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情報通信の新潮流
2003年月掲載

情報通信の新潮流(第18回)

米国におけるホットスポットの動向

宮下(写真)
移動・パーソナル通信研究G
リサーチャー
宮下 洋子 miyashita-y@icr.co.jp

 ホットスポットは、新しい通信サービスとして内外で脚光を浴びている。日本でもサービスが開始して一年ほど経ち、その行方が注目されている。今回は、サービスの発祥の地である米国のホットスポット動向を紹介する。

米国のホットスポット動向

 米国では、無線LANを構築する層が広がっている。個人ユーザーがアクセスポイント等の機器を購入し自宅等におけるワイヤレス環境を整えたり、これまで通信事業を手掛けたことのない企業や飲食店などが独自にホットスポットを構築するというケースもごく一般的である。NPOがボランティア活動の一環として提供する無料ホットスポットも広がりを見せている。これには、無線LANが他の通信サービスと比較して安価で構築が可能であり提供が容易という背景がある。

 このような状況の中、ビジネスとしてホットスポットを運営するプロバイダーはどのような戦略で取り組んでいるのだろうか。

 まず挙げられるのが、プロバイダーのビジネスモデルの多様化である。自社でスポットを構築しサービスを提供する典型的なホットスポット・プロバイダーに加え、独自にスポットを構築せず、言わば間借りして自社のユーザーに提供する「アグリゲーター」という形態をとるところもある。フランチャイズ方式で店舗を募るプロバイダーもいる。エンドユーザーを直接のターゲットとはせず、サービスの卸売りに特化するところも登場している。既存のISPのローミング・プロバイダーも、ローミング・サービスという形で参入を図っている。これに伴い、サービス提供や課金方法も多様化している。これまでホットスポットは、携帯電話サービスのように月額何千円といった課金方法を取るケースが主流だったが、公園やショッピングモールで集客目的にサービスを無料で提供するところも多くなっている。無線LAN対応のアパートを構築し、月々の家賃に何千円かを上乗せして住民に請求するという不動産業者も登場している。

 次に、概してプロバイダーは、ローミング協定やプロモーションのための企業間提携に積極的なことが挙げられる。無線LAN対応端末の普及予測などから、ホットスポットで収益を確保するのには数年を要すると推測されている。このためプロバイダーは、現時点ではなるべく低コストで効率のよいサービスを提供することが肝要となる。ホットスポット・サービスは萌芽して日が浅いサービスであり、一歩先ん出る米国でもユーザーや収益の確保に混迷しているのが現状である。このためプロバイダーは、まずはホットスポットをサービスとして成長させるという姿勢でより多くのユーザーの確保や市場の拡大を図っている。

米国の例から学ぶべきこと、また日本の特異性

 このような米国のホットスポット業界の姿勢には、日本が学ぶべき点が多いのではないだろうか。サービスの利便性を向上させ、より多くのユーザーを獲得するには、プロバイダー同士のローミング協定や企業間提携が必要となる。一方、日本では、諸外国と比べインターネット対応の携帯電話を利用する割合が圧倒的に高く、携帯電話サービスがホットスポットのライバルとなると同時に協力者ともなり得る点が特異である。いずれにしろ、まずはホットスポット業界が一丸となり効率良い投資環境を整える姿勢が重要なのではないだろうか。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月18日掲載

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