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Global Perspective 2014
2014年6月2日掲載

東京都知事会見より「無料Wi-Fiはお店の負担で」〜外国人にやさしいWi-Fi環境を

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

東京都の舛添知事は2014年5月30日に定例会見を行った。その中で、携帯電話の通話環境やWi-Fiの接続環境の改善に向けたヒアリングを開催することを発表した(※1)。平常時の利便性向上だけではなく、緊急時の連絡の強化、さらには2020年東京五輪に向けて、外国人旅行者への快適な通信サービスの提供を目指すことが狙いである。Wi-Fiに関する都知事の見解と今後の方向性が伺えるので、会見と記者との質疑応答に関する箇所を下記に引用しておく(下線筆者)。

(以下、都知事会見からの引用、下線筆者)

2.「携帯電話の通話環境やWi−Fiの接続環境の改善に向けたヒアリング」の開催について

 【知事】続きまして、第2点のテーマですけれども、これは携帯電話の通話環境やWi−Fiの接続環境の改善に向けたヒアリングを開催しますということであります。
 都内では、ほぼ全域が携帯電話のサービスエリアとしてカバーされておりますけれども、ビルの影響とか複数の電波の干渉等によって、車で移動中などに通話が途切れることがありますし、これは皆さんも経験があるというふうに思います。私も、都内視察なんかで走り回りますけど、一番大事な話をしてるときに、ぷつっと切れちゃう、こういうことがありますんで、これは危機管理の都知事が移動してるときに電話が通じないということでは話になりませんので、そういう面からも改善をするべきだと思います。

 また、空港やJR、都営バスなど、無料でWi−Fiが使える環境が整備されておりますけれども、アクセスポイントをもっと増やしていくべきだと思いますし、使い勝手もさらによくしていきたいと思っております。

 携帯電話の通話環境やWi−Fiの接続環境の改善を図りまして、平常時の利便性の向上をはじめ、緊急時の連絡の強化、さらには2020年大会に向けて増加する外国人旅行者への快適な通信サービスの提供を目指すことを努力してやりたいと思います。このことによって東京を世界一の都市にしていきたいと思ってます。

 多くの観光客、外国人観光客から「Wi−Fiがつながらないよ」って、そういう話を聞きましたけれども、急速に今これを整備しておりまして6割以上の方が「大変満足している」ほぼ9割以上の方は「ほぼ満足」という一番直近のアンケート結果もありますので、さらにこれを進めていって2020年大会にはWi−Fi全然全く問題ないような環境、通話環境をつくりたいと思ってます。
 そういうことの問題意識がございますので、携帯事業者3社と無線LANの団体計4社のトップにお越しいただきまして6月3日にヒアリングを実施いたします。私も出席いたしまして、様々な意見交換を行いたいと思いますので、この点の詳細は産業労働局にお尋ねいただければと思います。

(以下、記者からの質問に対する知事からの回答、下線筆者)

【記者】朝日新聞の後藤です。最初にお話しあったWi−Fiのことなんですけれども、知事、これまで、例えば、外国特派員協会で講演された際に、外国人の記者の方から、WiFiがあまりにつながらないということをお話しされてですね、知事のほうで、いろいろ指示はしているとおっしゃっていますが、実際、今、知事のほうでですね、Wi−Fi整備に関して、どのような指示をされているのかということを、まず1点とですね、常々、ご就任されてから、Wi−Fi環境についてはいろいろご発言をされていらっしゃると思いますので、今後、Wi−Fi整備に関して、都が主体的に何か進めていくのか、助成金なんかの制度を使ってですね、業者のほうにWi−Fiの整備の環境を促していくのか、どういう大きな方針があるのか伺いたいんですが。

【知事】あのですね、まず、Wi−Fiに対する外国人の方々の反応なんですけども、平成23年10月の段階で、約2000カ所しかありませんでした。もう昨年の年末段階で1万5000カ所まで増えてます。これ、今どんどん増えていってるんで、基本的には。ですから、例えば、喫茶店でも、うちは通じますよっていうの、ありますね。で、それぞれが自分でやることであって、そんな多額のお金がかかるわけでありませんので。つまり、無料Wi−Fiを設置することによって、お客さん呼んで、隣のカフェより自分のところがいっぱいお客さんが入るなら、それは誰でもやるわけなんで、そういう方針でやりたいというふうに思ってます。

 アンケート調査も、古い、先ほどの2000カ所ぐらいしかないときのを元にしてるんで、アップツーデートなものは、先ほど言ったように、かなり、みんな、満足度が上がってる。あとは、無料Wi−Fi利用できますよ、ここで利用できますよというようなことの周知徹底が十分できてないんで、そこをさらにやっていこうというのが今からの方針なんで。それで、そのことも含めてですね、6月3日の日に、少しキックオフをやりたいと思いますんで、6月3日16時から、昨日、今日とやった大会議室を使って、事業者の方々に来てもらって、そこで要望があって、こういう補助を出してもらえばやりやすいと言えば、それはもう考えたいと思いますけども。今のところは、それに向かって、今、準備をしておりますので、ぜひ皆さんもいらしていただいて、それでもっと詳細な答えが出る可能性はあると思います。

「無料Wi-Fiはお店の負担で」:外国人にやさしいWi-Fi環境を

今回の都知事のWi-Fiに関する会見での一番のポイントは、店舗でのWi-Fi設置についてであろう。都知事は、店舗でのWi-Fiは店舗の差別化(サービス)として、店舗の負担で設置すべきであると主張している。たしかにWi-Fiが無料で利用できる店舗は魅力的である。同じコーヒーショップであれば、無料でWi-Fiが利用できるところに行くだろう。

特に、海外から日本を訪問する外国人客にとっては、無料でWi-Fiが利用できる店舗でスマートフォンやタブレット、ラップトップでインターネットにアクセスできることは利便性が高く、非常に重要である。また既にNTT東日本などが店舗向けの外国人を対象にしたWi-Fi導入サービスを提供している(参考レポート:外国人は「お店で無料のWi-Fiを」:NTT東日本の光ステーション)。都知事も指摘しているように、決して多額の投資が必要なものではない。そして店舗の差別化にもつながっている。

実際に、無料でWi-Fiが利用できる店舗は増加している。しかし都知事も述べているように、アピールが不足しているのか、まだどこで利用できるのかわからないことが多いことから、今後の店舗からの情報発信も期待される。
今後も舛添都政でのWi-Fi、携帯電話網の充実に向けた取組みには注目していきたい。

*本情報は2014年5月31日時点のものである。

※1 知事の部屋(2014年5月30日)
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2014/140530.htm

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