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長距離系NCCの1996年度中間決算

(1997.1)


 11月末に相次いで発表された96年度中間決算では、NTTが携帯電話事業者等からの接続料金収入やインターネットブームを背景としたISDN収入などが貢献して、2期連続の増収増益となった。対する長距離系3社は、電話収入は堅調な伸び、専用は大幅な減収となったが、附帯事業が大幅増収となり、その結果、DDI30.1%、JT11.7%、TWJ7.9%の増収となった。ただし、利益の面では3社3様で、DDIが好調を維持、TWJも黒字転換目前に、JTのみが減益という内容となった。(図表1:中間決算の概要)

●割引サービスで収入単価は減少
 事業の柱の電話サービスは、契約回線数、トラヒックともに増加している。特に、JTは販促キャンペーンを多数実施し、半期で100万回線を獲得し、累計でも1400万と、ライバルDDIにあと90万と迫っている。また、トラヒックも約30%増となっている。
 回線数、トラヒックの伸びが大きかったものの、電話収入の伸びはDDI0.7%、JT4.4%、TWJ6.4%と、堅調な伸びにとどまった。95年3月の料金値下げと割引サービスの浸透が影響している。
 特に、家庭向けでは特定市外局番・番号への通話料が割引となるものが好調である。また7月には大企業向けの最大25%の全国一括割引が開始されたが、JTは2か月で19万回線の契約となった。割引サービス間のユーザの移行はあるものの、割引サービス契約率は上昇しており、分母となる全回線数には利用のほとんどない他NCC重複契約回線もあることを考慮すると、少なくとも20%程度に達しているのではないかと想定される。(図表2:割引サービスの浸透状況)

●大減収の専用と萌芽期のデータ系サービス
 専用収入は95年10月の大幅値下げが影響して、3社とも開業以来最大の減収率、減収額となった。反面、フレームリレーやインターネットプロバイダー向けのバックボーンサービスなどが本格開始された。

●好調な附帯事業が増収に貢献
 増収に貢献したのは、電気通信事業ではなく、附帯事業である。これは爆発的ブームとなった携帯電話事業関係からの収入によるものである。DDIはセルラーグループの販売台数の伸び、JTはデジタルツーカーの開業準備工事や顧客システムの改良、TWJは高速道路沿いでの基地局、伝送路建設といったように、同じ携帯電話ブームでも様々な局面がそれぞれ作用している。

●アクセスチャージの実質負担は減少
 営業費用の内訳をみると、その大半をしめるのが経費と言われる「営業費」と、NTT地域事業部に支払うアクセスチャージが計上される「通信設備使用料」の2つである。したがって、この2つの費用の増減の程度が営業費用、ひいては利益に影響するという構図となっている。
 営業費用は、DDIは3.2%増、JTは8.9%増である。前述したように、JTは半期で100万回線を新規獲得するなど、積極的な営業施策が費用増に直結した。3社中で最も露出度の高い広告宣伝をみてもその積極性が伝わってくる。
 通信設備使用料は、DDIは0.6%の微増、JTは4.3%増となった。前中間期はアクセスチャージの改定(値下げ)により10%以上の節減となり、利益増の要因ともなった。今年4月からは、従来の3分いくらという料金から、NTTの市内交換機の起動コストに応じた料金改定が行われ、1回いくら+1秒いくらと計算するセットアップチャージ付き秒課金に、課金方式そのものが変更となったため、アクセスチャージ額がどう変動するか注目されていた。JTではトラヒックが約30%も増えたが、通信設備使用料は4.3%増であったことから、課金方式の変更はNCCにとって実施的な値下げ、つまり負担減であったことになる。
(図表3:電気通信事業営業費用の内訳)

●利益
 収入面では3社とも増収となったが、利益では唯一JTが減益となった。JTでは、増収分以上に積極営業に投じた費用の方が多かったことになる。しかしながら、借入金を返済するなどして、営業外収支を改善し、経営体質の改善努力がなされている。
 DDIは前中間期のような大きな伸びではなかったものの、最高利益額の記録を更新中である。TWJも経常損失が3億円弱と、黒字転換目前となった。

●通期はどうなる
 NTTは好調な決算を受け、2月には料金値下げを実施することから、3社の対抗値下げは必須である。通期見込みではこの値下げを見込んでいないため、目標を達成できるかどうか予断を許さないが、携帯電話の好調さの継続と一層の費用削減努力が目標達成を左右することになる。
(図表4:通期の見込み)
(通信事業研究部 戸田 敦子)
e-mail:toda@icr.co.jp

(入稿:1996.12)

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