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2011年2月25日掲載

エチオピア:成長が期待できる携帯電話市場

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2010年12月2日、エチオピア情報通信大臣Debretsion Gebremichael氏は、フランステレコムとエチオピア国営で独占企業のエチオピアテレコム(ETC) と提携したことを発表した。ETCはフランステレコムと2年契約で、ETCの組織改革、ブランドの見直し、新サービスの導入等を行い、パフォーマンスに応じて約4億ドルの支払いを行う。
今回の契約に基づいて、新たに名称を「Ethio Telecom」とする。また経営陣の刷新も行う。
フランステレコムはOrangeのブランドで携帯電話事業を実施している。
資本参加ではなく、フランステレコムへ経営改善のアウトソースし、エチオピアの通信の発展を図ることが目的である。民営化の予定もない。
今回の契約にあたって、南アフリカMTNやインドBharti も名乗りを上げていたが、最終的にフランステレコムが落札した。
今回の提携は、ICT業界でいうところの、eTOM(enhanced Telecom Operations Map)の導入であろう。通信事業者のビジネスプロセスの整理に必要な業務の整理ができるフレームワークである。詳細はこちらを参照。

エチオピアの携帯電話事情について簡易考察を行う。

【エチオピア概要】

  • 首都:アディスアベバ
  • 人口:約8,280万人
  • 面積:1,127,127km²<
  • GDP:709億ドル(一人当たりGDP:896ドル)
  • 宗教:エチオピア正教会、イスラム教等
  • 言語:アムハラ語、英語
  • 主産業:農業(コーヒー、ゴマ)

 エチオピアはサハラ以南では、ナイジェリア(人口約1億5,400万人)につぐ人口を持つアフリカの国であり、2050年には日本の人口を抜くと米国人口調査局は予測している。
 アフリカ最古の独立国であり、欧州列強がアフリカを支配していた時代も独立国家を保ち、1936年から41年のイタリアによる侵略を受けるだけで他のアフリカ諸国のように長期に渡り欧州列強の支配下になかったので、宗教、文化も独自性が強い。英語も都会では通じるがアムハラ語が広く浸透している。

エチオピア携帯電話市場概略

  • 携帯電話加入者数、約695万人。加入者普及率、約8.4%(2010年9月現在)
  • 国営企業ETCによる100%(独占市場)
  • 1999年にGSMでサービス開始。
  • 2009年に3G(W-CDMA)を首都アディスアベバ周辺で導入。3G加入者や約20万人(全体の約3%)
  • 過去に何回か民営化を試みたことはあるが、実施には至っていない。
  • 中国ZTEがネットワーク構築。

 2010年9月時点で、普及率10%以下であり、人口が約8,280万という巨大市場である。まだまだ数千万という伸びが期待できる市場である。エチオピアは人口の85%が農村部に住んでいるが、現在農村地域でのインフラ整備も中国ZTEを中心に実施されている。

 アフリカは世界で最も携帯電話の普及速度が速い地域といわれている。また、ケニアのM-Pesaに代表されるような携帯電話を用いたモバイル送金サービスもさかんである。
アフリカでは携帯電話はユーザにとって重要なライフラインであり、携帯電話の普及だけでなく、それに伴うサービスの成長の余地も大きい。

 参考に、他の主要アフリカ諸国を見ると、携帯電話加入者率は、ケニア約60%、ナイジェリア約55%、エジプト約83%、南アフリカ約90%(2010年9月現在)とエチオピアと比すると非常に高いし、廉価ながらも付加価値サービスも多い競争市場である。

 フランステレコムも今回の2年契約で約4億ドルの経営改善アウトソーシングの受託収入だけでは終わらせたくないだろう。その後も狙いたいはずだ。
フランステレコムはOrangeのブランドでの携帯電話を欧州だけでなく、アフリカ・中近東を中心に約20カ国で事業を展開している。今後、Orangeのアフリカ進出の更なる布石の一つになるかもしれない。

 8,280万の人口を持つ巨大市場のエチオピアはIMFの発表によると2004年から2010年まで、約10%前後で毎年経済成長しており今後も成長が更なる期待される。
他の海外通信事業者も虎視眈眈と狙っているのではないだろうか。アフリカの残された「おいしい市場」である。

 現時点では政府は民営化する予定もないし、他通信事業者の参入を許可する予定もないようだが、世界の潮流からしても、いつまでも国営独占企業だけで続けていくには限界があるだろう。競争の導入により、サービス、品質の発展も望まれるのではないだろうか。

 今のエチオピア通信業界に本当に必要なのは経営改善のeTOMでなく、民営化や市場での競争導入にではないだろうか。
今回のフランステレコムとの提携によりエチオピア携帯電話市場の活性化と更なる携帯電話の普及に期待したい。

(参考サイト)
Ethio Telecom :http://www.ethionet.et/

【参考動画:ETC時代のテレビ広告】
今回ブランド変更でプロモーションもどのように変わるかも重ねて期待したい。

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