2011年5月35日掲載

2011年4月号(通巻265号)

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コラム〜ICT雑感〜

「スマホ」を持った「ガラケー人間」

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 今年初め、長年使ってきた絶滅危惧種と言われる2Gの携帯電話機を買い替えることにした。知り合いからは「未だそんな古い携帯電話を使っているのか」という半ば非難めいた眼で見られてきた。年齢からいっても「らくらくホン」にすべきかどうかさんざん迷った挙句、これが最先端のICT機器に触れるラストチャンスだと言い聞かせて職場近くのショップに出かけた。次の選択は「スマホ」にするか「タブ」にするかであったが、結局、通話し易いということで「スマホ」に決めた。「スマホ」を使い始めて2カ月しか経過していないが、「ガラケー人間」の「スマホ」利用の感想を述べてみたい。

「スマホ」を使ってみて

 「ガラケー人間」の最大の懸念は月額使用料がどれ位になるかであった。2G使用の時は月額平均3,500円という携帯電話会社のARPU(平均月額使用料)を引き下げることに貢献したユーザーであったが、最初の請求書は何と8,000円を遙かに超えてしまった。ユーチューブなど動画を見てしまうと、「たくさん使ってもあんしん!」プランの上限額5,985円弱を簡単に超えることが分かった。3月は動画を見ないようにして、アプリのニュースを見るだけに留めているが、次の請求額は果たしてどれ位になるだろうか。ショップの説明員から言われたようにスマホ利用者は上限を気にせずにパケット使い放題という点にメリットがあると思う。使い放題になるとおそらく総額で月額料金が1万円近くになり、ユーザーにはかなりの出費負担になると思うが、ヘビーユーザーの多くは「スマホ」で必要な情報が得られるため、新聞、本、雑誌も購読せず、場合によってはPCも利用しなくなり、固定電話も解約するということになるのではなかろうか。結局、他に使っていたお金がスマホに吸収された形になっていくだろう。

  「スマホ」を使ってみての印象は先ず手に持ったフィット感が良く、タッチパネルの操作が思った以上に簡単で、片手でも操作が可能であること。また、液晶画面が鮮明で、最初は文字が小さくて読めるかどうか心配したが、拡大しなくても十分に読めることであった。画面拡大機能は展示会のパネルを写真撮影したあと文字を判読する場合に有効であることが分かった。それと「スマホ」の特徴は何と言ってもアプリの多さで、しかも次々と新たに開発されていく点である。「ガラケー人間」にとってはとてもアプリを使いこなすことにはならないだろうが、新たな使い勝手、ビジネスチャンスが生まれる可能性を持っていると感じた。しかし最大の問題は電力消費が極端に早いことである。動画を見なくても、2日位で充電しなくてはいけないので旅行に行く場合には充電アダプターが必携になる。現在、大半の若い人達が画面を見ないで超スピードのキー入力が出来ると言われている。不正入試も社会的問題になったところであるが、この神業が果たして「スマホ」ではどうなるのであろうか。

「スマホ」による増収試

 携帯各社も新たな「スマホ」の機種を次々に投入しており、ある調査会社の見込みでは2012年度にも「スマホ」が出荷台数の過半数を占め、5年後には総契約数で従来型の携帯電話機数を逆転するという見通しを立てている。「標準機」携帯に比べARPUが毎月1,000円増収になると仮定すると、収益面からみると半数が「スマホ」に置き換わる5年後の2015年〜16年には携帯事業者全体で5,000億円の増収、全ての携帯電話機数約1億台が置き換わった時点で1兆円を超える増収効果になる計算である。しかし、各社は「スマホ」販売に力を入れており、家電量販店など代理店販売手数料が「標準機」携帯販売に比べ大幅に高いと想定される。従って、販売に係る費用も嵩み、「利益」押上げ効果がどの程度になるかは各社の業績が出揃うまでもう少し待つ必要があると思われる。

スマホで巻き返しなるか

 「ガラパゴス化」で日本の携帯メーカーが国際競争力を失ったといわれるが、「スマホ」の登場により巻き返しはなるであろうか。最近、各社が再度、海外進出の準備を始めたと報道されている。分析によると「スマホ」の材料、部品の約35%が日本製であると言われる。それが本当だとすれば、韓国のサムスンやLGがグローバル展開して「スマホ」を売れば売るほど日本の材料、部品メーカーが儲かる構図になっている。日韓間の2008年の貿易収支では日本から韓国への輸出額が6.2兆円に対し、韓国からの輸入が3.1兆円と日本にとって倍額の黒字になっている。おそらくこのなかには携帯電話の材料、部品が含まれていると思われるので、「スマホ」が普及するにつれて黒字額が拡大する半面、日本でのサムスン、LGの「スマホ」普及でこの黒字額が相殺される可能性がある。

 日本のメーカーも統合・再編を進め海外進出を図る機運にあるが、日本の強みである材料・部品の強さを最大限生かすオールジャパンとしての取り組みを期待したい。

グローバル研究グループ 常務取締役 真崎 秀介

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