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ハイパーアジア
2002年9月掲載

インドネシア、通信独占を解消

 インドネシアは、2002年8月から、通信料金の引下げやサービス向上のため、国際通信を手がける国営のPTインドサットに、国内通信事業免許を与えた。今後、国内通信を提供するPTテルコムに、国際通信を認め、相互に参入する体制を作る。

■新通信法の発効

 インドネシアでは、これまで、市内・国内長距離、国際の通信事業を別々の国営通信事業者が独占的に提供していた。2000年9月8日、新通信法(1999年第36号法)が発効し、PTテルコムの市内独占の終了時期を2010年から2002年8月に前倒しすることが決まった。PTテルコムには、1〜2年後に国際通信事業への参入を認める。

■提供予定

 PTインドサットは、首都ジャカルタと第2の都市スラバヤで市内通信事業を始める。新規投資で独自の回線網を建設するため、投資額は約1,700億ルピア(約24億円)、回線数は両都市で約1万3千。事業開始時期は未定で、通話料金は既存のPTテルコムと同額にする予定である。

 国内・国際の垣根撤廃に伴い、新規参入する企業は既存事業者に対して補償金を支払う。自由化の前倒しに伴い、既存事業者に政府が補償金を支払う例は、シンガポール、香港などで見られる。シンガポール通信庁(現在のIDA)は、シンガポール・テレコム(シングテル)に、1997年、補償金として15億シンガポール・ドル(約1,065億円)を支払った。現在、シンガポールでは、シングテルと政府の間で、補償金の返還をめぐり、法廷闘争となっている。補償金の支払い後に、税当局が、この補償金を非課税としたことから、課税を前提に補償金を算出した政府側は税金想定分3億8,800万シンガポール・ドルの返還を求めているが、シングテルは、「契約で合意したことを後になって変更することはできない」として。双方の主張は平行線をたどっている。

■KSO事業の行方

 KSO事業とは、1995年に始まったインドネシア版BOT(Build Operate and Transfer)事業であり、外資を含む民間企業の5つのコンソーシアムが固定電話網を拡充してきた。しかし、1997年〜98年のアジア通貨・経済危機の影響もあり、所期の成功を収めたとは言えず、人口100人当たりの固定電話の回線数で見た普及率は1995年の2%から2001年の3%へわずかに上昇したに過ぎない。

 KSOコンソーシアムにおいては、PTテルコム事業への再編入(売戻し)や国際系PTインドサットとの合弁形成という動きが出ている。

 PT Bukaka SingTel Internationalは、契約内容に修正を加えて、KSO契約を続行することで合意しているが、PT Dayamitra TelekomunikasiとPT Ikat Nusantaraは、資産をPT Telekomを売り戻すことで合意している。PT AriaWest InternationalはPTテルコムへの資産売戻し路線で来ているが、価格に関する合意が成されず、PTテルコムが一方的にパートナシップを解消するに到っている。現在では、両者がジュネーブのInternational Chamber of Commerceに裁定を依頼している。

 一方、PT Mitra Global Telekommunikasi Indonesia(MTGI)は、PTテルコムとPTインドサットが対等な競争関係に立つためのクロス・オーナーシップを排除(出資子会社・関連会社の重複排除)する一連の取引にあって、その資産や権利義務関係がPTテルコムからPTインドサットに移ることになった。PTインドサットはMGTIが望む合弁形成を基本的には受入れ、話合いは各論に進んでいる。PTインドサットとの合弁が成功すれば、MGTIはPTテルコムとの収入分配のくびきから離れることになる。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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