしかに便利そうだが・・・

お店側やメーカーも商品の詳細な説明やクーポンをスマートフォンに表示させることができ、たくさんの情報は提供できるようになるから便利にはなるだろう。一方で、スーパーマーケットで陳列棚の前で選びながら、スマートフォンをかざして、画面に表示された商品情報をスーパーマーケットの中で見るのだろうか。時間がかかってしまうのではないだろうか。また高齢者のうち、どの程度の方がスマートフォンに専用アプリケーションをダウンロードしてNFC装備の商品陳列棚にかざして商品情報を細かくチェックするのだろうか。フランスだけに限ったことではないが、このような層がスーパーマーケットの顧客として一番多いだろう。フランスのスーパーマーケット「E Leclerc」は広い店舗をカートで買い物をしている。それでも買い物客が商品棚の間で立ち止まりながらスマートフォンの画面を見ていたら、他のお客様の買い物に迷惑になるのではないだろうか。

NFCを装備した商品陳列棚にスマートフォンをかざして商品情報を見て買い物をするという買い物スタイルが普及するには対応しなくてはならないことはまだ多い。それでもスーパーマーケットでの新しい買い物スタイルが登場してきていることは、これからが楽しみである。

(図1)「E Leclerc」

(図1)「E Leclerc」

(図1)「E Leclerc」

(図2)NFC対応スマートフォンで商品棚にかざしたあとの画面イメージ

(図2)NFC対応スマートフォンで商品棚にかざしたあとの画面イメージ

【参考動画】

*本情報は2013年6月10日時点のものである。

※1 SES(2013) Jun 6,2013 “NXP and SES Achieve Breakthrough
for Mass Adoption of NFC in Retail”
http://www.store-electronic-systems.com/sites/default/files/communiques/SES%20-%20PR%20NXP%2020130606%20VF.pdf

このエントリーをはてなブックマークに追加
▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。