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研究の眼
2010年11月22日掲載

高齢化社会におけるICTの活用例〜自動転倒検知技術〜

グローバル研究グループ 山本 惇一
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 内閣府が発表した平成22年度「高齢社会白書」によると、2009年の日本の高齢者人口(65歳以上)は2,901万人、今後も高齢化は続き、2020年にはその数、約3,600万人にも及ぶ超高齢化社会に突入する。このように超高齢化社会を迎える日本でICTの活用が期待される部分は多い。

 今回は高齢者の中でも一人暮らしの高齢者に役立ちそうなサービス、「自動転倒検知技術もつPERS(Personal Emergency Response Systems )」を紹介する。一人暮らしの高齢者は2010年には400万を超えるなど、独居老人に関わる問題は今後さらにクローズアップされる可能性が高い。

 「高齢社会白書」によると一人暮らし高齢者は他の世帯と比べ、「心配ごとや悩みごとがある」 人が多い。またその具体的な心配ごとや悩みごととしては、「自分の健康」、「病気のときに面倒を見てくれる人がいない」といった点があるようだ。そのような心配ごとを解決するため、例えば一人暮らしの高齢者が緊急に何かを連絡したい場合、ボタンを押すことによって通報するといった仕組みは以前からあった。ただ、今回紹介する自動転倒検知技術は、更に一歩進んでいる。どのような仕組みになっているのか、自動転倒検知技術をもつサービスを提供しているWellcoreを例に紹介したい。

 まず高齢者の方は自動転倒検知機能を持つ小型端末を胸やズボンなどに装着して日常を過ごす。万一、高齢者が階段を踏み外すなどの理由で転倒をした場合、小型端末が自動で転倒したことを検知し、その情報を「Wellcore」のコールセンターに伝える。また、転倒を感知した際、 必要な場合は「Wellcore」から救助がくる他、家族等への連絡も代行するといったサービスである。

Discover the Wellcore Personal Emergency Response System(WellcoreSystem)

「Wellcore」のサービスは、(1)親機、(2)自動転倒検知機能を持つ小型端末(子機)、(3)家族などが高齢者の毎日の状況を把握するために利用できる専用のWebサイトの3つで構成されている。ちなみにこのサービスの料金は端末料金(初期費用)+月額サービス利用料で計算され、端末料金(親機+子機1つ)は199ドル、 サービス利用料は49.99ドル/月である。

 小型端末にはモーションセンサーとZigBeeが内蔵されており、親機経由で全ての情報がWebサイトへ送信される。ちなみに、ZigBeeとは半径数十メートル以内(パーソナル・エリア)にある機器間の通信用として考案された無線通信の技術で、ビルや工場の制御を自動化するためのセンサー・ネットワークで利用されている。(技術の利用は米国中心)

 その他にもこのサービスには様々な機能がついており、家族等は専用Webサイト上で、 「小型端末を装着した高齢者の一日の歩数や活動状況などを把握することが可能である。また、家族等がWeb上で記載したメッセージを端末から音声で確認すること(Text-to-Voice機能)もできる。高齢者は親機から音声で確認することが可能だ。

 また、「Wellcore」は日々の行動パターンを端末側で認知/分析し、高齢者が小型端末を装着していないと判断した場合、Webサイト上にその旨のメッセージが送付さといった機能も有している。

 米国のメディアも「毎年65歳以上の3人に1人以上は「転倒」しており、その中には入院が必要なものも存在する」(PCmag 2010.01.06)、「多くの高齢者にとって他人に自らの事故を知らせることは気が進まないことである、と考えると自動検知はLifesaverになる。」(Information Week 2010.03.23)など評価している。

 長い間生きていた人生の最後を誰からの支えもなく一人で迎えるというのは非常に寂しいことである。今回紹介したようなICTを利用したサービスが、一人でも多くの高齢者を救う手立てになれば、非常に価値のあるサービスだと考える。

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