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Global Perspective 2014
2014年1月20日掲載

「スマートコンタクトレンズ」は糖尿病患者を救うのか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

グーグルは2014年1月16日、医療用「スマートコンタクトレンズ」を開発していることを発表した(※1)。コンタクトレンズは2層構造のソフトコンタクトにセンサーとチップ、そして無線通信用のアンテナを挟んだ構造となっている。糖尿病患者向けの治療を目的としている。糖尿病治療中の患者は運動、食事、発汗などで血糖値が変化すると健康に大きな影響が出る。命にかかわる低血糖の発作を起こす場合もあるため、頻繁に血糖値を測定する必要がある。常時監視のために皮下にセンサーを埋め込むといった測定方法があるが、往々にして痛みを伴うそうだ。そのため「スマートコンタクトレンズ」では着装している人の涙から血糖値を測定することが可能になる。人間の目は普段から常に微量の涙で湿っており、それを分析すれば、患者に痛みを与えず測定が行えるとのことだ。また血糖値が危険水準に達すると患者の視界に警告を表示できるように、小さなLEDの搭載も計画している。現在はテスト段階で米国食品医薬品局(FDA)とも議論しているが、実用化に向けた量産の予定はまだ先である。

(出典:グーグル)

世界中で拡大する糖尿病

グーグルのリリースにもあったが、現在世界で19人に1人が糖尿病を患っているとのことだ。国際糖尿病連合(IDF)が2013年11月に発表したデータ「糖尿病アトラス 第6版」によると、全世界の糖尿病有病者数は2013年現在で3億8,200万人(有病率 8.3%)である。有効な対策を施さないと、2030年までに5億9,200万に増加すると予測している。なお、日本の現在の成人糖尿病人口は720万人で2012年の710万人から微増した。世界では第1位の中国(9,840万人)、第2位のインド(6,507万人)、第3位の米国(2,440万人)で日本(720万)は10位。また2030年までに日本とインドネシアで1,000万人を超え、フィリピンで700万人を超え、ミャンマーやマレーシア、ベトナムでも300万人を超えると予測されている。世界中でこれだけ多くの人が糖尿病に苦しんでいることや今後も残念ながら世界的に糖尿病患者は増加することが予測されていることから、市場の需要は大きいだろう。

(図1)世界の地域別糖尿病人口

(出典:国際糖尿病連合(IDF)「糖尿病アトラス 第6版」)

(表1)2013年の世界の糖尿病人口トップ10(20〜79歳)

(出典:国際糖尿病連合(IDF)「糖尿病アトラス 第6版」)

「スマートコンタクトレンズ」はあくまでもツール

「スマートコンタクトレンズ」は糖尿病を患った後に血糖値を管理するための、あくまでもツールにすぎない。日常の血糖値管理はできるが、着装すれば糖尿病が改善するというものではない。それでも従来のものよりは良いのかもしれないが、根本的には糖尿病にならないための日常から生活習慣や健康に気をつけることが重要であろう。

情報通信技術の発展に伴い、医療やヘルスケアのシーンも大きく変化してきているが、病気にならないための日常からの生活習慣の工夫と努力は今も昔も本人が自分自身で行わなくてはならない。

(参考)

【参考動画】

*本情報は2013年1月17日時点のものである。

※1 Google(2014), “Introducing our smart contact lens project”
http://googleblog.blogspot.jp/2014/01/introducing-our-smart-contact-lens.html

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