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Global Perspective 2011
2011年8月16日掲載

マレーシア:イスラム教徒向けMVNO「Salamfone」
〜新たなモバイルVASとしての宗教系サービス

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年4月6日、マレーシアで「Salamfone」というMVNOがスタートした。
クウェートに本拠地を置くReach Telecomがマレーシアの通信事業者Maxisの回線を借りて事業展開するMVNOである。同社の特徴は、イスラム教徒向けのサービスを豊富に提供して差別化していることだ。

”We are the first ever shariah compliant mobile operator.” と称して、イスラム教徒向けの音楽やコーラン、祈りのガイダンスなどをSMSや音声を通じて無料から有料のものまでVAS(Value added service)として非常に多く提供している。「shariah」とは、コーランからのモハメッドの教えに由来する法律のことを指す。

 マレーシアは、人口の約60%がイスラム教徒で約1,600万人いる。またマレーシアの携帯電話加入者は約3,400万人で、普及率は120%を超える競争の激しい成熟市場である(2011年3月現在)。その多くがプリペイドユーザである。その成熟市場に新たにMVNOとして進出するには、大きな差別化がない限り、新たなユーザの獲得は難しいだろう。マレーシアは多民族国家でありマレー系、中華系、インド系など様々な民族が混在している。「Salamfone」は宗教という切り口から、イスラム教徒をターゲットにしたMVNOで進出してきた。

 通信事業者にとって価格競争が激化する中、消費者にとってはどの会社でも差がないということは多い。プリペイドが主流を占める市場では消費者は1人で、複数社のSIMを購入して使い分けている。通信事業者の差別化が難しい。携帯電話が成熟してきた市場においては価格とカバレッジ以外での競争が今後は求められてくることになる。

 約1,600万人のイスラム教徒がいるマレーシア市場で「Salamfone」の進出を迎え撃つ既存の通信事業者らが、どのような差別化を行って対抗していくのであろうか。最近ではイスラム教徒向けのスマートフォンアプリケーションも多数ある。「Islamic Compass」などは非常に有名だ。

 マレーシアのような成熟市場で、新たなモバイルVASとして「イスラム教向け宗教コンテンツ・サービス」提供でターゲットを絞った差別化を狙って進出してきた「Salamfone」の今後の動向は引き続き注目していきたい。さらには今後イスラム教徒の多い国への事業展開拡大へ繋がるかも刮目に値する。

(参考サイト)

【参考動画:Salamfoneの会社紹介(2011年)】

【参考動画:Salamfoneのテレビ広告(2011年)】

(参考)「電気通信事業の内外規制差が競争力を制約」

*本情報は2011年8月9日のものである。

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