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米国における市内通信競争と (1998.3) |
1.遅々として進まない市内通信競争 米国では1996年電気通信法(以下、新通信法)の成立にともない、市内通信市場における競争が飛躍的に発展するものと期待された。しかし、新通信法が成立してちょうど2年が経過した現時点において、競争的市内交換事業者(CLEC)が市内通信市場全体で獲得したプレゼンスは、FCCの発表した「Two years after the act fact sheet」によれば、下記のようにまだまだ微々たるものである。 CLECの活動状況(FCC資料による)
既存の市内交換事業者(ILEC)の強固な独占を打破する役割は、AT&T、MCIなどの大手長距離通信事業者(IXC)に期待されている。しかしながら、1998年1月29日の日本経済新聞において、「米長距離通信事業者、地域電話から相次ぎ撤退」と報じられたように、大手IXCの市内参入戦略は順調とは言い難い状況にある。しかし、後述するように、この両社は再販売方式による住宅顧客向けの市内通信サービスの提供を中断しただけであり、決して市内通信市場への参入を全面的に撤廃したわけではない。本レポートにおいては、IXCの今までの市内市場への参入状況はどのようなものであり、何故、再販売による市内サービスの提供中止という判断をせざるを得なかったのかについて解説してみたい。 |
2.長距離通信事業者の市内通信市場への参入の現状 (1)AT&T AT&Tは市内通信市場への参入に現在までに約30億ドルを投じてきた。1997年7月の時点において、同社は44州とDCにおいてCLECとしての認可を既に取得している(現時点ではほぼ全州で取得済みと思われる)。しかし、ライバルのMCIの市内戦略とは大きく異なり、AT&Tの市内通信市場への参入は、ILECから購入した市内通信サービスを再販売するという「リセール」方式を中心とするものであった。また、対象としてきた顧客層も住宅ユーザーが中心であった。AT&Tは現在では全米6州において、約50万の市内顧客を擁している。また、同社の市内通信市場事業の収入規模は、1997年第1四半期で4.59億ドル、第2四半期で5.24億ドル、第3四半期で5.6億ドルとなっている。 (2)MCI
全米の36市場に27台のCLASS5交換機(市内交換機)を設置し、69の市内通信網を所有している。(1997年7月現在)しかし、MCIの市内事業も収支的には苦しい状況にある。同社は昨年後半に1997年度で8億ドルにのぼる市内事業による損失見込みを発表した。これが、BTによるMCI買収条件の見直し(210億ドルから170億ドルへの引下げ)につながり、両社の合併が御和算となる引き金になったことは、記憶に新しい。 (3)スプリント |
3.AT&TとMCIによる、市内リセール事業見直し 上述したように、AT&TとMCIは取り組みの熱意に違いはあるものの、いずれも住宅顧客を対象に、ILECから購入した市内電話サービスをリセールにより提供してきた。しかし、両社は最近になり、相次いでリセール事業からの撤退を表明している。
(1)AT&T
(2)MCI プライス社長のスピーチ内容
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4.大手IXCが相次いで市内リセール事業を中断した理由 最後に、上記のスピーチにおいても部分的に明らかにされているが、AT&TとMCIという資金力も巨大で、CLECの切り札として期待される会社が、なぜ住宅顧客向けの市内リセール事業だけとはいえ、市内通信市場への参入戦略を変更するに至ったのか、その理由を考察してみると、次の4点に集約される。
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(海外調査部 神野 新) e-mail:kamino@icr.co.jp (入稿:1998.2) |
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