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2001年1月掲載

今後のインターネットの普及
〜米国追随からの脱却〜

 インターネットの世界では、米国が最も進んでおり、その他の国はその後を追っているとされてきた。日本においても、インフラ面での定額料金制の導入、高速化の推進、プロバイダの、単なる接続サービスのみの提供からポータルサイトでのコンテンツとセットでの提供という形態の変化、そしてコンテンツについても、メール、ウェブから始まり、ショッピング、ブロードバンド向けコンテンツへの移行と、米国の進んだ道を歩んできたと言える。
 しかし近年、コンシューマ市場での普及過程において、普及パターン、普及促進要因等に、米国の後追いではなく、日本の独自色が見受けられるようになった。本稿では、先日弊社が発表した「インターネットの普及予測について」のデータを用い、その変化について考察する。

■インターネット普及予測結果

 予測は、インターネット利用人口と、利用世帯数について実施した。
 まず、インターネット利用人口の予測結果は、図−1のとおりである。

図−1「インターネット利用人口の予測」


出所:株式会社情報通信総合研究所

 インターネットの利用人口は、2000年度の約4500万人から、2004年度には約1億人に達すると予測する。人口普及率では、35%から約80%への増加である。

 この結果で注目すべき点は、メディア別利用人口の推移である。
 本予測では、「固定網」と「携帯電話」の2つのメディアでのインターネット利用を対象としており、予測を「固定網のみでのインターネット利用」「携帯電話のみでのインターネット利用」「固定網と携帯電話併用してのインターネット利用」の3通りで示している。

 最近の携帯電話でのインターネット利用者の急速な増加を反映し、2001年度までは携帯電話のみでの利用者が占める割合が最も多い。しかし2002年度以降は固定網と携帯電話を併用してインターネットを利用する層が増え、2004年度には約7000万人に達し、利用人口の70%を占めるに至る。

次に、インターネット利用世帯数の予測結果は、図−2のとおりである。

図−2「インターネット利用世帯数と世帯普及率の予測」


出所:株式会社情報通信総合研究所

 インターネットの利用世帯は、2000年度の約1600万世帯から、2004年度には約4000万世帯に増加すると予測する。世帯普及率にして、35%から83%への増加である。

 この結果で注目すべき点は、ブロードバンド・インターネットの普及の急速な伸びである。2000年度は2%に満たない普及率が、2004年度には7割弱まで伸び、インターネットを利用している世帯では80%を占めることとなる。

■日本独自の普及パターン

 前述の利用人口の予測に見られる様に、今後は、「まず携帯電話でインターネットの利用を開始し、その後、固定網でのインターネットも使うようになる」という新しいパターンが形成されると考える。
この普及パターン発生の要因としては、
  1. 携帯電話自体の普及率が高いこと
  2. 携帯電話でのインターネットの初期費用が安価であること
  3. 携帯電話でのインターネットの操作が簡易であること
  4. 携帯電話でのインターネットの普及が順調であること
といった事実に加え、弊社実施のアンケートにより明らかになった下記の点が更に挙げられる。
  1. 携帯電話でのインターネット利用者は、固定網インターネットの利用意向が高いこと(図−3参照)
  2. 固定網と携帯電話でのインターネット併用利用者は、どちらか片方の利用を停止する人は少ないこと(図−4参照)
図−3「携帯インターネットユーザの他端末でのインターネット利用意向」
6割以上が他端末での利用を考えており、1年以内でも約半数となる

(期間問わない利用意向)

  (1年以内の利用意向)

図−4「併用ユーザの今後の予定」
今後どちらかの利用をやめるか?

 携帯電話自体および携帯電話でのインターネットの普及においては、現時点で既に米国に先んじている。米国でもモバイル・インターネットの普及が本格化すると言われてはいるが、米国のそれはPDAを用いたビジネス利用が主であり、職場での利用を外に持出すことを目的としている。メールを中心としたコミュニケーションツールとしての利用である現在の日本とは大きく違い、インターネット初心者の入門用とはなりえないと思われる。

 この新しい独自のパターンでの普及が進むことにより、固定網での家庭や職場での利用と、携帯電話による移動中や外出先での利用というように、インターネットの利用形態についても新しいパターンが発生することになる。この新しい形態の発生が、利用内容にどういった変化をもたらすのかについては、今後の調査研究課題としたい。

■米国とは違う要因での普及

  利用世帯数の予測にて、ブロードバンド・インターネットの急速な普及について述べたが、その普及要因については、日本と米国では明確な違いがある。 日米それぞれのブロードバンド・インターネットの利用者を対象としたアンケートの結果では、米国でのブロードバンドを利用したい理由で最も多いのは「高速を必要とするコンテンツを利用したいから」であり、一方日本では「快適につかいたいから」という結果となった。(図−5、6参照)

図−5「高速インターネット希望理由(米国)」

 

図−6「高速インターネット希望理由(日本)」

 

 この結果が示す様に、ブロードバンド・インターネットの普及を促進するものは、日本では「快適性」であり、米国では「コンテンツ」である。 これまでは、米国での結果が表す様に、ブロードバンドの普及にはブロードバンド向きのキラーコンテンツの存在が不可欠であるという論調が日本でも支配的であった。しかし日本は米国と違い、コンテンツを求めている層は少なく、表示やダウンロードが速い、時間を気にせず使えるといった、「快適性」を求めて利用者はブロードバンドへと移行し得ると言える。

通信事業研究グループ リサーチャー
須田 英二(suda@icr.co.jp)
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