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研究の眼
2010年12月9日掲載

アジアの注目4市場(中国、インド、ベトナム、インドネシア)を比較する(基本データ編)

グローバル研究グループ 山本 惇一
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 最近、ニュースや経済系の番組で「アジアの成長を如何に取り込むか?」というテーマで日本企業の取組や、日本に観光で訪れる中国人等を紹介する機会が非常に多い。また、2010年6月に政府が発表した「新成長戦略」の中の7つの戦略分野の一つに「アジア」が位置づけられている。

 このように「アジア」が今後の日本の成長を支えていく中でのキーとなってくるだろう。ということで、今回から複数回に渡ってアジアの市場や通信の状況などを紹介していきたいと思っている。ただ、アジアといっても非常に国が多いので、「BRICs」におけるアジアの中国、インドと、投資の世界ではBRIC’sに次ぐ存在として挙げられている「VISTA」(V=ベトナム、I=インドネシア、S=南アフリカ、T=トルコ、A=アルゼンチン)の中のアジアの国であるベトナム、インドネシアといった国にフォーカスしていきたい。

 ちなみに「BRIC’s」を提唱したゴールドマン・サックスが「BRIC’s」に次ぐ存在として挙げた「NEXT11」はインドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコの11ヶ国で、こちらにも今回紹介するベトナム、インドネシアが含まれるので、ベトナム、インドネシアといった国がアジアの中での注目国であるということは間違いないだろう。

 前置きが長くなったが、今後何回かに渡って、中国、インド、ベトナム、インドネシアの4ヶ国の通信市場の状況をみていきたい。初回となる今回はまず各国の経済状況などの基本的な情報を比較する。

図1:アジア4ヶ国の人口、GDP、一人当たりGDP

出典:人口:WHO世界保健統計2010年より GDP:IMF(2010年は予測値)
  人口
(百万人)
2008年

GDP成長率(%)

2007〜2010の
GDP成長率
平均値
一人あたりGDP-2005
(US$)
一人あたり
GDP-2010
(予測)(US$)
2007 2008 2009 2010
中国 1345.7
(世界1位)
13 9.6 8.7 10 10.3 1,726 4,282
インド 1181.4
(世界2位)
9.4 7.3 5.7 8.8 7.8 716 1,176
ベトナム 87
(世界13位)
8.5 6.2 5.3 6 6.5 636 1,155
インドネシア 227.3
(世界4位)
6.3 6 4.5 6 5.7 1,300 2,963
日本 127.5
(世界10位)
2.4 -1.2 -5.2 1.9 -0.5 35,633 42,325

 まず人口であるが、この4ヶ国は全て世界トップ20位に入る人口を持っているということがわかる。この人口だけみてもマーケットとしては魅力的である。次にGDP成長率であるが、日本が2007年から2010年(予測値)までを平均するとマイナス成長に陥っているのに対し、これら4ヶ国はリーマンショックの影響を受けながらも、平均5%以上という高い成長力を維持している。また、一人当たりのGDPは4ヶ国中最も高い中国でも日本の10分の1程度と、まだまだ今後の成長が期待できそうだ。

 ただ、これらの国を見る場合、平均以外にも以下のような数値をみる必要がある。図2は一人当たりが1日に消費する金額を金額別にグラフ化したものであるが、例えば2005年のインドには75%程度の一人当たり1日2ドル以下で暮らしている貧困層と0.1%の一人当たりが1日20ドル以上使う富裕層が存在しているということがわかる。インドの人口は11億人程度いるので、11億人の0.1%でも110万人とそれなりのボリュームになる。そのため、インドで一般消費者をターゲットとした戦略を考える際には11億人の0.1%を中心に狙うか、それとも1日2ドル以下で暮らす75%を狙うかというのは大きなポイントになってくるであろう。顧客の平均単価を考えると前者の方が、ビジネスとして成立しやすいというのは明白であるが、後者を中心に考える所謂BOPビジネスというのも注目されており、どの程度の期間で、どの程度の規模のビジネスをしたいと考えるかで、この戦略も大きく変わってくるのだろう。

図2:インドの1人あたり1日に消費する金額(2005年)

図2:インドの1人あたり1日に消費する金額(2005年)
出典:Asian Development Bank「Key Indicators For Asia And The Pacific 2010」を基に情総研が算出

 ちなみに今回紹介した数値は2005年のものであり、2005年から2010年の間にインドの一人当たりのGDPは2倍近く増加しており、このグラフがどのように変化しているのかを見るのも非常に興味深い。

 今回は非常に基本的な経済状況について簡単に記した。次回は通信市場の状況等に迫ってみたい。

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