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研究の眼
2011年1月7日掲載

Facebookとコンフィデンシャリティ

グローバル研究グループ 小川 敦
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 最近、Facebookに対するネガティブな意見を探していたところ(念のため書いておくが、筆者はFacebookに対して悪意を持って粗捜ししているわけではない。あくまで調査研究の一環)、こういう記事があった。

 海外サイトによくある、いわゆる「10の方法」シリーズ。筆者が本稿で注目したいのは、前者の2と7、後者の7である。順番にそれぞれの訳を付しておくと、「債権者に追い回される(Your creditors can track you down)」「家族に秘密がバレる(It can out you to your family)」「詮索されやすい(It's too easy to snoop)」
Facebookに関しては、個人情報などのセキュリティ面についての懸念が既に指摘されているが、これらの記事でもその手のネタを扱っている。Facebookは実名での利用が多く、本人性が高いということが背景にある。

 そもそも、現代人は実に様々なコミュニケーション・ツールを駆使しているわけだが、その全てで同じ人格を保っている人は少ないように思う。例えば、電話、メール、ブログ、ソーシャルメディア、2ch、オフライン。これらを使い分ける場合、ほとんどの人が意識的/無意識的にそれぞれのツールに応じた人格を形成している。筆者についても、本稿を書いているのは「それ用」の人格だと言える。こういう意味で、実名で本人性が高いからといって必ずしも「本人」かどうかは分からない。このあたりの話は社会学者や心理学者の所掌かもしれないが、最近では企業が社員を採用する際、書類審査や面談だけでなくソーシャルメディアでの振る舞いもチェックすることがあるという。ツール間でこうした人格のギャップがあるからこそだろう。

 何が言いたいかというと、Facebookなどのソーシャルメディアは借金する際の与信審査の材料(連帯保証人含め)としても、親が子の結婚相手の素性を知るための手段としても有用であるということ。特に、その他の方法で合法的に個人情報を取得する手段は限られているため、その有用性は高い。Facebookアカウントを持っている企業などの法人も多く、取引先の信用情報を知りたい場合も参考として使えそうである。企業の信用情報と言えば、帝国データバンクなどが著名だが、当然その商品である信用情報にアクセスするには相応の対価が必要である。昔と比べて今は、情報の重要性は高く認識されている一方、少なくとも全体としての金銭的価値は相対的に下がっている(無料で多くの情報が手に入るようになった)。

 Facebookを始めとした昨今の状況は、個人情報や信用情報というかなりコンフィデンシャルな情報でさえその例外ではないということを示唆しているのかもしれない。

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