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OCN(オープン コンピュータ ネットワーク)

(1997.1)

「日本のインターネットを欧米レベルに普及させることは、我々に与えられた使命だ」。NTTマンはこう考えているに違いない。
ここ数年のインターネットの普及率の伸びは著しいものがある。しかし、従量制の料金体系のもとでは欧米レベルの普及率の達成はおぼつかない。ユーザー自身も通信料金を意識しないで自由にアクセスできる新しいコンピュータ通信の枠組みを求めている。

こうしたニーズに応えるため、NTTは、従来の電話サービスとは根本的に異なる新しい概念のコンピュータ通信専用ネットワーク、「OCN(オープン コンピュータ ネットワーク)」サービスを1996年12月に開始した。OCNの登場は、果たして日本のインターネットの爆発的な普及へのブレークスルーとなるのか。OCNにかかる期待は大きい。そこで今回は、話題のOCNについてエンドユーザー向けにわかりやすく解説してみたい。

  1. OCNってなに?
  2. 市場価格の1/5〜1/10実現の理由
  3. メニューの選び方
  4. 進化するOCN

1.OCNってなに?
OCNとは、一言でいうとインターネット・プロトコルを用いたコンピュータ通信専用の廉価なルーティング・サービスである。ユーザーにとっては、料金とアクセスポイントの数を除けば基本的には既存のプロバイダーが行っているインターネット接続サービスとの違いはない。つまり現在サービスを行っているプロバイダーの選択肢に、廉価で全国各地にアクセスポイントを持つプロバイダーが1つ増えたものと理解すればよい。

まず、OCNの回線サービスの基本的な概要をみてみる(表1)。開始当初のサービス品目は大きく分けて2つある。常時接続された状態で利用する128kb/sの低速系と1.5Mb/s、6Mb/sの高速系専用接続サービス(第1種サービス)。及び一般加入電話やISDNから、使いたい時にダイヤルして接続するダイヤルアップ接続サービス(第2種サービス)である。第1種サービスの料金体系は定額制、第2種サービスのそれは一定時間までは定額制で超過分については従量制である。
OCN回線サービスを提供するネットワークは、水平分散型のネットワークとなっており、ルーターと高速伝送路によって構成される。またOCNはゲートウェイを通じてインターネットや他事業者と接続される(図1)

[用語解説]

プロトコル:
通信のための手順。ネットワーク上で各端末の間で通信を行う際の決められたルール。
ルーティング:
情報の宛先を見てそこへの中継経路設定を行うこと。
ルーター:
LANを相互に接続(ルーティング)するための装置。
ゲートウェイ:
異なるプロトコルのシステムまたはネットワーク間の相互接続を可能とするもの。

2.市場価格の1/5〜1/10実現の理由
OCNのサービス料金は、概ね既存プロバイダーの1/5〜1/10といわれている。
なぜこのような驚異的な低料金が実現できるのかをみてみる。
理由は主に3つある。まず「コネクションレス型」の通信方式を採用したことがあげられる。電話の場合、発信の際にネットワーク側であらかじめ信号のやりとりをして発信者と受信者の間の回線を固定的に設定する「コネクション型」の通信方式をとっている。一度つながった回線は実際に声を出さなくても通話を切るまで接続された状態が続く。

一方OCNは、送る情報を端末側で一定単位にまとめ、それぞれに宛先をつけて送るパケット交換方式をとっている。つまり、エンド-エンドで回線を占有する必要がないわけだ。これによりネットワーク側は交換制御する機能を持つ必要がなくなり、回線の共有化が図れる。つまりそれだけネットワークに必要な機能や設備が簡単になり、廉価にサービスが提供できるわけだ。これを電車に例えると、電話サービスは、がらがらの団体旅行列車のようなもの。確実に乗れるが一人当りの運賃は割高となる。OCNに採用されたパケット交換サービスは、それぞれが切符を買って乗る普通列車のようなもの。ラッシュ時にダイヤが乱れたり、混雑で乗れないこともあるが一人当りの運賃は割安となる。

2つ目の理由は、ベストエフォート型のサービスにある。ベストエフォート型というのは、ギャランティ型(高信頼型)に対する言葉で「完全ではありませんができる限りの努力をします」といったもの。裏をかえせばサービス品質に責任を負わないというものである。従来のNTTは高品質のギャランティ型のサービスが売り物であった。複数の迂回ルートによるバックアップ、監視体制、障害対応、回線速度の保証など、NTTが全てを提供する形でサービス品目をつくってきた。そのために品質は高いが料金も高額にならざるを得なかったわけだ。

そして3つ目の理由がスケールメリットである。1台数億円の交換機に代わり、数百万円のルーターを使って網構築が実現でき、さらにそれらの大量発注により調達コストを安く抑えることができることである。

3.メニューの選び方
さて、実際にOCNへの加入を検討する場合のポイントをみてみる。

個人または小規模事業所で使うなら、使いたい時にダイヤルして接続するダイヤルアップ接続がお薦めだろう。これで電話・ISDNからのインターネットアクセスが気軽に可能となる。ただし、ダイヤルアップ接続の場合、料金的にはOCNが他のプロバイダーと比べて特別安いわけではない。OCNの料金が、月額2,300円(15時間まで。15時間を超える部分については約9円/1分)であるのに対し、年間15,000円〜20,000円程度で時間制限なしのサービスを提供しているプロバイダーも珍しくない。

OCNのダイヤルアップ接続の強みは、むしろ全国をカバーするアクセスポイントの数であろう。アクセスポイントの全国展開により、日本中のユーザーが廉価なインターネット接続サービスを利用できることになる。OCNの使命はインターネット市場を底上げすること にある。つまり、NTTは電気通信業界のリーディングカンパニーとしてコンピュータ通信のパイの拡大を狙っているわけだ。

気になるアクセスポイントは、平成8年12月の東京を皮切りに平成10年度までに概ね全国展開が完了する予定である(表2)。それまでは自分の地域がサービスエリア内であるかどうかの注意が必要である。ダイヤルアップ接続の場合、利用者にはダイヤルアップ接続料金の他にアクセスポイントまでの距離に応じた通話料(単位料金区域内平日昼間3分10円)がかかるからだ。

専用線で常時接続して利用するなら、 OCNの料金は格段に安い。なにしろ既存プロバイダーの1/5〜1/10である。付加サービス面でもOCNのデメリットは見当たらない。専用接続サービスにはもともと付加サービスが見当たらないからだ。残る問題は接続品質であろう。NTTはOCNの接続品質の情報については、サービス開始後に提供することを検討している。NTTのOCN担当者からは「OCNの接続品質には過度の期待を持たないで欲しい」という声が聞かれる。接続品質は基本的にはトラフィックと回線速度によって決まるため実際にサービスが開始されてみないと分からないというのが正直なところだろう。

中規模事業所で利用するなら、低速系128kb/sがお薦めだ。国内・海外のプロバイダーとのインターネット接続サービスの料金比較で最もお得なメニューがこの128kb/sである。インターネットはもちろん、電子メールを中心としたコンピュータネットワークの初歩的な利用がこれによって可能となる。

コンピュータ通信は基本的には、常時接続された状態が望ましい。電子メールを例にあげると、ダイヤルアップ接続の場合、ユーザーはサーバーにアクセスしない限り電子メールの到着を知ることはできない。一方、専用線接続だと電子メールが到着するとリアルタイムにユーザーに知らせる。従って、個人でも利用頻度の高いユーザーにとっては、ダイヤルアップ接続より128kb/sの専用線接続の方が魅力的だ。サービス開始の予定は、平成8年12月の藤沢、大垣を皮切りに、平成9年2月〜3月に札幌、仙台、浦和、千葉、浜松、金沢、京都、広島、松山、福岡、大分の11都市、平成9年度以降は県庁所在地級都市から順次拡大していく予定である。

大規模事業所で利用するなら、高速系1.5Mb/s、6Mb/sがより効率的であろう。これにより事業所においてイントラネット、インターネットの本格的利用が可能となる。高速系のサービス開始時期は平成9年度以降が予定されている。

[用語解説]

サーバー:
ネットワーク上でほかのコンピュータへサービスを提供するコンピュータまたはそのプログラム。

4.進化するOCN
OCNは、将来に向けて機能を拡張していく。
現在「暗号通信・鍵管理サービス」、「帯域確保サービス」、「マルチキャスト・ルーティング・サービス」が具体化している(表3)
暗号通信・鍵管理サービスは、OCN上でやり取りされる電子メールを暗号化し、第三者による盗聴を防止するもの。97年9月頃をメドに1つの鍵あたり2,000円程度の付加料金でサービスを始める予定だ。特徴は、暗号化用の公開鍵の情報をOCN網の内部に持たせること。ユーザーは暗号通信・鍵機能をサポートしたメール・ソフトを用意するだけで、メール・ソフトが送信時に自動的にOCNの認証局とやりとりしてくれる。

帯域保証サービスは、特定のユーザー間で一定の帯域を確保するサービス。テレビ会議の際、画像が乱れたり、音声が途切れたりするといった問題はこれで解決できる。料金は帯域によって異なり、確保する帯域と同じ速度品目の専用線よりは安くなる見込み。 マルチキャスト・ルーティング・サービスは、特定のユーザーに向けた一斉同報サービスである。例えばニュース配信やテレビ会議など1ヵ所から複数のユーザーに同じデータを送るようなアプリケーションで利用する。
さらにNTTは次世代に向けての開発も進めている。次世代OCNの名称は「Enhanced OCN」(OCNe)。
リアルタイム性の確保やきめ細かなサービス品質の提供により、イントラネット等の企業通信システムやエレクトロニック・コマース(電子商取引)といった本格的ビジネス展開に応えていく予定だ。
現行のOCNは第一目標である低料金を実現するため、アナログ回線やフレーム・リレーなど、既存の設備・技術を積極的に採用した。これに対し、OCNeではATMと光ファイバーを基盤技術に据えて、品質を重視していく方針である。

[用語解説]

ATM:
非同期転送モード。各情報をデジタル化し、それらの情報をセルと呼ばれる53バイトの単位に分割し、高速に交換処理していくことにより相手に情報を伝達するという方式。

(調査部 今別府 忍)
e-mail:imabeppu@icr.co.jp

(入稿:1997.1)

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