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研究の眼
2010年11月25日掲載

CoBrowserとテザリング

グローバル研究グループ 小川 敦
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最近、App Storeの"CoBrowser"というアプリがダウンロード数を伸ばしている。

CoBrowser で iPhone と iPad で同じブラウザー画面を表示する方法

 このアプリは、例えばiPhoneで見ているウェブページをBluetoothを介してiPadに同じウェブページを表示するというもの。もちろん、その逆もできる。iPhoneをホスト、iPadをクライアントとした場合、インターネットに接続するのはホスト側のiPhoneだけで済む。クライアント側にはインターネット接続が必要ないということで人気を博しており、App Storeでのレーティング(★の数)も高い。
こう書くとテザリングを連想するかもしれないが、このアプリが提供するのはテザリングとは似て非なるもの。アプリの説明にも「CoBrowserは技術的にテザリングを可能にするものではありません」とある。テザリングとは端末をモデムとしてインターネットに接続すること。このアプリは、ホスト側の端末に表示されているウェブページをクライアント側の端末にミラーリングするだけで、テザリングとは異なる。似て非なるものではあるが、その手軽さとテザリングに近い感覚がユーザの心を掴んでいるようだ。

 ところで、iPhoneはOSレベルではテザリングに対応している。iOS(当時はiPhone OS)のバージョンが3.0になった2009年6月のことだ。米国のAT&T Mobilityでは、月額45ドルの専用料金プラン(通常のiPhone用料金プランと比較すると20ドル高い)に加入するとiPhoneによるテザリングが利用できるようになっている。しかしながら、日本でiPhoneを提供するSoftBank Mobileを含め、OSレベルでは対応していても、実際の運用では各社の判断でテザリング機能を提供していない通信事業者がほとんどという状況である。

 こうした状況はAndroidでも同様である。2010年5月に発表されたAndroid 2.2(Froyo)でテザリング機能が搭載された。同バージョンがリリースされ、筆者が所有するHTC製Nexus OneのOSアップデートを行ったところ、実際にテザリング機能を利用することができた。しかしながら、海外で流通しているAndroid 2.2搭載Samsung製Galaxy Sはテザリング機能に対応しているものもあるが、NTTドコモが販売しているGalaxy Sでは同じAndroid 2.2にもかかわらず無効化され、不活性となっている。また、同じくNTTドコモが販売しているSony Ericsson製Xperiaについては、最近ようやくAndroid 2.1(Eclair)へのアップデートが可能になったに過ぎない。

 CoBrowserの話に戻るが、こうした状況の中での同アプリの人気ぶり(2010年11月24日現在、App StoreのiPhone向け有料アプリ・ランキング23位、iPad向け有料アプリ・ランキング1位)には頷けるものがある。以前からテザリング機能を求める声は多かったが、テザリングに近いCoBrowserの人気ぶりはテザリング需要の潜在性を如実に示していると言える。Pocket Wi-Fiなどモバイルルーターの販売も伸びているようだが、スマートフォンでテザリング機能を利用できるようになれば、バッテリー消費の問題はあるものの、スマートフォン1台分の回線契約で事足りるようになる。通信事業者はデータ・トラフィックの急増でネットワーク・キャパシティの問題に悩まされているが、今後LTEやDC-HSPA+などが導入されていく中で、テザリング機能がどういう扱いになるかについても注目していきたい。

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