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Global Perspective 2011
2011年6月8日掲載

スペイン:テレフォニカのNFCへの取組み

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年3月31日、スペイン最大手の通信事業者であるテレフォニカは、従業員を対象にした携帯電話を用いた決済、通勤時にNFCトライアルを実施すると発表した。
テレフォニカは以下の会社と提携してNFCサービスを推進していく。

【銀行】
La Caixa
Bankinter
BBVA

【クレジットカードブランド】
Visa

【SIM・セキュリティベンダー】
G&D
Oberthur

【携帯電話メーカー】
Samsung

【POSベンダー】
Sermepa

【レストラン】
Autogrill

 テレフォニカはまずスペイン国内で実施し、同国が全世界で事業展開する国にも拡大していく予定である。NFC対応の携帯電話は2014年までに、2億6,000万台に達し、そこからの決済収入は全世界で80億ユーロ以上になるだろうと推 定している。

 まずトライアルとして1,000人のテレフォニカ従業員が、テレフォニカのビジネスキャンパスと呼ばれるテレフォニカのオフィスのレストランでの支払いやオフィス内への入退室時にNFC搭載携帯電話を活用する。その後ビジネスキャンパスC地区の従業員12,500人がトライアルの対象者となる予定だ。テレフォニカはマドリッド郊外に広大なビジネスキャンパスを保有している。

 テレフォニカの最初のNFCパイロットプロジェクトは、バルセロナでの'Mobile Shopping Sitges2010'でLa Caixa 、Visaらと提携して実施したもの。 1,500人以上の人々と500の企業が参加して6カ月にわかって実施し、携帯電話を活用したNFCサービスに対して非常に、便利で・速くて・安全ということで、好感触を得たとのこと。

 ユーザが携帯電話に格納された情報に簡単にアクセスするために、テレフォニカではR&D部門が 'Movistar Wallet'を開発しており、これによってユーザはどの銀行カードから支払いをするか等が選択できるようになっている。また携帯電話には安全性の高いSIMカードを挿入することによってユーザ、店舗のセキュリティを確保する。

 2011年3月16日には、テレフォニカを含むスペインの3通信事業者Orange Spainで、NFCをスペインにおいて共同で推進をしていくという提携を発表している。今後、テレフォニカだけでなく、スペイン全土のユーザに利便性のあるNFCの提供をしてもらいたい。スペインの携帯電話加入者数は約5,600万で、普及率は2010年9月時点で、約122%という高さである。ユーザは一人で複数の通信事業者のSIMカードを保有しているのだ。このような市場ではユーザがSIMを使い分けた時でも互換性も含めた利便性が求められるだろう。もっともその場合通信事業者にとってのユーザの縛りというメリットはなくなる可能性は高いが、そのくらいの覚悟がないと1事業者だけで実施しようとしても、NFCのようなサービスは全国規模では広がらないと考える。

 今回のスペインでのNFCでのテレフォニカのビジネスモデルと役割、商用開始時期については明言していない。テレフォニカは今回のNFCのトライアルの後、どのようにスペインでビジネスを展開していくのか注目したい。また他通信事業者と提携しながらスペインでの携帯電話を活用したNFCサービスの普及のイニシアティブをとってもらうことに期待したい。
2011年6月3日、スペイン通信当局CMTによると、国内経済不況の影響でVodafone、Telefonica、Orangeの携帯電話利用者数が減少したとの報道があった。NFCが今後スペイン通信事業者の利用者増加と新ビジネスの起爆剤となることを期待したい。

 欧州ではイギリス、フランス、ドイツ、ベルギー等の通信事業者らがNFCに関するトライアルやコミットメントを発表してきた。ようやくスペインからもNFCに関するリリースが出てきた。
テレフォニカは2006年にイギリスO2を買収し、事業範囲をイギリス、ドイツ、チェコ等にも拡大しているし、中南米でも事業を展開している。各国での足並みを揃えるのは法規制、商習慣の問題も多く難しいだろうが、是非ともテレフォニカグループ一丸となって推進してもらいたい。そしてテレフォニカが予測するように2014年には携帯電話を活用したNFCでの決済金額が80億ユーロを超えるほどの成長を期待している。

【参考動画:テレフォニカのNFCサービスに取組について伝える報道(2011年)】
今回のデモ利用シーンの様子がわかる。

【参考動画:テレフォニカ職員によるNFCデモ(2011年)】

本情報は全て2011年6月6日時点のものである。

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