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Global Perspective 2010
2010年12月21日掲載

セルビアの携帯電話事情について

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2010年10月14日、セルビア当局は、政府が保有するTelekom Srbija(テレコムセルビア)の株式保有株式51%の売却を発表。同社買収に以下の7社が名乗りをあげた。

  • Deutsche Telekom(ドイツ)
  • France Telecom(フランス)
  • Telekom Austria(オーストリア)
  • America Movil(メキシコ)
  • Weather Investments(イタリア)
  • Turkcell(トルコ)
  • Vimpelcom(ロシア)

 今後、7社は2011年2月21日までに、必要書類を提出し、オークションに参加し、最高値を付けた会社が落札することになる。オークションは2月末を予定しており、テレビ中継もされるとのこと。テレコムセルビアはセルビア以外にもボスニアヘルツェゴビナ、モンテネグロでも展開をしている。
 またテレコムセルビアは、セルビア最大の携帯キャリアであるMobile Telephony of Serbia (MTS)の親会社でもある。
セルビアと言っても、日本人には馴染みがないかもしれない。ボスニア内戦、民族浄化、コソボ紛争、ミロシェビッチ等、血生臭いイメージを持っている方も多いかもしれない。2006年にモンテネグロが分離独立し、現在はセルビア共和国として安定している。
非常に複雑な歴史を持つ国で興味深い。

【セルビア共和国簡易概要】
首都:ベオグラード(旧ユーゴスラビアの首都)
人口:約750万人
公用語:セルビア語
面積:88,361km² (北海道より若干広い)
GDP:796億ドル(一人当たり10,792ドル)
主な産業:石炭・アルミニウム等の鉱業、農業、サービス業

 今回は、セルビアの携帯電話事情について簡易な概要を紹介する。

  • 携帯電話加入者は、2010年9月現在、約1,464万(普及率:141%)で、一人が複数のSIMを保有している状況で、昨年から6.4%増加。
  • プリペイドユーザが約70%。
  • 2006年より、3G(W-CDMA) が導入されたが、2010年9月で145万人と全体の10%程度。
  • ミドルからローエンド端末が主流。
  • 2011年3月からはMNP開始を予定している。

携帯電話事業者は以下3社。

  • Mobile Telephony of Serbia (MTS)
  • Telenor Serbia (旧 Mobi063)
  • Mobilkom Serbia (VIP Mobile)

 3社の比率は下記の通りで、MTSが約60%のシェアを持つ。今回売りに出されたテレコムセルビアの子会社である。

【各事業者簡易概要】

(1)Mobile Telephony of Serbia (MTS)

  • 政府系テレコムセルビアが株式を80%保有。残り20%はギリシャOTE。
  • 市場シェア:59.2%(2010年9月)
  • プリペイドユーザ比率80%
  • 2008年4月にAlcatel-Lucent、RIMと提携して、BlackBerry端末を活用した法人向けサービスの提供を開始。

(2)Telenor Serbia (旧 Mobi063)

  • ノルウェー大手のTelenor が Mobtel を買収。
  • 固定網も2010年から開始。
  • 市場シェア:28.5% (2010年9月)
  • プリペイドユーザ比率が66%
  • プリペイドARPU:6.7ドル、ポストぺイドARPU:20.5ドル(2010年9月)

(3)Mobilkom Serbia (VIP Mobile)

  • オーストリア Mobilkom が2006年11月に設立。
  • 市場シェア:12.2%(2010年9月)
  • 2007年10月には、Visaカードとモバイルペイメント提携を行い、MobilkomユーザのVisaカード保有者はSMS送信のみでリチャージできるようになった。
  • 2008年4月、Vodafoneとのパートナーマーケット提携を行い、Mobilkom Serbia を通じてVodafoneのプロダクト、サービスの提供を開始。

 2009年のセルビア経済成長率は世界金融危機の影響によりマイナス3%に転じた。2010年には1.5%にプラス成長に回復する予定だが、失業率も17.4%と高い。2009年5月には、IMFから約30億ユーロの融資枠の承認を得て公共支出の削減等構造改革に取り組んでいるとのこと。
 これらは世界金融危機による、外資導入の減少等の影響が考えられている。今回の株式売却もその影響の一環ではないだろうか。
 すでに人口普及率140%を超えるセルビアの携帯電話市場だが、新たにどこの国から外資が参入してくるか、今後の動きに注目である。
 特に、北・中南米大陸のみで展開しているAmerica Movilが名乗りを上げていることも欧州への進出の布石としようとしているのではないか、と注目に値する。

【参考動画:MTS社のテレビCM】

(セルビア伝統的な民族舞踊『コロ』をモチーフにしている。政府系だから民族色が強いという訳ではないだろう)

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