2009年12月7日掲載

2009年10月号(通巻247号)

ホーム > InfoComモバイル通信T&S >
InfoComモバイル通信T&S

※この記事は、会員サービス「InfoComモバイル通信ニューズレター」より一部を無料で公開しているものです。

[tweet] コラム〜ICT雑感〜

民主党政権とICT政策

CO2・25%削減

 鳩山首相が国連で2020年までに1990年比、温暖化ガス25%削減を打ち出し、国際的に高い評価を受けた。一方、国内では経済界より、経済に与える影響などを懸念し、実現を危ぶむ声が上がっている。しかし、自動車業界のトップからも目標に向けアクセルを踏むという発言が出始め、家電製品にも盛んに「エコ」というキャッチフレーズが使われ始めている。消費者の間にも「エコ」の意識が着実に浸透し始めている。

 技術イノベーションが起こるのは環境が激変した場合、あるいは従来のやり方では達成できないような目標設定がなされた場合であると言われる。日本が環境・省エネで世界最先端の技術を開発できたのは1970年代の石油ショックを通して産業界では生産の効率化を図らざるを得ず、その結果、イノベーションが起こり、ハイブリッドカーなど国際競争力のある省エネ製品が生み出されていくことにつながった。環境技術にしても公害訴訟などの経験を通し、環境対策を社会的コストととして織り込むことによるコスト比較の結果、環境技術のイノベーションが起こってきた経緯がある。太陽電池も日本メーカーが世界で高いシェアを誇っていたが、ドイツが国の政策として太陽電池を推進した結果、日本の太陽電池メーカーはドイツや中国メーカーの後塵を排するようになった。

 過去の教訓から言えるのはCO2・25%削減という、ある意味では破壊的な目標設定が公約されたことをイノベーションを起こすチャンスであるという前向き思考の捉え方と実現に向けた有効な政策を打つことが必要である。

 ICT業界においては通信やサーバーなど膨大な電力を消費しており、電力の削減努力を求められるとともに、ICT利活用による産業全体のCO2削減に貢献していくことが期待される。

ICT利用の最進国へ

 日本はブロードバンド・インフラ整備においては世界トップクラスにランクされていながらICT利活用において、特に政府のICTへの取り組みに対する評価が低いため、ICT競争力ランキングは世界17位に甘んじている(「ICT競争力ランキング(2008〜2009年版)」世界経済フォーラム発表(2009年3月):次頁図表参照)。

【図表】世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングの推移

【図表】世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングの推移

出典:「ICT競争力ランキング(2008〜2009年版)」世界経済フォーラム発表(2009年3月)

 民主党政権にはICT競争力ランキングにおいて日本が世界トップクラスになる取り組みを期待したい。

 民主党政権はマニフェストに掲げた官僚依存の政治からの脱却を目指し、当面の課題である補正予算の見直しと新たな施策に取り組み始めている。そのなかで、今後の大きな課題として官僚制度の弊害の一つである縦割り行政の見直しがある。これまでも民間企業において事業効率化のために情報システムの導入が行われているが、ICT化成功の鍵はその前提となるICT化に向けた仕事の見直しである。縦割りの部門の仕事をいかに横通して効率的な仕事のやり方に変えるか、あるいは組織を見直すかが重要である。縦割り行政をそのままにして行政の電子化だけをしても国民に使われないままのICT化になりかねない。民主党政権には縦割り行政の弊害を無くす行政のICTを進めてもらいたい。従来の「ハコモノ」への予算からICT投資へ切り替えることにより、官僚依存への政治からの脱却とICT産業の国際競争力強化を目指すべきである。

グローバル研究グループ部長 真崎 秀介

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。