トレンド情報-シリーズ[1998年]

[韓国の通信政策]
[第4回]結論

(1998.5)

 WTO基本通信協商の妥結は、韓国を含む協商参加国にとって、機会であると同時に脅威ともなる。特に韓国の場合、既存通信事業者が競争体制に慣れていないため、技術力に優れ、競争体制に順応した外国の通信事業者の進出は、大きな脅威要因として受け止められている。特に、音声再販売、インターネット電話サービス、コールバック・サービスなどの認可により、外国通信事業者の市外及び国際電話市場を蚕食することが憂慮されること、及び外国人が大株主になることが認められることにより、DACOM、オンセ通信等、明確な大株主がいない企業が外国企業によるM&Aに対して憂慮している。また、一方では、1994年に付加通信市場が開放された際、外国人による市場蚕食が憂慮されたが、むしろその後の2年間で国内付加通信市場の規模が2倍以上に大きくなり、事業者数も250あまりに増大するなど、国内市場の拡大に寄与した点を見ると楽観的に考えることもできる。

 しかし、このような楽観的展望が実現するためには、1.独占時代の枠組を維持している現行の法・制度の早期整備、2.株式市場の低迷のため遅延している韓国通信の株式を早期売却して完全民営化を図る、3.公正競争確保のための制度化の準備、4.ユニバーサル・サービスの維持方案の準備、5.過当競争と重複投資の防止等、解決しなければならない課題が山積している。WTO基本通信協商の合意の結果がどのような方向に作用するかまだ判断するのが難しいが、これから策定される韓国政府の政策が、21世紀における韓国の情報通信産業の未来の方向性を決定する上で重要な役割を担うだろう。

参考文献

  • 情報通信部(MIC) 「電気通信事業法の改正法律(案) 立法予告」1997.5.10
  • 情報通信部(MIC) 「電気通信に関する年次報告書1996」1996
  • 韓国情報通信振興協会 「WTO基本通信協商の結果の説明会」1997.3.26
  • 韓国情報通信振興協会 「1996年情報通信産業統計年報」1996
  • 電子新聞社 「情報通信年鑑1997」 1997.6
  • 鄭成泳・鈴木泰次著「韓国の情報通信分野の現状」
  • Lee, Myung-ho and Lie, Han-young, WTO Negotiations on Basic Telecommunications and Future Course of Korea's Information and Telecommunications Industry

注) 情報通信部によると、構内通信設備の故障が通信障害の45.4%を占める。
注) 地域の11事業者は97年中にすべてKTへ設備を売却した。

(海外調査部 鈴木泰次、邊在琥)
e-mail:suzuki-t@icr.co.jp

(入稿:1998.5)

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