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Global Perspective 2013
2013年8月2日掲載

スペイン:利用していない自宅の回線を他人にWi-Fiとして提供する「BeWifi」

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

スペインの通信事業者Telefonicaの傘下で研究開発(R&D)を行っているTelefonica I+Dは利用していない家のWi-Fi(公衆無線LAN)回線(帯域)を他のユーザが利用できる「BeWifi」というサービスのトライアルを行っている。

利用していない他人の家の回線でWi-Fiを利用する「BeWifi」

「BeWifi」とはTelefonicaが提供するMovistar ADSLを契約している家のWi-Fiルータに「BeWifi」専用のボックスを接続することによって、その家で回線を利用していない時には、その家の回線(帯域)を他の人がスマートフォンなりタブレットなりで自動的に掴んでWi-Fiに接続することができるというサービス。利用していない回線(帯域)を有効活用することが目的で、セキュリティも問題ないとTelefonicaは述べている。
 「BeWifi」を設置する家も、利用するユーザもセキュリティは確保されているとのことだが、どの程度の範囲(距離)で自動的に認識してWi-Fiに接続してくれるのかは公表されていない。ADSLを導入している多くの家で「BeWifi」ボックスを設置されればされるほど、ユーザは街中のあらゆる所で自動的に利用していないWi-Fiに接続することができるようになる。1つのエリアで多くの「BeWifi」が設置されていても電波の干渉は最小化されるように設計されているそうだ。Wi-Fiのスピードはその時の利用可能な帯域によって異なる。
 また自分の家で自分や家族がWi-Fiに接続している時は自分への帯域割り当てが優先される。つまり自分が利用している時は他人に自分のWi-Fiを利用されることがないので「BeWifi」に帯域を提供する家庭の人も、自分が自宅で利用する際には快適に自宅の回線をフルで利用できる。あくまでも「利用していない」時だけ知らない人にWi-Fiとして回線を提供するそうだ。

「BeWifi」はまだトライアルの段階だが、2008年からTelefonica I+Dが開発しており、同社はその特許を保有している。具体的な商用開始時期、費用は現時点では明らかにされていない。現時点ではTelefonicaのユーザのみが対象。バルセロナ(スペイン)でトライアルは実施し、成功をおさめており、次は同社が事業展開を行っているブラジル、ペルー、アルゼンチン、コロンビアでトライアルを実施する予定。

どれだけ多くの家が「使わない回線」を提供するかが普及のカギ

通信事業者にとっても3Gネットワークのオフロード用に別途Wi-Fiを設置しなくとも、利用していない家の回線に自動的に接続してもらうことによって既存の回線や設備の有効活用ができる。
 そのためには自宅でADSLを契約しているユーザがどれだけ「Bewifi」の提供に協力してくれるかが、普及のカギになるだろう。つまり自分が自宅で回線を利用していない時に、他人が「自分の利用していない回線」にWi-Fiで自動的に接続することを許容してくれる家が多ければ多いほど、このサービスは拡大する。自分が利用する際は自分の接続が優先されるようだから、常に他人に利用されて自分が利用する際に回線接続でストレスを感じるということはなさそうだ。

自宅でADSLなり光なり回線を契約していても24時間常時利用しているということは少ないだろう。利用していない時には自動的に他人に、その空いている回線を提供することに対する心の壁を取り払うことができるかどうかが重要だろう。そのためには商用化する際には「利用していない回線」を提供する側にどのようなメリットがあるのか、彼らの提供料金はどうなるのか注目していきたい。

スペインのTelefonicaはADSLを敷設している家庭が対象である。日本では光回線が多くの家庭で導入されているが、この光回線も家で常時使われていることは少ないだろう。昼間は誰も家にいないという家庭も多いのではないだろうか。利用されていない時の回線の有効利用としてスペインの「BeWifi」は参考になるのではないだろうか。

【参考動画】
「BeWifi」(スペイン語)

*本情報は2013年8月2日時点のものである。

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