ホーム > Global Perspective 2013 >
Global Perspective 2013
2013年6月25日掲載

インド:モバイルアプリは女性を救うのか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

インドのNPO団体であるNational Association of Software and Services Companies (NASSCOM)は2013年6月19日、女性の安全確保のために「All India App Fame Contest 2013」というコンテストを開催し、モバイル向けアプリケーションを開発する企業、学生、開発者など10団体を支援することを発表した。
 2013年のテーマは「女性の安心のために協力しよう(‘Collaborating forces for Women Safety’)」だった。今回ノミネートされた10のアプリケーションは女性が緊急の通知が必要な時や、危険に晒された時に役立つものとされている。

後を絶たないインドでの女性に対する事件

2012年12月にデリーで発生した集団強姦事件は日本や世界中のメディアでも報じられていたことからご存知の方も多いだろ。インドでは女性に対する性暴力事件やドメスティック・バイオレンス(DV)が後を絶たず、悲惨な殺傷事件にまで発展している。インドでは2012年に24,000以上の女性に対する性暴力事件があり、その数は1時間に3回の女性に対する性暴力事件が起きていることになる。10年前の1.5倍である。そのうち数千件は報告すらされていないとのことである。

特に地方ではいまだにカースト制度も残存しており、女性の地位が男性よりも低い地域がある。デリーやムンバイのような大都市でも女性に対する性暴力犯罪はあり、最近では幼女までが残忍な殺され方をしている。またインドでは夫による妻への激しいドメスティック・バイオレンス(DV)も多く報じられている。そして報じられるのは氷山の一角であり、実際にはもっと多いとのことだ。

女性向けモバイルアプリも重要だが

今回インドのNASSCOMが支援したのはスマートフォン向けに提供されるアプリケーションであり、それらは緊急速報のようなサービス特徴からGPS機能と連携し位置情報を通知するといったものが多い。そのためにはGPS機能に対応した高価なハイエンド端末が必要であり、誰もがそのような端末を保有してサービスを利用できるとは限らない。さらにインドにはまだ携帯電話を保有してない、所持できない女性もたくさんいる。

女性の安全確保と緊急通知を行うアプリケーションの開発と利用促進も重要である。これらのアプリケーションによって生命の危機から救われることも多いにあり得る。また啓発や危険からの抑止にもなるだろう。
 しかし、根源的にはこのようなアプリケーションの開発を必要としているインド社会自体を見直す必要があるのではないだろうか。インドでの女性の問題はカーストの問題とも密接に関わりが多いこともあり、外国人には理解し難い根の深い問題である。
 インドには解決しなくてはならない問題がたくさんあるが、インドの女性が平和に安心して生活できることを祈願している。

(表1)インドでの女性の安全確保のための10のアプリ

 

会社名 アプリ名 主な機能
1 Tech Mahindra FightBack 過去のSOS情報を元にGoogleマップで危険地帯を表示する。
2 Ideophone One Touch SOS SOSを出したら、詳細な場所情報を登録した家族、知人に知らせる。
3 Rain Concert Technologies inE networks アラートがあったら、GPSで位置情報が送付され、その場所にセキュリティ(ガードマン)がバイクで駆けつける。
4 PanicGuard PanicGuard 英国の会社で、90か国以上で数百万人が利用している。アラートが鳴り、登録している家族、知人に知らせる。
5 MindHelix Technosol Sentinel SOSを出したら、詳細な場所情報を登録した家族、知人に知らせる。
6 Hughes Systique India GoSurakshei SOSを出したら、SMSを登録している10人に送付する。FacebookにSOS情報を配信する。
7 Aucupa Innovative Solutions iFollow SOSを起動すると端末が揺れるだけで3人の連絡先に5秒おきに自動的に電話をかける仕組み。
8 KritiLabs SafeTrac ユーザが危険エリアに近づいたらアラートを送付する。SOSをしたら、SMSまたはメールを送信し場所を知らせる。
9 Telerik India SafeBridge SOSを出したら、近くにいる人に知らせる。
10 SmartCloud Infotech Nirbhaya SOSを出したら、事前登録したグループにSMSを送信、FacebookにSOS情報を配信する。

(NASSCOMの情報を元に筆者作成)

(図1)FightBackの広告

(出典:Tech Mahindra)

【参考動画】

(参考)

*本情報は2013年6月20日時点のものである。

このエントリーをはてなブックマークに追加
▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。