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Global Perspective 2014
2014年1月22日掲載

中国独自OS「COS」は普及するのであろうか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2014年1月、中国のISCAS (中国科学院ソフト研究所)とLiantongは共同で中国産OS「China Operating System」(COS) を開発したと発表したことが多数報じられている(※1)。Linuxをベースにしているとのことである。しかし今回のCOSはセキュリティ上のリスクを回避するために国家安全保障の観点から開発されたとのことである。またGoogleが提供するAndroidとAppleが提供するiOSでほぼ市場を独占していることに対する懸念があるとのことだ。COSはHTML5やJavaにも対応しているようで、既にCOS上で動くアプリケーションも10万以上あると報じられている。

中国の独自OSに向けた取組み

中国で独自OSが開発されたのはこれが初めてではない。2009年には中国の通信事業者China MobileがAndroidOSをベースに開発した「OPhone」をリリースした。2011年7月には、中国の通信事業者China Unicomが「WoPhone」をリリースした。他にもインターネット大手の百度やアリババからのOSがリリースされた(参考レポート)。しかし、実際にはどのOSも大きな市場シェアをとることは出来なかった。

また国家主導のOSについては2013年3月にLinuxディストリビューションのOS「Ubuntu」を支援している主要スポンサーの英国Canonicalが中国工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology:MIIT)と提携を結び、中国向け Linux OS のリファレンスアーキテクチャ(独自OS「麒麟(Kylin)を開発していくことを発表した。これもオープンソースでは脆弱性が多くサイバー攻撃の標的にされてしまうとのことから、独自OS開発を進めるとのことであった(参考レポート)。これも広く普及しているという話は聞かない。

中国独自OS「COS」は上手くいくのだろうか?

このように中国では独自OS開発の動向は以前から多く聞かれるが、それらが市場に浸透し多くの市民に利用されているということはまだない。中国でのスマートフォンのOSシェアはAndroidとiOSの寡占状態であり、Windows Phoneもほとんどない。特にAndroidは圧倒的でシェア80%を超えている。
PCでは圧倒的にマイクロソフトが提供するWindowsである。これは世界共通のOSである。確かにそれらには脆弱性も多く、サイバー攻撃の標的にはされやすい。サイバー攻撃はシステムの脆弱性に対して攻撃を仕掛けることが特徴であるから、独自OSの方が脆弱性も不明瞭な部分も多いためサイバー攻撃の標的にされることは少ないであろう。

たしかに中国の観点から見ると、数多くのサイバー攻撃の防衛対策としてシステムやOSを中国独自のものを導入することによってアメリカや他国に依存しなくとも自国のサイバースペースを防衛できるようにしたいはずだ。独自OSであるため、世界で一般的に利用されている標準システムの脆弱性が見つかり、そこを標的としたサイバー攻撃を回避することも可能である。また、中国で開発したOSを中国のメーカーが搭載して販売することによって、中国企業の発展にも繋がるだろう。

今回のCOSもAndroidのような既存OSの独占市場の瓦解とセキュリティの観点から新たなOSを開発してきたが、既存のAndroidのシェアから急激に逆転することは難しいであろう。前途は決して洋々たるものではない。既に12億人以上の携帯電話保有者がいる中国において果たして「COS」は今後、どのような発展と普及をしていくのだろうか。

(表1)中国市場のモバイルOSのシェア

(表1)中国市場のモバイルOSのシェア

(出典:Analysis Internationa)

(参考)

【参考動画】

*本情報は2014年1月20日時点のものである。

※1 ZDNet(2014) “China reveals own mobile operating system”
http://www.zdnet.com/china-reveals-own-mobile-operating-system-7000025287/

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