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研究の眼
2010年10月15日掲載

Google TVを考える。

グローバル研究グループ 山本 惇一
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 2010年5月に発表された、「Google TV」であるが、ソニーとLogitecから遂に「Google TV」対応製品が米国で10月16日より発売される。

 5月の発表時には未定であった販売価格はソニーの「Google TV」対応の液晶テレビ「SONY Internet TV」シリーズが24型で約600ドル、48型で1,400ドルとのこと。 ソニーのブラビアの26型が約5万円、46型が約13万円(ビックカメラ.com)で売られていることを考えると価格的に差はほとんどなく、非常にお得にも感じる。これは一つ普及に向けてはプラスの材料であろう。ちなみに米調査会社のForrester Researchは、2015年までには米国では4,300万台までインターネットに接続されるTVが普及すると予想している。価格が同程度であれば、インターネット接続タイプのTVでもいいかな、という印象はある。

  ここでご存知の方も多いかもしれないが、Google TVの特徴とグーグルの狙いを簡単におさらいする。Google TVの特徴は第1に放送中の番組とネット上のコンテンツを同時に検索できる「Google.com」のような検索バーである。この検策を利用すると、テレビのコンテンツとインターネット上のコンテンツが一緒に検索結果の一覧として表示される。第2にAndroid Marketに対応(2011年初めに対応予定)しており、様々なアプリをテレビ上で動かすことができるという点である。第3にChromeブラウザを搭載しており、テレビ上でウェブページの閲覧が可能であるという点である。ちなみに入力はQWERTYキーボード付の専用リモコンで行う。

 グーグルの狙いは世界で約40億のテレビ視聴者からの広告収入の獲得にある。グーグルの戦略の基本はインターネットに接続する端末を増加させることで、結果的に広告を獲得していくというものであり、「Google TV」を発表した「Google I/O」でも米国のテレビ広告市場は約700億ドルにも及ぶという点を言及していた。 また、グーグルとソニーは「アンドロイドプラットフォームを利用したクラウド・ベースのサービス/製品に関する戦略的提携」を結んでいる。Google TVはその第一弾製品という位置づけであり、今後アンドロイドを搭載した様々な家電の提供が予想される。

Sony Internet TV(Blu-ray Disc Player NSZ-GT1)
Sony Internet TV Blu-ray Disc Player NSZ-GT1
(写真: Sony Electronics News and Information, Image Library)

 さて、この「Google TV」、実際に利用するだろうか。

 リモコンとUIが使い易いという前提であれば、個人的にはアプリ次第という気がする。

 まず、プリインストールされているアプリの中ではDVDレンタル大手Netflixのような映像コンテンツのアプリに関しては利用する可能性は高いと考える。例えば、テレビの地上波でドラマの再放送の第1回をやっていて、第2回、第3回を続けて見たい場合などはNetflixでその再放送の映像を見るといったパターンだ。

 一方、Twitterを始めとしたコミュニケーション系のアプリに関しては、テレビ+スマートフォン(タブレット)といった使い方をするのではないか。テレビを見ながらTwitterという使い方は市民権を得始めている。先のワールドカップ南アフリカ大会の日本対デンマーク戦では、なんと最高1秒間に3,283回のTweetがされたらしい。あの試合は深夜に行われていたこともあり、喜びをTwitterで分かち合いたいという気持ちはわかる。

 それでは、Twitterをテレビ上でやりたいか、これは個人差がでるのではないか。「画面がやかましい」「リモコンからの入力が簡単か?」「(家族がいる場合)家族には見られたくない」などの理由から、テレビとスマートフォン(タブレット)の2スクリーンを利用するユーザが多いのではないかと想像する。

 今回プリインストールされているアプリの中から簡単に利用しそうなシーン、利用しなさそうなシーンを想定してみたが、Android Marketからゲームのアプリが提供されれば、ゲーム機なしでゲームを楽しむことができたり、可能なことは色々ありそうだ。

 さて、今後であるが、最初にあげたように価格が比較的リーズナブルである点、また2011年夏以降「Google TV」はオープンソース化される予定であり、世界テレビ販売シェア首位のサムスンなど他のメーカーが「Google TV」対応のテレビ提供の準備をしている点から考えると将来的には市場に出回る対応テレビの台数はそれなりの数になってくるのではないか、と予想する。

 また、コンテンツに関しても例えば米国で人気の動画サイトであるHulu(現在グーグルと協議中の模様)など人気コンテンツ(特に動画系アプリ)がどこまで集まるかがポイントではあるが、恐らくコンテンツをインターネット上に流通させるというトレンドは固まっているので、相応のコンテンツが集まるだろう。少なくとも3Dテレビよりもコンテンツの調達は簡単である。

 このように端末、コンテンツ共に今後の増加が予想できる中、携帯OSでも確実にAndroidのシェアを伸ばしているグーグルが、TVでも2〜3年後にはそれなりの地位を築いているのではないだろうか。今後の展開が楽しみである。

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