2008年4月号(通巻229号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業>

モバイルSNSが成長の兆し、注目される「mig33」のビジネス

 2008年2月、ヤフー!は「ワンコネクト(OneConnect)」を発表した。同サービスは、ユーザの交友関係を反映したアドレス帳を中心として、電子メール、インスタント・メッセージ、SMSおよびSNSの各種サービスを、携帯電話の一つの画面に統合するというものである。ヤフー!のこうした動きは、ネットの主役がもはやポータルからSNSを中心とするコミュニティ・サイトへ移行していることを示すと同時に、パソコン文化がモバイルで開花するとの期待感を反映している。モバイルSNSでは、すでに欧米を拠点とするマイスペースやフェースブックなどの大手SNSサイトも注力しているところであるが、mig33、Zyb、Mocospace、Aka-aki等のモバイル専用SNSも相次ぎ登場している。中でも、2005年12月にオーストラリアで誕生したmig33は、2008年2月時点で世界に1,000万人のユーザを抱えるSNSに急成長し注目されている。以下、同社のビジネスを紹介する。

■ほとんどの携帯電話で動作するJavaアプリケーション

 mig33は、当初オーストラリア・パースに本社が設けられた。二人の共同設立者は当初、「十代の若者が好きなだけテキストメッセージを送信する方法を見つけ出したい」としていた。同社は2007年5月に米国市場から資金を調達した際、米国シリコンバレーに移転すると、同年9月からは米国市場でもサービスを開始、2008年2月現在、世界200カ国以上で1,000万人を超えるユーザーを擁するまでに成長した。

 mig33は、携帯電話機にダウンロードして利用するモバイルSNSアプリケーションで、様々な機能が組込まれている。ユーザーは、SNSの本来サービスであるプロフィールの設定や友達づくりの他、チャットルームの開設、VoIP通話、インスタントメッセージ(MSN、ヤフー!、ICQ、AOL、グーグルトーク等に対応)、SMS、電子メール、写真の共有などができる。これらの機能は、Javaアプリケーションとして提供されていることから、GPRSやW−CDMA、CDMAのほとんどの携帯電話機(250機種で試験済み)で動作する上、パソコンからもアクセスできるという利点がある。この点が、同社のセールス・ポイントの一つとなっている。

ユーザーの利用は世界で1日200万セッションに上り、1日4,500万通のメッセージが送信され、1カ月当り100万の画像が共有されている。

■安価なVoIPとSMSを提供するビジネスモデル

 同社のビジネスモデルで特徴的なのは、VoIPおよびSMSを有料で提供している点である。通話にはプリペイド方式のmig33クレジットを利用することができ、この通話クレジットの販売のためのアフェリエイト・プログラムも用意されている。また、クレジットは他のユーザに転送することで、共有することができ、紹介した友人が参加するとメンバー1人に付き1オーストラリアドルを得ることができる。2008年2月からは、南アフリカでプリペイドカードのビジネスを開始した。南アフリカ では、ゲーム、壁紙、着メロなど様々なモバイルコンテンツとエンターテイメントをリリースする計画である。同社によれば、同社のVoIPを利用することにより、国際電話とローミングのコストを最大95%節減できたとしている。他方、ユーザーのコメントを見ると、「スカイプやJajahよりもはるかにたくさんのことができる」とVoIP事業者との比較において評価しており、SNSというよりも、むしろ、SNSの友人間でも通話可能な多機能なVoIPとして受け入れられているようだ。

 興味深いのはmig33の利用者の20.2%はインドネシア、8.1%がブルネイ、7.9%がバングラデシュ、6.9%が南アフリカ、3.6%が米国の在住者(2008年2月現在)で、一部のアジア諸国やアフリカでの利用が高い点である。シリコンバレー企業関連のニュース配信をしているVenturebeat.comの記事によれば、mig33は、平均的な消費者が携帯電話とデータサービスを利用する金銭的余裕があるような発展途上国で人気が高まっているとされる。加えて、これらの発展途上国ではまだ規制が厳しく、国際電話の料金が高いという事情を抱えていることが、同社の安価なVoIPの利用を促進しているものと考えられる。従って、mig33の成功は、こうした市場をターゲットに、安価な通話とSNSを組み合わせたサービスを提供したマーケティングの的確さによるものと言えるだろう。

■法人市場の需要の掘り起しへ

 同社が次に狙っている市場は、中小企業向けの法人市場である。同社では、海外出張者に大幅なコスト節減を実現させることを目指している。すでに、2008年2月、米国市場において、ブラックベリーのユーザーがmig33のツールを、ブラックベリー端末から直接利用できるようになったと発表した。「7200」「8100」「8300」「8700」「8800」のブラックベリー端末に対応している。同社では、米国市場での拡大を狙って、今後より多くの機能とサービスを追加していく計画であるとしている。

 同社によるブラックベリー対応の動きは、主に上記の発展途上国とは事情が異なる米国市場におけるサービスの最適化といえるだろう。米国のモバイル事情を考えると、コンシューマー向けのモバイルSNSを強調するよりも、海外出張者向けに安価なVoIPを訴求する方がより効果的であると思われる。米国市場においても、同社のマーケティング戦略が遺憾なく発揮されるのか、今後が期待されるところである。

[図表]

武田 まゆみ
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