トレンド情報-シリーズ[1998年]

[韓国の通信政策]
[第1回]WTO基本通信協商の妥結内容

(1998.3)


1997年は、100年にわたる韓国の電気通信の歴史上、非常に画期的な年として記録されることとなろう。すなわち、WTO基本通信協商の妥結に従い、全面的な競争導入方針が決定され、100年にわたって独占体制が維持されてきた市内電話部門にまで新規事業者が選定されたためである。

 韓国の通信政策は、1990年代に入ってから建前では競争を指向するように転換されたが、依然として管理された競争体制であり、利用者の立場からは、競争の効果を実感できるほどの結果は生じていない。これは韓国における競争政策が、市場のニーズによる自主的な選択によるものというより、世界市場における規制緩和のトレンドや米国による市場開放の圧力が激しくなってきたためこれに対処せざるを得なくなったという性格が強かったからであると言えよう。

 本稿では、今後の世界通信市場の流れを決定するWTO基本通信協商の妥結が韓国の電気通信市場に及ぼす影響と、本格的な競争時代を迎えた韓国政府の電気通信政策の方向を明らかにする。

 韓国政府は、WTO基本通信協商が開始されて以来、「先ず国内のキャリア間での競争、その後に外国資本との競争」という原則を固守してきた。これは、現在の国内通信市場には競争がまだ定着しておらず1、韓国の事業者はいまだ本格的な競争の経験が不足しているため、国内通信市場が外国資本に開放される以前に、国内競争を活性化させ、国内通信事業者が外国の事業者との競争に対抗できる能力を育成しようという意図であった。

 特にWTO基本通信協商で外国キャリアが関心を寄せている音声再販売、インターネット電話、コールバック・サービス等新しいサービスの場合、国内でまだサービスが開始されていないことから、市場開放以前に、国内事業者間の競争を早急に活性化する必要があった。

 このような韓国政府の意図は、1997年2月に妥結されたWTO基本通信協商で提示した韓国政府の最終的コミットメント(約束)の内容によく表れている。表1に見られるように、韓国政府は、国内通信市場を1998年から2001年までに段階的に外国企業に開放することにより、外国企業が本格的に韓国の国内市場に進出する前に国内事業者間の競争を拡大し(国際、市外、移動通信分野)、新規に競争を導入し(市内、音声再販売、インターネット電話、コールバック・サービス等)、国内事業者が外国企業に対抗しうる競争力を強化しうる時間的余裕を確保しようとしている。

 また、最終的コミットメントに含まれた対象サービスは全部で12種類であり、それは、音声電話サービス(市内/市外/国際電話サービスを含む)、パケット交換データ伝送サービス、回線交換データ伝送サービス、テレックス・サービス、電信サービス、ファクシミリ・サービス、専用回線サービス、ディジタル・セルラー・サービス(アナログ・セルラー・サービスを除く)、無線呼び出しサービス、PCS、TRS、無線データ・サービス等である。

 分野別にコミットメントの詳細を見ると、以下の通りである。すなわち、第1に外国人による株式所有については、有線通信の場合、これまで外国人の所有が禁止されていたが、98年から33%まで、2001年からは49%まで認められることになった。無線通信の場合、2000年までは現行のまま33%までに制限されるが、2001年からは49%まで外国人の所有が認められる(表3参照)。さらに、同一人が所有できる株式保有の最大限度は、現行では有線通信の場合10%、無線通信の場合33%までである。ただし、KTの場合、現行では1%以下に限られている同一人株式保有制限は1998年からは3%に拡大される(表2参照)。第2に、現在は外国人が国内通信事業者の過半的所有を禁じているが、KTを除外して1999年から認められ、1998年からは外国人が国内通信事業者の代表者になることが認められる方向であり、現在、1/3に制限されている役員数の制限も廃止される。第3に、外国人が大きな関心を寄せている音声再販売サービスの場合、現在禁止している公衆網と接続する音声再販売サービスを1999年から49%の株式保有範囲内で外国人の参入が可能となり、2001年からは100%株式保有による参入が認められる(表3参照)。第4に、これまでは新規事業者を選定しようとする場合、その時期や事業者数を政府が事前に公告し決定していたが、1998年からは、周波数割当に基づく制約以外の制限は撤廃される。第5に、電気通信サービスの国境間供給2に対しては、これまで明白な規制がなかったが、WTOのコミットメントに従い、1998年からは国内事業者(基幹通信事業者及び別定通信事業者)との商業的契約によりサービスを提供することが可能になった。ただし、2000年12月31日までは、このサービスを提供する場合、韓国内に会社を設立し、別定通信事業者として登録しなければならない。

(海外調査部 鈴木泰次、邊在琥)
e-mail:suzuki-t@icr.co.jp

(入稿:1998.3)

このページの最初へ

トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トレンド情報-シリーズ[1997-8年]