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BTセルネット、欧州初の位置情報サービスを開始

 英国のセルラー事業者BTセルネットは2000年9月6日、位置情報を利用した音声情報提供サービスのファインドミー(FINDme)の提供を開始した。既存の携帯電話の位置情報を利用する情報提供サービスの商用化は欧州では初の試みである。

 この度開始されたサービスは、ユーザーがGSM携帯電話(機種は問わない)からこのサービス専用の電話番号「1500」にアクセスすることにより、発信者の居場所に関連する各種情報の提供を受けられるというものである。提供される情報の種類は多岐に渡り、将来的には13万種類のコンテンツが提供される予定とのこと。

 ユーザーが「1500」をダイヤルするとユーザーの位置が特定され、IVR(対話型音声自動応答:Interactive Voice Response)装置およびテキスト音声変換技術(text-to-speech technology)で実現される音声メニューを選択することにより簡単に求める情報にアクセス可能となっている。トップ・メニューの構成は、計画中のものを含めると以下の通りとなっている。

「1500」に続けて、
→「1」:トラヒック情報(渋滞情報)
→「2」:便利な地域情報(キャッシュコーナー、ガソリンスタンド、駐車場、タクシー)
→「3」:エンターテインメント&レジャー(映画館、劇場、スポーツ施設、レジャー施設)
→「4」:フード&ドリンク(ファーストフード、レストラン、パブ)
→「5」:宿泊施設(ホテル、トラベル・ロッジ、B&B)
→「6」:旅行者情報(名所、観光案内所)

 また、最寄りのマクドナルド(McDonald’s)の場所が確認可能な専用の電話番号「1501」が設けられており、BTセルネットとマクドナルドは店舗情報の提供に関して独占契約を締結している。

 本サービスは申し込み不要で、BTセルネットの加入者であれば、契約型、プリペイドのサービス種別に関わり無く利用可能となっている。プリペイド・サービス(pay as you go)に対しては国内の固定電話に発信した場合のピーク時の通話料金が適用され、契約型サービスに対しては他社の携帯電話に発信した場合のピーク時の通話料金が適用される。また、本サービスは北アイルランド以外のグレートブリテン島全域で利用可能となっている。

fig1

 サービスにおいては、発信者の位置情報を取得する方法として、セル・アンド・セクター・マッチング技術(cell and sector matching technology)が用いられている。この方式は、個々の基地局のカバーエリアを扇形の複数のセクターに分割し、どのセクターにユーザーが存在するかにより基地局とユーザーとの位置関係を把握し、ユーザーのおおよその位置を割り出すというものである。BTセルネットの発表によると、位置特定の誤差は、田舎のエリアにおいては15キロ以内、都市部においては100メートル以内とのこと。

 携帯端末の位置情報を特定する方式としては他に、GPS衛星からの電波を受信することにより極めて正確に位置を特定する方式もあるが、個々の端末にGPS受信機の機能を具備する必要があり、必然的に端末の価格も上昇し、急速な普及は困難であるとされている。一方、今回BTセルネットが採用した方式は、基地局側の機能追加のみで比較的低コストで導入が可能であり、それほど高度な正確性を必要としない位置情報サービス提供手段として、オペレータにとっては望ましい方式であると言えよう。また、ユーザーにとっても既存の端末をそのまま利用可能という意味において、負担が掛からない方式である。なお、ネットワーク側に位置情報獲得の機能を具備し、さらに正確な位置特定を実現する方法として検討されている代表的な方式としては下記の2方式がある。

fig2

木鋪久靖(入稿:2000.10)


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