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2011年2月16日掲載

欧州:統一規格の携帯電話充電器が登場

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年2月11日、欧州委員会(European Commission:以下、EC)が、欧州で規格統一された初の携帯電話用充電器を発表した。(下記動画参照)

 これによって、これまでメーカごとでバラバラだった携帯電話用充電器がEU加盟27か国で統一されることになる。
2010年12月には欧州の標準化団体である欧州標準化委員会(CEN)欧州電気標準化委員会(CENELEC)欧州通信規格協会(ETSI)が、マイクロUSBをベースにした規格を発表していた。
今回発表されたのは、この規格に準拠した初の充電ケーブルで、携帯電話機以外にも、携帯音楽プレーヤー、ノートPC、デジタルカメラなどの充電にも使えるようになるという。

 ECは長年に渡って携帯充電器の規格統一を推進していたが、採用するかどうかは各メーカの決定に委ねられていた。そのため、なかなか統一が進まなかった。ECでは2009年12月に最後通告(ultimatum)を発し、各メーカが自発的に採用するように促した。これを受け、以下の14社が携帯電話充電器の規格統一に合意した。下記14社で欧州の携帯電話販売の90%を占める。日本企業はNECのみ。

 ECによると、欧州では1年に約5億台の携帯電話機が出荷され、現在30種類以上の異なる充電器がある。ユーザの観点からは利便性がよくなかった。携帯電話を買い換えるたびに充電器を捨てることも多く、環境への悪影響も指摘されていた。ECによると、処分される充電器だけで毎年51,000トン以上のゴミが発生しているとのこと。
EUは2003年に廃電気電子機器を減少させるため、リユース、リサイクルを推進するWEEE指令を発している。環境への取組も非常に熱心である。このような背景もあり今回の充電器の規格統一はEUにとって非常に良い施策と言えるだろう。EUでは「One charger for all」のサイトを立ち上げ普及活動も行っている。(下記動画参照)

 一方でメーカ側にとっては、今まではメーカ内での携帯電話充電器の統一をすることによって差別化(ユーザの繋ぎ止め)を図っていた。例えばNokiaの携帯電話は充電器の互換性があることが多く、以前に利用していたNokia端末と同じ形式の充電器であればユーザは新たに充電器を買う必要がなかった。
 ECの発表には、罰則規定はないがメーカにとっても環境を配慮し、ユーザの利便性が向上するのであれば、あえて独自の規格の充電器を作ることはないだろう。ある特定の端末だけが独自の互換性のない充電器では、ユーザがそのような端末は面倒だから購入しなくなることの方がメーカにとっては困るだろう。

 今回の規格統一を受けて、ユーザにとっての利便性は向上するだろう。さらに環境にもとても良い。ユーザ間での充電器の貸し借りも簡単になるだろうし、ホテルや空港ラウンジ等での貸出サービスも進んでいくだろう。

 ECは会見の中で、「Beginning of Revolution」と述べている。利便性、環境面から考慮しても今回の施策は非常に画期的なことだろう。
日本では御存知のように、各キャリアによって充電器の形状が異なる。NTTドコモではFOMA標準機ではだいぶ統一化が図られたが、スマートフォンの登場と爆発的な成長により、異なる形状の充電器に戻りつつある。
 今後は欧州だけでなく日本も含めた世界にも広がっていくことを期待している。携帯電話メーカ側も製造コスト削減と出荷先ごとの仕様変更が無くなり良いのではないだろうか。海外出張時に充電器を忘れても現地で簡単に充電できるようになる時代が早く来ることを楽しみにしている。

(参考サイト)

【参考動画:規格統一された充電器を発表するEC】

【参考動画:One charger for allの紹介動画】

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