2002年10月号(通巻163号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業>

SMSで、TV番組と視聴者を結ぶ試みが欧州で活発化

 ご存知の通りSMSは、若者を中心としたGSM携帯電話利用者層における文字メッセージ手段として欧州で急速に普及し、事業者によっては、SMSの利用料収益が収益全体の数パーセントを占めるまでに至っている。ここにきてこのSMSを、TV番組とその視聴者を結ぶ手段として利用するケースが欧州で活発化している。定着すれば、事業者にとって、SMSの存在価値、または、利用価値といったものをさらに押し上げる要因となりそうだ。本稿では、欧州におけるSMS、または、プレミアムSMSを利用したSMS−TVと呼ばれる試みを整理してお伝えする。

 SMS−TVは、TV番組に対するカスタマー・ロイヤリティやインタラクティビティを向上させるプロモーション手段として、スペイン、ドイツ、英国など、欧州各国で見られる。つまりSMS−TVでは、TV番組放映中に視聴者に対し、何らかの目的でSMSを送信してもらい、それによってそのTV番組へのリアルタイムな参加を促すことが可能となる。利用されるSMSとしては、通常のSMS、または送信者が通常のSMSに上乗せした料金を支払うことにより受信者が収益を得ることができるプレミアムSMSが使われる。

 実例を挙げれば、ドイツには、「Jede Sekunde Zdhlt(Every Second Counts)」と呼ばれる人気ゲーム・ショーがあり、SMSによる勝者投票を募集したところ、30分間に最大120万通ものSMSが寄せられたという。また、同様の試みは英国でも行われており、MTV UKが音楽ビデオ・クリップの人気投票を募集したところ、1回の放映につき、25,000通のSMS受信を記録した。これらの、SMSがプレミアムSMSだったかどうかは明らかではないが、中にはプレミアムSMSを利用して大成功を収めた例がある。スペインの「CCRTV Interactiva」というTV番組制作会社は、ある番組でプレミアムSMSによるクロスワード・クイズを出題したところ、1日につき、6,000〜43,000通もの回答が寄せられた。驚いたことに、プレミアムSMSの利用料収益だけで、番組制作コストがカバーできたという。

 気になる利用料金だが、プレミアムSMSの場合、移動通信事業者にもよるが、0.19〜0.39ユーロ/通程度である。また、関係者の取り分は以下の通りとなる。

関係者の取り分

 プレミアムSMSで一番「儲かる」のは、全体の40%を占める移動通信事業者であることがわかる。TV局/製作会社は25%、次いでSMS関連のサービス・プロバイダーは15%。残りは税金に相当する。移動通信事業者がこれだけ徴収する理由は3つある。一つは、SMSトラフィックが発生した分に相応するコストの回収。2つ目は、携帯電話ユーザーへの直接的アクセスを持っていること。最後は、ユーザーへのビリングを代行することにより、料金回収リスクを負担していることである。

 SMS−TVは、TVというマスメディアの威力と、SMSの利便性、リアルタイム性がうまく融合した例であり、欧州の移動通信事業者にとっては、3Gサービス提供までの当分の間、確実な収益源として期待できるかもしれない。

移動パーソナル通信研究グループ
 リサーチャー 松尾 拓也

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