2009年4月号(通巻241号)
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InfoComモバイル通信T&S

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巻頭”論”

近づく大融合の時代

 2009年度の開始を期して、今月から本情報誌は少し体裁と構成を改め、より一層読者の皆様の御期待に沿うよう努めて参ります。情報通信分野におけるモバイル(移動体、携帯、無線・ワイヤレス、ケータイ(注1)など何でもあり)の位置付けは、年々大きくなっていますので、サービス動向、市場競争、法制度、技術動向、メディアや学界の論調など複眼的視点から紙面を構成して行きます。

(注1)ケータイと片仮名で書くのは若者言葉に基づきます。通信事業者はモバイルやワイヤレスの訳語である、移動体とか無線と呼びますが、若者の感性は携帯がポータブル、ウェアラブルであるという本質を捕えて、ケータイと呼んだのでしょう。

 さて、本項、巻頭“論”は、筆者の視点からキーワードの提起や問題の投げ掛けをしようとするものです。モバイル通信分野における革新や飛躍、そして原点回帰などさまざまな側面があると思っています。これから議論の種(たね)になる議論を取り上げて行きます。

 今回は、モバイル通信サービスの本質を追及する動きとして、3つの分野の大融合を取り上げてみます。第1の動きに、各種のポータブル・ディバイスの爆発的普及(携帯電話、ディジタル・カメラ、防犯カメラ、ディジタル・サイネージ、POSレジ、自動改札機、さらには各種センサー類など、既に人口の数十、数百倍に達する)。第2に、有線・無線ブロードバンドの進展。第3は、大量のデータを瞬時に処理し意味付けする情報システムの導入(メタデータの活用)です。この3つは、それぞれに独自の発展を遂げて来ましたが、これらが今後3年位の間に大融合していくものと想定できます。そうなると一体どうなるのか、技術やサービス面だけでなく、人や社会への影響はどうかなど複合的に研究しておく必要があるでしょう。国家や集団組織と個人との関係、経済社会のあり方、個人の人間関係など、当然、光と影の影響があります。

 通信機能を有するポータブル・ディバイスの小型化とブロードバンド通信サービスのコモディティ化、メタデータ活用の情報処理のクラウド化、などにより、人々の行動がその使用と場所単位で瞬時に把握できるのです。オルダス・ハックスレイやジョージ・オーウェルの小説めいた物語になりますが、国家と個人、企業と個人の関係、即ち、プライバシー保護について確実に配慮しておく必要があるのは当然です。全てが善ではなく、全てが悪でもありません(注2)

 だ言えることは、経済至上主義、即ち、単なる金儲け論に陥ってはいけないと言うことです。むしろ、経済活性化の観点から、こうした大融合によるデータの活用に関するルール作りを急ぐべきでしょう。

(注2)インターネットやモバイル・サービスでフィルタリングなど安心安全面での取り組みが始まっています。併せて、最近、 いわゆるコンピュータ・ウィルスだけでなく、マルウェア(Malware)が急増し脅威となっていることに個人・企業レ ベルだけでなく、社会・国レベルでの対応が必要となっていると思います。

 最後に、こうした大融合により通信サービスは、大きく変わっていくでしょう。長年、インフラとしての通信サービスは、いつでも、どこでも、誰とでも、を目指して来ましたが、これからは、新たに、「今だけ、ここだけ、あなただけ」のサービスが加わることになります。この大融合時代に何が起こるのか、今こそ、国策や企業戦略、そして個人行動まで含めた研究と取り組みが必要な時です。

株式会社情報通信総合研究所
代表取締役社長 平田 正之

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