ホーム > ICR View 2012 >
ICR View
2012年3月7日掲載

電子メール、終わりの始まりか
−企業内でSNSは使われるか−

マーケティング・ソリューション研究グループ
グループリーダー 田中 和彦
[tweet]

標的型メール攻撃訓練

 ある日の夕方、弊社の総務部長よりメールが届いた。文面が少々面妖で、差し出し人名の綴りも違うので本人に電話した。これは標的型メール攻撃を想定した訓練メールであった。問合せをしたり、静観した者が大多数であったが、残念ながら添付ファイルを開いた者も居た。今回は、比較的、見破りやすかったが、もっと巧妙であったならば、私も添付ファイルを開いていたかも知れない。
 標的型攻撃の怖さを実感した訓練であった。

電子メールを使わない会社も

 電子メールについてはこのような標的型メール攻撃以外にも、受信したメールを読んで個々のメールに応答・返事することにかなりの時間が必要で非効率ではないか、電子メールは送信者からの一方的なコミュニケーションで言わばアリバイ的ではないか、という指摘もある。確かに、タイムリーに用件や意図を誤解のないように文面でコミュニケーションするのは大変で、メールの文面の問題でお互いに誤解を生じた経験は誰でもあるのではないかと思う。
 このような電子メールのデメリットから、ヨーロッパのIT企業、Atos社では電子メールを使わない方針をCEOが検討しており、社外とのやりとりには電子メールを使わざるを得ないが、社内では、メッセンジャー(チャット)ソフトを使うとのことだ。
 電子メールの代わりにチャットで会話するならば、ちょっとしたやりとり、あるいは、気軽な情報交換はし易いので、コミュニケーションは活発化するかもしれない。しかし、後にやりとりを見直したりするためにはそのための使いやすい機能も必要であろう。

電子メールに代わるもの

 考えて みれば電子メールは実に原始的である。相手に届く速度やコピー、保管が容易など多くのメリットがあるが、情報のやりとりという観点から見れば、紙に文字や図形を書いて相手の届けたり、媒体にこれらの書類をデータ、ファイルとして記録して送り届けたりすることとさほど変わらない。言うならば電子メールは、ハイテクではなく、ローテクである。物理的な体裁を伴わないので、成りすましや改ざんなどのセキュリティ上の問題を生じ得るとも言えるのではないだろうか。
 それらを補う手段として電子的な署名や認証などの手段もあるが、一般的ではない。
 また添付されている書類(ファイル)も、文書、スライドなど、電子化されているが、紙に印刷された文書と、情報、意味上は大差が無いし、脆弱性を有する危険すらある。

 根本的には、社内外を含めた業務、ビジネスのプロセスをシステム化、ワークフロー化するのが理想的であり、既に、言うまでもないが、多くの、例えば、商品・サービスの購入申込みなどがシステム化されているが、不定型でシステム化し難いコミュニケーション、あるいは、システム外で行われるコミュニケーションが現実には存在するので、全てのコミュニケーションをシステム化するのは不可能である。
 よって何らかの、補助的な手段は必要であり、その意味で、電子メールに代わるものは、相手との会話を行う手段と、書類(ファイル)などをやりとりする手段を併用する、あるいは、複合化した手段であろう。例えば、メッセンジャー(チャット)ソフトとファイル転送サービスの併用等であろう。
 あるいはFacebookなどのSNSであろう。

企業内で使われるかSNS

 Facebookは私も利用しており、その便利さ、コミュニケーション手段としての有用性を感じているが、恥ずかしいながら、自分の書き込んだ情報が、誰に伝わるのか、分からないという実感を持っている。知人・友人の近況をリアルタイムに知るには非常に便利であるが、自分自身としてはあまり情報を発信していない。
 自社内で使うとすれば、設定可能なグループの細分化や可視化などの機能によって便利に使えるかも知れないと思うが、会社間で使う場合には、現状とかなり離れているので、機能だけの問題ではなく、使い方やマナーがポイントになるだろう。

 話はさかのぼるが、電話が発明された頃、電話はビジネスには使えないという見方があったそうだ。今では全く想像出来ないが、当時は、要件を手紙に認めて、その手紙をメッセンジャーに託して相手に届けるというやりとりがビジネス上の常識であり、突然、相手に電話をかけて話しかけるなどという無礼は想像もつかなかったためだと言われている。

 電子メールも当初は今日のようにビジネスに使われるとは思われていなかったのではないか。私自身、30年前にダイアルアップでホストコンピュータに接続しmailコマンドで電子メールを使っていたが当時は技術的な実験という感覚であった。

 今、その電子メールが、もしかすると、後の時代から振り返った時に、終わりの始まりなのかもしれない。

 ところで、実名が売り物のFacebookであるが、先日、「儲け話」のメッセージが届いた。ハーバード大学出身、英国政府勤務の紳士からである。外国の大統領と閲兵の写真もある。この「儲け話」に乗ったものかどうか、思案中である。

 セキュリティの問題、悪い人間の知恵の働き具合はどのような手段になっても変わらないのかも知れない。

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。