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通信事業者名 | 株価総額(1999.10.5) |
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AT&T | 1,438億ドル |
MCIワールドコム | 1,283億ドル |
スプリント | 460億ドル(電話部門) 318億ドル(PCS部門) |
ベル・アトランティック | 1,018億ドル |
GTE | 737億ドル |
SBC | 1,002億ドル |
アメリテック | 733億ドル |
ベルサウス | 788億ドル |
USウェスト | 296億ドル |
クエスト | 233億ドル |
その際にベルサウスの相手として最も有力なのは、USウェストとの合併を発表しているクエストであろう。クエストであれば、ベルサウスにとって長距離通信市場への進出の資産を手っ取り早く得ることが出来るメリットがある。事実、ベルサウスは既にクエストに10%の出資を行っている。クエストにとっても、529億ドルという株価総額(含むUSウェスト)を1,000億ドル以上に一気に拡大する相手として、ベルサウスは魅力的である。
他にベルサウスが組む相手としては、同じ地域会社のベル・アトランティックとSBCが考えられるが、それぞれGTEとアメリテックの買収が規制面の審査で難航した経緯があり、さらに両社(新SBC、新ベル・アトランティック)がベルサウスと合併して肥大化することには、規制面での非常に大きな障害が予想されるため(却下される可能性が高い)、現実的とは言えないであろう。
ベルサウス以外に米国における通信再編成の仕掛人として登場する可能性のあるのは、スプリントにも興味を示したドイツ・テレコム(DT)であろう。10月5日付けの Total Telecom 誌によれば、DTのスポークスマンはスプリントの買収に関して、「価格が高くなり過ぎたので、(スプリントの買収)競争には乗らない」と述べたとあるが、DTは7月にM&A資金と見られる110億ユーロの増資を行っており、さらに、スプリントへの出資(10%)を売却して得る利益により、米国でスプリント以外の新たなパートナーを探す可能性がある。相手としては、クエスト、ベルサウスに加えて、ケーブル&ワイヤレスも考えられる。
ケーブル&ワイヤレスは英国の通信事業者であるが、MCIとワールドコムの合併の際に、MCIの米国におけるインターネット・バックボーン資産を17.5億ドルで取得しており、今や米国における有数のインターネット・バックボーン事業者である。通信競争の焦点が広帯域サービスにシフトしつつある現在、ケーブル&ワイヤレスは米国への足がかりとしてDTにとって見逃せない存在であろう。また、MCIWがスプリントとの合併を認められる条件として、スプリントのインターネット・バックボーン資産の売却が義務づけられることが確実であると見られているが、DTがそれを買い取る可能性も少なからずあるだろう。
また、注目すべきは、移動体通信(セルラー、PCS)を軸としたM&Aの可能性である。今回のMCIWによるスプリント買収は、移動体事業を持たないMCIWが、スプリントのFON部門ではなく、PCS部門に魅力を感じたという見方が主流である。世界最大の移動体通信事業者であるヴォーダホン・エアタッチは、9月21日にベル・アトランティックと米国の移動体事業を統合する新会社(株価総額は700億ドルと推計される)を設立することで合意している。ベル・アトランティックの会長はベル・アトランティック全体がヴォーダホン・エアタッチと完全に合併することは無いと述べているが、固定と無線の融合が進む中で、将来的にも両社の完全合併があり得ないとは言い切れない。
同じ観点から、移動体事業で微々たるプレゼンスしか持っていないクエスト−USウェスト連合(セルラー事業をエアタッチに売却した後、PCS事業を開始しているが、まだ数十万の加入数しかない)が、例えばMCIWが買収しようとして失敗したネクステルのようなSMRS事業者も含めて、何らかの移動体事業者(もしくは、その親会社の固定網事業者)との合併を模索する可能性がある。この点で見ると、米国第6位の移動体会社を傘下に持つベルサウスとの合併はいっそう現実性を帯びてくる。
最後に、今回のMCIWとスプリントの合併合意で注目されるのが、スプリントに対するフランス・テレコム(FT)、ドイツ・テレコムの出資(各10%)の扱いと、3者で共同運営しているグローバルワンの行方である。スプリントに対する出資については、FT、DTともに売却する意向であることを表明しているが、グローバルワンの将来は不透明である。テレコム・イタリアの買収を巡って関係が悪化したFTとDTのどちらかがグローバルワンから撤退する可能性は指摘されていたが、今回のスプリントの買収により、先行きはますます不透明となった。仮にグローバルワンがまったくの第三者に売りに出された場合、魅力的な資産となることは間違い無いであろう。
いずれにせよ、米国の通信業界はもう一段の大規模な再編成の可能性を秘めており、その動向から目を離すことが出来ない。
(入稿:1999.10)
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