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Global Perspective 2013
2013年7月17日掲載

スマートフォンやりすぎによる頸椎椎間板ヘルニア

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年7月16日の毎日新聞朝刊(7面)に「韓国 若者に首の異常急増」「スマホやり過ぎ一因か」という見出しの小さな記事が出ていた。小さな記事で出ていたので、気がつかなかった人も多いかもしれない。スマートフォンのやりすぎが、新たな健康問題を引き起こそうとしているようだ。

韓国で増加する若者の頸椎椎間板ヘルニアの患者数

韓国保健福祉省所管の国民健康保険公団が韓国で若者を中心に頸椎椎間板ヘルニアの患者数が増加しているとのことである。そしてその要因がスマートフォンのやりすぎではないか、と分析している。短い記事なので毎日新聞の朝刊記事を引用しておく。

(以下引用)

 韓国保健福祉省所管の国民健康保険公団は15日までに、同国で20代を中心に頸椎椎間板ヘルニアが急増しているとの調査結果を発表した。うつむいた姿勢でのスマートフォン(多機能携帯電話)の使い過ぎが一因とみられるという。
 2007〜11年の頸椎椎間板ヘルニアの患者数を調べたところ、年平均で8%増加。特に11年は前年比で12%も増えた。人口10万人当たりの11年の増加率は、20代が15%と最も高かった。
 専門家は、10年ごろにスマホの普及が進み、若い世代が長時間使うようになったことが影響していると分析。スマホを使うとき、長時間うつむくことが首に負担をかけているとの見方を示した。歩きながら下を向いて使うのは特に悪いとして、なるべく前を向き使うよう呼び掛けている。(毎日新聞2013年7月16日朝刊7面)
(以上)

たしかに韓国では青少年のスマートフォン中毒が女子8.3%、男子2.8%で中毒使用群として平日に平均7.8時間スマートフォンを利用しているそうだ(※1)。

日本人の月間スマートフォン利用時間:男性34時間、女性47時間

スマートフォンの利用時間が長く、韓国で多くの若者が頸椎椎間板ヘルニアになってしまうというニュースだが、日本も決して対岸の火事ではない。日本でのスマートフォンの利用動向を見ていく。2013年4月に調査会社ニールセンがスマートフォン・メディア利用実態調査レポートを発表した(※2)。それによると、

  • インターネット利用者の中でのスマートフォンからのインターネット利用割合が2013年1月で35%に達した。
  • 2012年では20代の利用割合が大きかったスマートフォンからのインターネット利用が2013年にかけて年齢の高い層にも普及している。
  • 一人あたりの利用時間、一人あたりの利用頻度とも月を追うごとに伸長している。また、アプリとブラウザの利用内訳ではアプリの利用がブラウザよりも多い。

(表1)インターネット利用率推移 デバイス別

(表1)インターネット利用率推移 デバイス別

(表2)性年代別 スマートフォン利用状況(2012年3月期、2013年3月期)

(表2)性年代別 スマートフォン利用状況(2012年3月期、2013年3月期)

(表3)一人あたりの月間利用時間 男女別

(表3)一人あたりの月間利用時間 男女別

(出典:ニールセン)

同社のスマートフォン利用動向レポート「Mobile NetView」の3月分のデータによると、スマートフォンの1人あたりの月間利用時間は女性が47時間、男性が34時間となっており、1日あたりで考えると女性の方が平均で25分程度長く利用している(※3)。男性で1カ月に34時間ということは1日平均1時間強スマートフォンを利用していることになる。

対岸の火事ではない頸椎椎間板ヘルニア

業務でPCを利用している人は1日のうち大半をPCの前で仕事をしていることが多い。そのため、1時間PCに向かったら10分間休憩しましょう、といった注意喚起がされている。インターネットへのアクセスは現在ではまだPCが圧倒的に多いが、それでもスマートフォンでのアクセスが急増している。また日本では30代、40代のスマートフォンの利用が急増している。

韓国人だけがスマートフォンのやりすぎで頸椎椎間板ヘルニアになることはない。日本人も同様に注意が必要である。適度に運動をしたり、長時間猫背でスマートフォンを眺めないなど日々の工夫と注意が必要である。スマートフォンは生活に欠かせないだろう。しかし病気予防と対策も重要である。

*本情報は2013年7月16日時点のものである。

※1 聯合ニュース(2013年3月26日)
ソウル市立江北インターネット中毒予防センターが青少年のスマートフォン利用実態を調べた結果を発表した。調査は昨年11〜12月、ソウル市内の小中高生と大学生の計1600人を対象に実施し、1447人から回答を得た。調査の結果、回答者の5.9%がスマートフォンの「中毒使用群」だった。中毒使用群は専門的な相談が必要な潜在的危険群と集中治療が必要な高危険群を示す。スマートフォン中毒率を性別でみると、女子が8.3%となり、男子(2.8%)の約3倍に達した。また、中学生(8.5%)が小学生・大学生(ともに5.0%)、高校生(4.7%)より高かった。学年別では小学6年生(11.8%)、中学3年生(9.3%)、中学1年生(8.8%)、中学2年生(7.4%)などの順だった。中毒使用群は平日に平均7.8時間、週末に9.8時間スマートフォンを使っていた。67.1%はチャットを利用した。スマートフォンを使用する理由では55.3%が「面白いから」、17.6%が「暇だから」と答えた。回答者の58.1%の親はスマートフォンの使用時間を制限していなかった。また79.7%は使用内容を確認していなかった。スマートフォン中毒率は親が使用内容を確認していない場合(6.4%)が確認する場合(4.5%)より高かった。一方で、親が使用時間を制限する場合(7.9%)は制限しない場合(4.6%)より中毒率が高かった。同センターはスマートフォンの使用内容を確認することが中毒予防に効果的であることを示していると説明した。「重い憂鬱(ゆううつ)」と回答した青少年の14.5%、「軽い憂うつ」の7.9%、「正常」の3.0%がそれぞれスマートフォン中毒となっていた。

※2 ニールセン(2013年4月3日)「2012年、スマートフォンからのインターネット利用が倍増」
http://www.netratings.co.jp/news_release/2013/04/News20130403.html

※3 ニールセン(2013年5月28日)「ニールセン、スマートフォンの利用者属性別のサービス利用状況を分析」
http://www.netratings.co.jp/news_release/2013/05/20130528.html

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