2005年8月号(通巻197号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S

<世界の街角から>

韓国「韓国の携帯電話」

「海外の携帯電話動向」などと言っても、携帯電話がこれだけ進化した日本にいれば、正直なところよほどのことでない限り驚くこともそうそう頻繁にはない。国外で「メガピクセル・カメラ携帯」などともてはやされても、日本では「何を今さらこんなこと」と言わざるを得ないのだ。実際、携帯電話は日本が一番、欧州で1〜2年遅れ、米国ではさらに2〜3年遅れ、などとも業界では囁かれている。

 ところが韓国は違う。韓国の携帯電話関連ニュースの紙面には、とにかく新しい機能を持つ携帯電話が目まぐるしく登場する。MP3がついたかと思えばHDD(ハード・ディスク・ドライブ)が載る。300万画素のカメラが搭載されたかと思えば翌月には500万画素、そしてすぐに700万画素のカメラとあっという間に解像度が上がる。まるでドック・イヤーで事が運んでいるかのようだ。そう言えば、日本では来年ブームとも予想される携帯電話に電車のチケット機能がつくというものも、韓国では何年か前に登場していた。とにかく、あっという間に何でも携帯電話に載ってしまうのである。そんな韓国の携帯電話から、まさに「恐るべき」機能のついた携帯電話をいくつか紹介しよう。

■おそるべき韓国の携帯電話事例

(1) 糖尿病の治癒に活躍する携帯電話

 LGとKTFは昨年、血糖値を測定できる携帯電話「KP8400」を販売している。これは、糖尿病患者をターゲットとした携帯電話を利用した言わば遠隔医療サービスで、糖尿病患者が自ら採血してこれを試験紙に染み込ませ携帯電話に装着した測定機器に差し込む。すると端末で患者の血糖値を測定しこの結果を画面に表示、同時に医療センターへ自動的に送信する。センター側では、患者から送られるデータをもとに病状を定期的に診察し、これを患者の携帯電話に返信する。患者にとってはこの診察結果により食事や運動の制限事項を把握できるため、頻繁に病院へ足を運ぶ煩雑さが減り、携帯電話が患者の健康に一役買うというものである。

(2) 蚊を撃退する携帯電話

 蚊を撃退するという携帯電話も登場した。これは、SKテレコムがインターネットで提供する携帯電話向けJavaアプリケーションの一つで、これをダウンロードすれば、血を吸うメスの蚊が嫌う周波数帯の音波を発するため、携帯電話の周辺には蚊が寄り付かないというしくみである。この機能は韓国でも評判であり、一日800〜900件程度ダウンロードされているとも報道されている。しかも東南アジア向けに開発したアプリケーションでは、現地の蚊に標準を合わせ周波数帯域を変えたり、タイマー設定も可能となっているという「優れもの」だ。

(3) スピード検知器を検知しスピード違反を間逃れることができる携帯電話

 LGが数ヵ月前発表した携帯電話は、高速道路でスピード検知器の場所を教えてくれるという機能を搭載している。この端末「LFSV900」は、携帯電話に地図を内蔵したGPS対応のテレマティクス携帯電話であり、この地図にスピード検知器の場所もインプットされており、ここへ近づくと端末のLEDが点滅する。「こんなサービスは違法にならないのか?」と問合せてみると、「スピードを落とせと警告しているのではない。単に検知器があるという事実を知らせているだけだ」という応えが戻ってきた。違法性はないというのである。それにしても、解釈はどうにでもなるものらしい。

■めまぐるしい韓国の携帯電話、これを支える国民性

 そもそも、どうして韓国ではこう次々と目まぐるしくいろんな携帯が登場できるのだろうか。そんな疑問をとく鍵になるようなニュースを紹介する。これは、韓国でも初めて500万画素カメラを搭載した携帯電話が発売された際のものである。

◆「100万ウォンの携帯電話、スライド式のフタが閉まっていれば着信音聞こえず」

ソウルの木洞(モクトン)に住むイさんは、今月の初め100万ウォン余りで、500万画素デジカメ携帯を購入した。しかしスライド式であるこの携帯電話は、スライドが閉まっている状態では着信音が聞こえなかった。イさんの話では、最初は自分が着信音を聞き逃したのかと思ったが、実はスライド式のフタが閉まった状態では初めから着信音が聞こえない「ぼんくら」電話だったなどと怒りをあらわにした。他にもこのようなクレームをこぼすユーザーが続いている。(中略)この端末を発売したメーカーではこれに対し、「一部問題はあるが、リコールするほどの致命的な欠陥ではない」としており、「問題のある製品に対しては責任を持って修理する」という立場を見せてはいたが、「今回搭載した機能は新しく、製造の段階で社員らの熟練度が異なっていたことに問題があったようだ」としながらその一方、「どんな製品でも不良品はあるもの」とまでもコメントしている。(韓国国内の報道(2005.1.13)より抜粋)

 少々誤解を恐れず言うならば、「我々の作った携帯電話はこんなに刷新的で優れている。こんなすごいことにチャレンジしているのだから、最初の端末に少々の故障があってもしょうがないじゃないか」という態度にも見受けられる。
実際、韓国は「新しいモノ」に対しては積極的な姿勢が強い。韓国人は「パルリパルリ(早く早く)と歩く」などとも描写され、先を急ぐせっかちな国民性とも言われる。その一方で、やり直しに寛容な風土を持ち、ベンチャーに対する意欲や評価も比較的高い側面もある。さらに、韓国系主要携帯電話メーカーは、今や「世界一」を目指し、ことあれば「世界初」を連発するなど、勢いがついている。

 ここまで書くと、 「携帯電話大国」と名高い日本の国民として、少々負け惜しみのようでもある。しかし、サービスと名がつけば、新しいものだろうが何だろうが完璧な製品でなければ許されない日本と比較すると、韓国は事情が異なる側面もあるようだ。

グローバル研究グループ
宮下 洋子
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