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躍進する米国の新興通信事業者

(1998.9)


  1. 米国の長距離通信市場における過去5年間の顕著な特徴
  2. キャリアズ・キャリア台頭の背景
  3. 代表的な事業者のプロフィール

1.米国の長距離通信市場における過去5年間の顕著な特徴
 米国の長距離通信市場は、市場全体としては、1993年を除いて8〜11%で継続的に成長している。それにもかかわらず、AT&Tは、一貫して毎年3〜4%ずつシェアを低下させており、長期的な低落傾向に歯止めがかからない状態である。また、AT&Tを追う2社もあまり元気がいいとはいえない。MCIは、過去5年間で若干シェアを伸ばしたものの20%に到達してやや頭打ち状態といえる。スプリントも約10%で横ばい状態にある。対照的に、ワールドコムがそのシェアを伸ばしている。ワールドコム以上に元気がいいのは「その他の事業者」でその大半は割安な料金を武器とするリセラーである。さらに、こうした元気のいいリセラー向けに回線容量を提供するキャリアズ・キャリアの台頭もめざましい。代表的なキャリアズ・キャリアには、IXC Communications やQwest Communications、Level 3 Communications、Williams Networks等がある。

  • 図表:長距離通信事業者の収入シェア
  • 2.キャリアズ・キャリア台頭の背景
     キャリアズ・キャリアの台頭の背景には、インターネット利用の増加等によるバックボーン回線の容量不足があげられる。Data Communication誌(1998年7月号)によれば、米国のあるインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の幹部は「T1回線を手にいれるのは非常に困難(tough)になっており、T3やOC48回線の獲得は今や不可能(impossible)である」と語っている。回線容量不足にあっても新興通信事業者が値下げを図る中、伝統的なキャリアも回線のグレードアップを迫られている。
     上記4社の共通点は、広大なネットワーク構築に必要となる道路利用権(the right of way)をすでに獲得していることである。光ファイバー網の構築コストは既存の通信事業者と比較して4分の1ですむ。IXC Communicationsのジョン・フレミング社長は、「一般的なキャリアによる光ファイバー1マイルあたりの構築コストは8〜10万ドルであるが、、当社のコストは1マイルあたり2万ドルである」と語っている。さらに新興キャリアは、既存ネットワークやシステムとの統合という課題をもたないため、その統合や新技術導入にかかるコストが少ないこともその台頭の理由といえる。
     以下は代表的なキャリアズ・キャリア4社のプロフィールである。
    3.代表的な事業者のプロフィール

    ◆Qwest Communications
    沿革:1988年に、ユニオン・パシフィック鉄道の子会社として設立され、光ファイバーの敷設権を利用して長距離通信事業者に対する専用線・交換サービスの卸売事業やネットワーク建設事業を行ってきた。元AT&T幹部のジョセフ・ナッチオCEOのもと、全米規模のネットワーク展開を展開中である。
    本社:オクラホマ州
    売上高(97年):75億5,000万ドル
    従業員:1,600名
    光ファイバー網建設計画:6,000マイル(1999年初頭)
    最近の動き:

    • 全米均一料金7.5セント/分のインターネット電話サービスを9都市で提供中。1999年には125都市で提供の予定。(1998年2月)
    • 準大手の長距離通信事業者LCI を44億ドルの株式交換で買収を発表。小売事業への進出を図る。(98年3月)
    • USウェスト、アメリテックとの販売委託提携を発表(98年5月)。市内通信とのバンドル・サービスやワンビリングを提供。ただし、現在FCCでその合法性を審査中。


    ◆IXC Communications
    沿革:1971年にCATV事業者として設立され、1994年に通信ネットワークの増設に本格化に着手した。WDM(波長多重分割方式)やDWDM(高密度波長多重分割方式)による光ファイバーの効率的な利用によりOC-192(9.95Gbps)レベルの回線サービスを提供している。収入全体の85%を卸売が占めているが、昨年後半から今年にかけて2社のリセラーを買収し、1社のリセラーへの出資を行うことで小売事業へ進出を図る。
    本社:テキサス州
    売上高(97年):13億8,000万ドル
    従業員数:712名
    光ファイバー網建設計画:20,000マイル(1999年初頭)
    最近の動き:インターネット・バックボーン・プロバイダーのPSINetに対する20%出資と引換えにOC-48回線の利用権を提供(98年2月)


    ◆Level3 Communications
    沿革:1985年、建設会社Peter Kiewit Son's (PKS)の100%子会社としてKiewit Diversified Group (KDG)を設立。KDGからLevel3 Communicationsと社名を変更後、1998年3月、独立企業として分離。エンド・ツー・エンドのIPベースの光ファイバー網構築を計画しており、他のキャリアや中小規模の企業に対して通信サービスを提供する。
    本社:ネブラスカ州
    売上高(97年):75億ドル
    従業員数:1,700名
    光ファイバー網建設計画:20,000マイル(1999年後半)
    最近の動き:競争的市内通信事業者(CLEC)のXCOMを1.68億ドルの株式交換で買収することを発表(98年4月)。XCOMの開発したPSTN網とIP網を相互接続する「ブリッジ」技術を利用して交換機のボトルネックを回避し、IP網の効率的なネットワークを構築。


    ◆Williams Networks
    沿革:もともと天然ガスの供給事業者であるが、1995年に通信子会社のWilTelをワールドコムに売却し、所有していた11,000マイルの光ファイバー網の大部分を3年間独占使用できる権利を25億ドルで与えていた。1998年に入りワールドコムとの非競争協定が終了したため、Williamsとして通信市場に再参入。
    本社:オクラホマ州
    売上高(97年):44億960万ドル(内、通信部門14億4,500万ドル)
    従業員数:14,400名(うち、通信部門7,989名)
    光ファイバー網構築計画:7,000マイル(1998年後半)

    (海外調査部 原 美穂子)
    e-mail:hara@icr.co.jp

    (入稿:1998.8)

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