2011年7月28日掲載

2011年6月号(通巻267号)

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コラム〜ICT雑感〜

ネット時代と義援金

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 今回の東日本大震災は、阪神大震災といろいろと比較される。とりわけ三陸地方は、地震、津波、原発事故、さらには農水産物等の風評被害など、広範囲に長期にわたって大きな被害が連日報道されている。

 それためか、義援金、寄付、援助金の様相が阪神の時とはずいぶんと変わってきたように思える。まず、金額についてである。日本赤十字社によると、被害日本大震災から2週間のうちに入金が確認された義援金は401億円と、阪神の時の2週間で161億円を大きく上回ったという。最終的には阪神の時の総額1,793億円を大きく上回る勢いである。また、1件あたりの金額も多く、各界の有名人が寄付や支援を積極的に呼びかけていることも影響しているだろう。その方法についても様変わりしている。従来の募金箱、街頭募金、職場や隣近所の募金活動に加えて、ネットを活用した様々な方法で幅広く簡単に振込みやすい環境が用意されたことも大きい。JALやANAのマイレージ、DCやJCBなどクレジット、ヤフーなどネット上のポイントを活用することも増えている。さらには携帯各社のiモード、チャリティダイヤル、おサイフケータイからの支払、などなど、従来にない簡単な方法で募金・義援金が実施されている。ところが、せっかく多くの善意が寄せられているのに、なかなか被災者に渡らないようだ。集まった義援金の3割程度しか配布されていないという。あまりにも被災地が広範囲で被災者が多すぎるため処理しきれないのが実情らしい。

 このような中、阪神大震災の時に西宮市が開発した「被災者支援システム」についても注目したい。世帯ごとに、犠牲者の有無、家屋の状態、避難先、罹災証明書発行に履歴、銀行口座番号、義援金の支給状況など、支援に必要なデータと住民基本台帳を一括して管理するシステムである。このシステムは義援金や被災者生活再建支援制度の給付管理にも利用されている。同システムはすでに全国の200以上の地方公共団体で導入されており、台風や新型インフルエンザ対策でも利活用されているそうだ。もっとも、今回の被災地では、情報システムの機器やネットワークが津波で破壊されてしまったところもあり、結局手作業で処理せざるをえないところもあるという。このことについては今後の課題として工夫が必要であろう。

 被災地はまだまだ復旧途上にある。岩手県大槌町(写真:いずれも筆者写す)他いくつかの被災地を訪問したからではないが、しばらくの間はネット上でささやかながら義援金を送るつもりである。

【町長も犠牲に】【町長も犠牲に】

【電話交換局舎は残ったが】【電話交換局舎は残ったが】

【跡形も無くなった大槌駅】【跡形も無くなった大槌駅】

社会公共システム研究グループ 常務取締役 高橋 徹

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