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Global Perspective 2014
2014年10月3日掲載

イスラエル:サイバーセキュリティで新組織〜民間セクターの防衛は可能なのか?

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

イスラエル政府は2014年9月21日、同国へのサイバー攻撃の脅威が増加することに伴って、サイバー防衛機関の新設をすることを発表した(※1)。イスラエルではサイバー防衛は国家サイバー局(Israel National Cyber Bureau:INCB)が担当しており、新機関もINCBと連携しながら、公共機関へのサイバー攻撃だけでなく、民間部門へのサイバー攻撃も統括することになる。イスラエルは以前からイランや周辺のアラブ諸国から常にサイバー攻撃の標的とされてきた。 ネタニヤフ首相は国家サイバー局長のDr. Eviatar Mataniaに新機関の計画を策定して60日以内に閣議で承認を得るよう指示した。

ネタニヤフ首相は新機関設立にあたって、「サイバー攻撃は公共施設だけでなく、民間も含めて国家全体の防衛を行わなくてはならない。市民もサイバー攻撃からの防衛の対象となり、そのためには新組織が必要である。我々は新しい世界に住んでおり、新たな軍事力の準備をしなくてはならない。これはイスラエルの防衛において非常に重要なことになる」と述べた(※2)。

Dr. Eviatarは「これは歴史的な決定である。イスラエルがサイバーセキュリティの分野において更なる成長をしてリーダーになる。また国家の社会経済をサイバー攻撃から防衛することによって、経済成長と発展に貢献していくだろう」とコメントした(※3)。

個人であれ民間セクターであれ、公共施設や政府機関、安全保障関連施設であれ、1つのサイバースペースとして結合されている。つまり政府機関も民間セクターや個人とサイバースペースにおいて繋がっている。サイバースペースにおいては、政府機関や安全保障施設も民間セクターに依拠していることから、それはもはや止めることはできない。政府機関や安全保障施設は民間の電力会社や通信会社、輸送機関などを利用している。そのような民間セクターを経由してネットワーク内に入り込み、情報摂取されることもあるだろう。またそのような民間セクターのシステム破壊が政府や安全保障に大きな脅威となることもありうる。まさにサイバースペースは個人や民間セクターのレベルから国家が防衛しなくてはならない領域なのである。

国家が民間セクター、個人も含めてサイバー攻撃からの防衛を行うために新たな組織の設立に乗り出したイスラエルは、今後どのように個人や民間セクターをサイバー攻撃から防衛していくのだろうか。

イスラエルは周辺諸国から常時サイバー攻撃の標的に曝されている。もはや注意喚起のレベルで解決できるような問題ではない。国家の機関が民間セクター、個人のサイバーセキュリティを防衛するために、どのような施策を出してくるのであろうか。イスラエルの今後のサイバーセキュリティの動向と新組織の役割に欧米諸国も注目している。

【参考動画】
Netanyahu launches new authority to fight cyber attacks

*本情報は2014年9月30日時点のものである。

※1 “Decision to Establish a New National Authority for Operative Cyber Defense” (21 Sep 2014)
http://www.pmo.gov.il/English/MediaCenter/Spokesman/Pages/spokecyber2210914.aspx

※2 原文は以下。"I decided last week to develop a national authority on the cyber issue to arrange and see to defending the entire State of Israel on the cyber issue. That is, defending not only important facilities and security agencies, but how to defend Israeli citizens against these attacks. This is the establishment of a new authority. It is, in effect, the creation of an air force against new threats and not rely on this being carried out by existing agencies. We are in a new world; we are preparing with new forces. This has very major significance for the defense of the State of Israel in the future."

※3 原文は以下。"Dealing with the cyber threat on the national level in the coming decades constitutes a strategic challenge that all countries must deal with. This is a historic decision. The establishment of a national cyber defense authority, alongside the effort to build advanced and unique technologies will bolster the State of Israel's position as a leader in the field and make a major contribution to defending the economy and encouraging growth."

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