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Global Perspective 2013
2013年7月29日掲載

「あまちゃん」に見る公衆電話とテレホンカード

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年4月からNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が放送されている。ドラマの中で主人公の天野アキ(能年玲奈さん)がアイドルを目指して東京に出てきている。そして天野アキの母親、天野春子(小泉今日子さん)が昭和後期から平成初期にかけて同じく東京に出てきていた時の回想シーンがある。その中で母親の天野春子が若かった平成元年(1989年)に上野駅からテレホンカードを用いて公衆電話から電話をするシーンがある(若き日の天野春子は、有村架純さんが演じている)。そして天野アキが東京に来ている現代の時代設定は2008年〜2009年であることから、携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラケー)で会話している。

最近ではあまり見かけなくなってしまったテレホンカードの公衆電話で電話する1989年(平成元年)と携帯電話で電話をしている2009年の20年の間に技術発展と社会変化を垣間見られる。1989年当時まだNTTドコモも設立されてなかった。携帯電話も肩からかけて利用するタイプのもので、誰もが持てるようなものではなかったため、外出先から電話する時は公衆電話で10円硬貨かテレホンカードで電話をかけていたものである。本稿では公衆電話とテレホンカードの推移を見ていこう。

公衆電話の推移

かつては町のあらゆるところで見かけた公衆電話だったが、携帯電話の普及によって最近ではほとんど見かけなくなってしまった。昭和60年度末には全国に約90万台あった公衆電話も平成24年度末には約21万台にまで減少してしまった。今後も公衆電話が増加することはないだろう。

(表1)公衆電話設置台数の推移(昭和60年度末〜平成24年度末)

(表1)公衆電話設置台数の推移(昭和60年度末〜平成24年度末)

(表1)公衆電話設置台数の推移(昭和60年度末〜平成24年度末)

(出典:NTT東日本発表資料および「平成25年情報通信に関する現状報告(総務省)」を元に筆者作成)

テレホンカードの推移

テレホンカードは1982年(昭和57年)12月に旧日本電信電話公社(電電公社)が発行、発売を開始し、最盛期の平成6年〜7年には年間約4億枚販売していた。そして平成15年には約3,000万枚にまで落ち込んだ。公衆電話の減少と並行してテレホンカードの販売枚数も激減しており、今後V字回復する見込みはない。

(表2)テレホンカード販売枚数の推移(昭和57年度〜平成15年度)

(表1)公衆電話設置台数の推移(昭和60年度末〜平成24年度末)

(表2)テレホンカード販売枚数の推移(昭和57年度〜平成15年度)

(出典:NTT東日本発表資料を元に筆者作成)

いずれフィーチャーフォンも「懐かしい電話」に

携帯電話の普及によって公衆電話とテレホンカードが減少してしまうことは時代の流れであり、止めることはできない。これからも「あまちゃん」のようなドラマで昭和時代や平成初期の時代設定のもので公衆電話やテレホンカードを見かけて、当時を懐かしく思い出す人も多いだろう。そしてドラマ「あまちゃん」の現代(2008〜2009年の設定)のシーン中で利用されている携帯電話はフィーチャーフォンである。当時はスマートフォンが登場し始めた時期で、まだ多くの人がフィーチャーフォンを利用していた。いずれスマートフォンが普及してくると、フィーチャーフォンも「懐かしい電話」になるのだろう。そしてそのスピードは公衆電話の衰退よりも早い。

*本情報は2013年7月28日時点のものである。

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