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2003年3月掲載 |
情報通信の新潮流(第9回)
日本のIP電話の動向(1) 2003〜「IP電話元年」の到来 |
政策研究グループ リサーチャー 杉本幸太郎 sugimoto@icr.co.jp |
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日本では、2002年末時点において、ADSLやCATV、光ファイバ等のブロードバンド(BB)回線利用者数が1000万人近くに達し(回線数ベースでは約750万件)、IP電話普及へのマクロ的な基盤が急速に形成されつつある。会員間の通話が無料となるIP電話サービスが、BBインターネット接続サービスとセットで提供されることによって、BB回線の需要がさらに押し上げられるという好循環が生まれているのである。また、2002年11月からIP電話専用番号「050」の付与も開始され、従来「発信」を主な利用シーンとしてきたIP電話で、050番号での「着信」が今年夏頃には可能になる見通しである。このような状況下で、多くの事業者(ISP、通信事業者、CATV事業者など)が相次いでIP電話サービス市場への本格進出計画を明らかにしている。 このような様々な事業者によるIP電話市場への参入ラッシュの背景には、Yahoo!BBがIP電話サービス「BBフォン」の提供によってADSL市場シェアの拡大に成功していることが挙げられる。ソフトバンクBBのADSLサービス、Yahoo!BBは2002年12月に150万加入を獲得し、今年二月の初めには200万加入を突破した。このうちBBフォン利用者数は2002年11月に100万件を突破、12月には130万件に迫る勢いで急成長した。このことは、他のBB回線サービスを提供する事業者に大きな危機感を植え付けた。つまり、BB回線サービスの競争においては、IP電話というアプリケーションが「ネットワーク外部性」をもたらす成功要因として認識されるに至ったのである。 「会員間無料のIP電話をセットで提供できなければADSLサービスのシェア競争に勝てない」。このような業界での認知が、さらなるIP電話市場参入ラッシュを惹起している。BBフォンが提供開始されたのは2002年4月。振り返ってみれば、それまでのIP電話サービスは、フュージョンに代表される一般加入電話を使う「IP中継タイプ」や、マイクロソフトのインスタント・メッセンジャーを使って一般電話へ通話できるイー・アクセスなどのサービス(PCソフト利用のBB接続タイプ)が注目されていた。それからたった一年でIP電話は大きな転機を迎えている。今年2003年はさらに大きな普及期になると予測されている。
日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月4日掲載 |
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