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東西統一後、ドイツは欧州の経済大国としてその地位を高めてきたばかりではなく、コンピューターや通信、インターネットなどの情報ネットワークビジネスの分野においても欧州内でその中心国となりつつある。ドイツのインターネット市場の実態をお伝えしている当レポートの第2回目は、長年の殻をやぶって、ついに大きく成長しつつあるエレクトロニック・コマースの動向にフォーカスしてご報告する。
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ECがついにブーム |
競争が激化するインターネット上の書籍販売 |
商品 | 推定購入者数 | 対前年伸び率 |
書籍 | 40万人 | 66% |
ソフトウェア | 30万人 | ▲ 1% |
CD | 20万人 | 78% |
衣料 | 20万人 | 25% |
家庭用品 | 10万人 | ▲ 44% |
スポーツ用品 | 10万人 | 5% |
ドイツにおけるインターネット上の書籍販売の大手は、アメリカで大きな成功を収めているアマゾン・ドット・コム社のドイツ版であるアマゾン・ドット・デーエー(Amazon.de)と、世界第3位のメディアコンツェルン、ベルテルスマン社が提供するベルテルスマン・オンライン(BOL)、さらに、400万冊の提供を誇るブッフ・ドット・デーエー(Buch.de)らである。
アマゾン社は、ドイツのインターネット・ブックストアのパイオニアであったフィルマABCビュッヒャー・ディーンストを1998年4月に買収し、アマゾン・ドット・デーエー(Amazon.de)を開始した。一方、ドイツのメディアコンツェルンであるベルテルスマン社は、アメリカでアマゾンと競合していた書籍販売の大手バーンズ&ノブル社を買収し、1999年2月、インターネット上の書店であるBOLを開始している。いずれも、低価格でドイツ語あるいは英語の書籍を販売しているが、このように、アメリカで成功を収めているインターネット上の書籍販売競争の戦場は、アメリカ国内だけでなく、ドイツにも飛び火して、激しい競争が繰り広げられている。
インターネット上にショップを開店して成功を収めているのは、このような既存の大手企業や外資系企業だけではない。興味深い例としては、ドイツ語による最大のディレクトリーサービスを提供するウェッブ・ドット・デーエー(Web.de)や格安航空チケットを販売するフルーグチケッツ(www.flug.de)、ライゼン(www.lastminute.de)などを運営する、カールスルーエに本社を置くシネティック・メディーエンテフニーク社がある。同社は、現在34歳と32歳の兄弟が12年前に設立したドイツのベンチャー企業である。当時はソフトウェア開発の会社としてスタートしたが、インターネットの普及が始まりつつあった 1995年に、ディレクトリーサービスである Web.deを開始し、その後、チケット販売などのビジネス拡大に大きく成功した例である。
人気のホームバンキング、列車予約 |
サービス | 推定利用者数 | 対前年伸び率 |
ホームバンキング | 190万人 | 38% |
列車・航空機の予約 | 30万人 | 383% |
ホテルの予約 | 10万人 | 251% |
旅行の申し込み | 10万人 | 78% |
その他の銀行サービス | 10万人 | ▲44% |
保険 | 10万人以下 | ▲72% |
これは、現在ドイツテレコムが提供しているT-オンラインの前身であるビデオテックスサービスの時代から、ホームバンキングサービスがキラーアプリケーションとして、ユーザに広く受け入れられていたためである。現在、ドイツのいくつかの銀行は、インターネットによって提供するホームバンキングサービスの利用料を無料にしているところもある。しかし、通常、他の銀行は、ホームバンキングサービスの利用料を有料にしており、基本料金としておよそ15 マルク以下の月額利用料か、1回の利用毎に25ペニッヒの利用料を請求するケースもある。 また、ドイツ連邦鉄道の列車の予約にインターネットが使われている点も、他国から一歩進んだドイツのインターネット利用のユニークな点である。さらに、ホテル予約などを含め、旅行関連サービスにおけるインターネット利用が急成長していることなども、日本がドイツのインターネットビジネスから学ぶべき、注目すべき点だと言えるだろう。
ドイツは欧州の中でもエレクトロニック・コマースの成長が大きく期待されている国であるが、この理由には、他のインターネット利用先進国でも成功している本やCDの販売以外にも、ホームバンキング、さらには鉄道やホテルの予約などといった独自のアプリケーションに成功していることもあげられるからだ。
高いユーザの満足度 |
企業のインターネット利用とEC |
従業員数 | インターネット利用比率 |
1000人以上の企業 | 44% |
200〜999人の企業 | 10% |
50〜199人の企業 | 11% |
10〜49人の企業 | 14% |
10人以下の企業 | 13% |
だが、ビジネス分野においても、インターネットを利用した企業間のエレクトロニック・コマースが、大きく発展することが期待されている。具体的な事例としてはダイムラーベンツ社が企業間のエレクトロニック・コマースを導入したり、ユニークな例としては、ルフトハンザドイツ航空社が、出発直前に残った航空券をインターネット上で格安で販売したり、ノルトラインヴェストファーレン州警察が、古くなった車両をインターネット上で競売にかけるといった使われ方もなされている。
フォーカス誌によると、3年後には、企業間における商取引の半分以上が、電子的な取引に移行するだろうという予測もなされている。企業間のエレクトロニック・コマースを利用した場合、流通や物流に関わる時間が25%も短縮され、将来はドイツにおける企業間取引の60%がエクストラネット上で実施されるだろうと、同誌は伝えている。今年、EUは通貨統合を実現したこともあり、EU内で国境を越えた企業間のエレクトロニック・コマース実現にかける期待は、このようにますます大きなものになりつつある。(続く)
(入稿:1999.5)
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