我が国でも、携帯電話事業者が新規契約に際して、2年ないし3年の期間を設定し、それ以前の解約に対しては違約金を徴収するケースがでてきているが、このほど米国の消費者が提起した訴訟でCalifornia州の裁判所が、米国大手携帯電話事業者Sprint/Nextelの同様な例について、「違約金は州法に違反するので、返還すべし」との決定をおこなった。
こうした違約金(penalty fees)の慣行は、Verizon Wirrelessなど他の携帯電話事業者にもみられるだけに、大きな波紋を呼ぶ可能性があり、注目されている。
■Sprint/Nextelのケース
7月30日付のワシントン・ポスト紙が伝えるところでは、Sprintは7,300万ドルの違約金を請求し、そのうち1,830万ドルをすでに徴収済みであるが、California州のAlameda Countyの裁判所は、こうした違約金は州法に反すると認定し、徴収済みの違約金の顧客への返還と未払いの違約金の請求破棄を命じた。もっとも、この決定に対してはコメントを許すとしており、それを斟酌して最終判決とするとしている。
■米国での違約金の慣行
事業者は通常、2年間の携帯電話契約で、150ドルないし200ドルの期間満了前解約金(early-termination fee)を課すことが多く、しかも顧客がその事業者がサービス提供していない地域に引越すような場合でも課されている。さらに今回の訴訟の例でも、家族全体で複数回線を契約していたような場合には、700ドルもの違約金を課された例がある。
Sprint以外にも、携帯電話第2位のVerizon Wirreless(Verizon Communicationsと英国のVodafoneのJV)も訴訟を提起されていた。7月に同社は2,100万ドルを支払うことで和解したばかりである。(ウオールストリート・ジャーナル2008/7/10 )
今回のCaliforniaでの裁判所決定で他の事業者の顧客からも訴訟の道を選ぶ者が続出するとみられ、携帯電話事業者は困惑しているという。
■違約金は果して「料金」か
今回の審理でSprint側は、「違約金は料金(rates)であり、その管轄権は州の公益事業委員会にあり、裁判所は管轄外だ」と抗弁したが、裁判所は、「違約金は料金ではなく、したがって消費者は裁判所に訴訟を提起できる」と判定した。この点は、今後も一つの争点となろう。
■FCCに連邦としてのルール制定を求める動きも
今回の決定はCalifornia州内の顧客にしか適用されないものの、SprintやT-Mobileなどの他の事業者も訴訟を避ける努力をはじめており、自分たちを州の管轄から外し、FCCに対してこうしたペナルティに関する連邦としてのルールの制定を働き掛けようとしている。
今回の裁判所の決定を受けて、原告側弁護士は、「これは他の州でも同様なケースに大きな勇気を与えるものである」としている。また、「FCCが乗り出して、裁判所はノータッチの決定をすれば、事業者の過去の違法行為に免罪符をあたえるようなものだ」と釘をさしている。
Sprint側は、「こうした違約金は、事業者が低廉な料金で利きサービスを提供するのに貢献している」とし、また、「全国レベルでの違約金規制の枠組の制定こそが、消費者を州ごとに違うツギハギの混乱から守ることとなる」と主張しいている。
携帯電話事業者の団体であるCTIA(Cellular Telephone Industry Association)も、すでにFCCに対し「違約金も料金の一種であり、FCCにこそ管轄権がある」として、FCCがそのように決定するべきだとの申請をファイルしている。