米国では、 7月 1日からアクセス・チャージ(長距離通信の相互接続料金)が値下げされたこともあって、長距離電話各社は相次いで一般利用者向け新料金プランを発表している。
(注)FCC の説明によると、今後1 年間の料金上限規制による値下げ効果は 11.20億ドル、うち 2.95 億ドルは地域電話会社の学校および図書館のインターネット接続のための料金割引に振り向けられ、残る 8.25 億ドルがアクセス・チャージの値下げとなる. 一方、アクセス・チャ−ジ改革によって、従来通話時間比例で顧客の料金に上乗せしていたものを、契約回線当たりの固定料金に振り替える分が7.30億ドルで、これを含めると、per-minute access rate cuts の総額は15.55 億ドルになる。
しかし、以下にみる一連の料金の動きは「料金戦争」の始まりとみられている。これらの動きは、通信のタイプによる区別を消滅させる技術と規制の変化によって起きている。今日のデジタル網では、通信がどこに送られるか、運ばれている通信が何か(音声、デ−タもしくはビデオ)は、(料金を考えるうえで)それほど重要ではない。規制の面では、いづれ誰もが他の誰もの市場に参入できるようになる。そこで始まろうとしているのが通信のパッケ−ジ化(telecom bundles )の競争である。「ここに500 分入りのバケツがある。これを携帯電話にでも、また他のどんな通信に使ってもよい。」(BUSINESS WEEk/99.9.13) ということだ。
- (1)MCI WorldCom の国内長距離電話
"MCI 5 Cents Everyday" プラン(99年 8月 9日)
- プラン1:
- 1.95ドル/月の定額料で週日夜間(7p.m.〜7a.m.)および週末 5セント/分
その他の時間帯(週日昼間)25セント/分
- プラン2:
- 4.95ドル/月の定額料で週日夜間(7p.m.〜7a.m,)および週末 5セント/分
その他の時間帯(週日昼間)10セント/分
(注)MCI によれば、米国の "consumer" の通話の70% はweeknightsとweekendsで利用
- (2)Qwest Communications International (長距離4位)の料金プラン(99 年 8月10日)
- 24.95ドル/月の定額料で、時間制限なしのダイヤルアップ・インターネット接続と250分の国内長距離サービス(超過した場合は10セント/分)を提供
- (3)Sprint の国内長距離電話 "Nickel Nights Plan" (99年7 月19日)
- 5.95 ドル/月の定額料で毎日夜間(7p.m.〜0a.m.) 5セント/分 その他の時間帯
- 10 セント/分
- (4)AT&T の 新料金プラン "One Rate 7 Cents" と"Family Plan" (99年8 月30日)
- プラン 1. AT&T One Rate 7 Cents
4.95ドル/月の定額料金で時間・曜日に関係なく、すべての州際長距離通話が7 セント/分(ただし、AT&Tのlocal toll call を利用しない顧客の定額料は5.95ドル/月)
AT&T One Rate 7centsを利用する場合は
・AT&Tのホームページ上のAT&T Online Billingに登録が必要。
・料金の支払いは口座引き落しかクレジットカード決済による。
・料金の利用明細はAT&T Online Customer Service siteで確認 (保存期間は3ヶ月)
AT&T One Rate 7 Cents" の利用者は"AT&T One Rate Online International"プランを利用出来る. 月1 ドルの定額料金で、時間、曜日に関係なく一律料金の国際電話.
(例)日本 26 セント/分 英国 10 セント/分
- プラン 2. AT&T Family Plan
家族以外との携帯電話による通話オプション (1)60分/月〜24.99 ドル、(2)400 分/月〜49.99 ドル (3)600 分/月〜69.99 ドル のいずれかを選択すれば、携帯電話によるFamily Member ( 5人まで)相互の通話および家庭の(固定)電話への通話は、Family Calling Area 内であれば無制限に利用可能.
ただし、Family Member のうち、少なくとも一人は(2)か(3)のプランの選択が必要
また、Family Member は"Degital multi-network phone" を持つ必要がある.
AT&T Family Planを契約すれば、AT&T One Rate 7 Cents の定額料金は不要
(注)AT&Tは、99年1 月から一般利用者向け新料金プラン"AT&T Personal Network" を開始している。月額定額料金29.99 ドルで、ホ−ムエリアからの携帯電話による全米への通話、固定電話による全米および特定の外国(英国、カナダ、メキシコの国境地域)への通話を一律10セント/分で利用できる。
- (5)SBCがフル「バンドル」サ−ビスを計画(99年 8月24日)
- SBC のFremont(Calif.) とダラスの住宅用加入者は、以下の "full-service bundle"を137 ドル/月で利用できる。(同地域でAT&Tがケ−ブルテレビ回線を経由する地域・長距離電話サ−ビスを開始し、インタ−ネット、娯楽、電話の割引パッケ−ジを計画)
・電話2回線 ・DirecTV 衛星テレビジョン ・割引 local toll calling サ−ビス
・割引携帯電話サ−ビス ・割引ダイヤルアップ・インタ−ネト・サ−ビス
・上記サ−ビスの屋内配線などの保守
・一本目の電話についての13の付加サービス( ボイスメ−ル、コ−ラ−IDなどを含む)。ただし、携帯電話端末、DirecTV の初期設置費用は含まれていない。
(参考)米国における企業向け料金は大部分が「個別企業向け包括契約料金制」、例えばAT&T のコントラクト・タリフ(約 11,000 件)など.ただし、タリフの公開(個別企業名は明らかにしなくてよい)が必要、また同様な条件の企業からタリフの適用の申し出があった場合は拒否できない.
ところで、この値下げとバンドル化の競争はどこまで進むのか。先に紹介したBUSINESS
WEEK(99.9.13)によると「通信の新しい経済学では、電話料金はまさにプロモ−ション・ツ−ルになる。」と指摘し、「電話会社はいづれ、バンドルしている電話以外のサ−ビスの顧客を囲い込むため、長距離電話を無料で提供することになるだろう。」と予言している。これは言い過ぎかも知れないが、同誌によると、AT&Tの全収入に占める長距離サ−ビス(ビジネスおよびコンシュ−マ−)のシェアは、現在約60%だが、競争と値下げによって2004年には30% まで下がるとみており、もはや長距離サ−ビスは "cash cow" ではなくなろうとしている。同社はそのことを前提に、ビジネス・プランを練っている、という。電話会社の脱電話戦略に拍車がかかりそうだ。
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