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ICR View
2009年6月掲載

株主総会シーズンに思う

 今年も6月、株主総会のシーズンが巡って来ました。上場会社の取締役・監査役のみならず、株主総会の会議運営に当たる総務担当の社員にとっても大変気苦労の多い時期です。特に、大企業や主として個人消費者を相手とする製品・サービスを扱う会社では、一般株主が多数出席しますので適切な会議運営はもちろん、株主からの多数の質問に直接答える場であり、役員としても活発、率直であるとともにスムーズな進行が求められる難しい場面でしょう。

 今年の株主総会では業績不振の会社も多く、経営責任、業績回復・経営改善策、ガバナンス、配当と株主還元、雇用、ステーク・ホルダーとの関係、役員報酬などのテーマが取り上げられると思います。ICT分野の企業においても、業績はまちまちなのでさまざまな論議がなされることでしょう。今年のような経済情勢下においては、例年以上に中長期の会社経営のあり方・方向や経営構造問題などの根本的な課題の質疑が落ち着いてなされることを期待したい。ともすると、極めて抽象的な問題や個別事案に終始して株主全体の関心と合致しないことが見られるのは残念なことです。

 ただ、年1回の株主総会での役員との質疑・対話だけでは一般株主に十分な理解を求めるのは困難です。株主に送付する事業報告書や株主通信のようなパンフレットのほか、ホームページでの会社トップの発言紹介や日々の事業活動の説明・解説などいわゆるIR活動の充実強化において、ICTを最大限活用すると同時にアクセスログの分析を通じて株主及び投資家の姿勢動向を把握してIR施策に結び付けることが出来るはずです。更には、例えば高度なICT技術を駆使すれば、動画と音声認識技術を組み合わせて内容をテキスト化してスクリプトとして用意しておきキーワード検索できるようにしておくことも可能です。これにより、株主・投資家は関心のある部分を検索して視聴できる訳です。検索結果の集計により株主・投資家の関心事項を具体的に把握できるし、伝達力の判定もできます。このように情報の伝達力とそのコストにおいてもICTの果す機能には大きなものがあります。

 一般株主はもちろん潜在的な投資家まで含めて企業情報を伝えて長期の保有者になってもらうことは、企業にとっても株価の乱高下の回避、経営の安定化に役立つことになります。ICTの活用が進むと株主総会は特に経営者の肉声による直接対話の場として、また、具体的な決議に参加する場として、さらにその役割を増していくことになるでしょう。まさにリアルとバーチャルの組み合わせにより成果を上げるICT活用の新しい世界と言えるでしょう。

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