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2005年10月掲載 |
ハリケーン対応:すばやく動いたFCC
8月29日に米国南部を襲った超強力大型ハリケーンKatrinaでは、Louisiana, Mississippi, および Alabamaの南部3州で甚大な被害を生じ、米国政府の対応の遅れに非難が高まった。通信設備も大被害をうけたが、規制当局のFCCは迅速に多様な対策を打ち出している。もちろんわが国では規制が異なる部分もあるものの、参考となる施策も多々あるので、整理してみたい。
■矢継ぎ早に様々な弾力的な措置まず、8月末からのFCCの主な措置を日付順に列挙してみる。
■顧客および事業者の救済/復旧資金としてFCCの自己管理の資金2億ドルを拠出上記の諸措置は、いわば制度上の様々な制約を緊急措置として弾力的に緩和したものであるが、FCCはさらに自己の所管するユニバーサル・サービス基金から2億ドル(約235億円)もの資金を手当てし、拠出するという実質的な措置まで打ち出した。 また、災害等への対応の強化のため、“Blue Ribbon”パネルを設置し、今回の被害を調査分析し、今後の備えやネットワークの信頼性の増強等の改善策を諮問する。 さらに、新たに内部部局として「公衆安全/本土セキュリティ局」(Public Safety/Homeland Security Bureau)を新設した。そのプレス・レリーズは次のとおり。 FCCプレス・レリーズ (2005/9/15) FCCのMartin 委員長は本日、ハリケーンの被害者と企業に2億ドル余りの緊急助成を行うと発表した。 4つのプログラムを通じて、211百万ドルを、ユニバーサル・サービス基金から、ハリケーンで被害を受けた消費者、学校、図書館、医療機関等に支出することとなろう。
並行して、専門家による“Blue Ribbon”パネルを設置し、今回の被害を調査分析し、今後の備えやネットワークの信頼性の増強等の改善策を諮問する。 さらに新たにPublic Safety/Homeland Security Bureauを新設し、他の機関との連携の強化をはかる。同局は以下の職責をもつ。
■FCCのユニバーサル・サービス制度FCCは、行政機関あり、その5名の委員も大統領が指名し、議会の承認をうることとされているが、いわゆる独立委員会であるので、大統領の指揮から外れ、議会に直属する。 さらに、その運営費用のほとんどを、認可手数料等の規制手数料(Regulatory Fees)で賄っている。先頃議会に提出された2006年度の予算要求書でも、FCCの歳出権限として総額は$304,057,000を要請しているが、そのうち$299,234,000は規制手数料(Regulatory Fees)で賄うこととしており、残余の$4,823,000だけを一般会計の歳出として計画している。[(2005/4/26) Martin委員長の下院歳出委員会での2006年度FCC予算見積に関する証言] こうした事情もあり、一般の省庁よりは運営の自主度が高い。 また、米国ではユニバーサル・サービス制度が確立され、赤字地域での事業運営等には多額の助成がユニバーサル・サービス基金を経由して支給されている。 FCCのユニバーサル・サービス制度は、
に区分されているが、本来的なユニバーサル・サービスである2. と3. に加え、1996年から学校や図書館、医療機関等が低廉なコストで高度通信の恩恵に浴せるよう二つの助成対象を加えた。 基金の必要額は毎四半期算定し、全電気通信事業者に売上高に応じて一定比率で拠出させている。 とくに学校関係は、当時のゴア副大統領の政策で、貧困者の子息と裕福な子弟でのインターネット等の最新テクノロジーへのアクセスの差、すなわち、いわゆるデジタル・デバイドの解消を目指し、全米の学校の全教室にインターネットを設置すべく、設置費用の補助と設置後の通信料金の割引助成が重要視された。 学校関係の助成費用は4項目中でも最大で、1997年以降で総額110億ドルの巨額に上り、そのため全通信事業者に課されるユニバーサル・サービス基金への拠出金も巨額に達し、議会でもその是非が論議されたこともある。とくに件数が多いため、不正受給、重複受給、詐欺等も多発し、また、実務を受託しているthe Universal Service Administrative Company (USAC)の管理の甘さと非能率も指摘されている FCCは、こうした巨額のユニバーサル・サービス制度をコントロールしており、そうした財務力を背景に、今回のような迅速な助成が行えるわけである。 |
寄稿 木村 寛治 編集室宛>nl@icr.co.jp |
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