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IT革命が時代の注目を集めている。日本がIT革命で後れを取ったことが多くのリーダー層によって語られ、ITこそが日本経済再生の鍵と説かれる。 |
何を予測したのか インターネットに関する予測といっても多くのものが考えられる。よく言われるマルチメディア産業の構造に沿っていえば、プラットフォームであるパソコンなどの端末、端末同士を結ぶ通信回線、通信ネットワークの上で展開されるアプリケーション、通信ネットワーク上を流れるコンテンツなど多くの切り口があり、それぞれについて予測を行うことが可能である。 この予測においてはその中のインターネットアクセス回線に着目した。アクセス回線は家庭でもビジネスでも使われるが、ビジネスにおけるインターネットの意義はその普及率にあるのではなくその使い方にあると考えるので、普及そのものに一定の意味がある家庭におけるインターネットアクセス回線(電話回線などの固定網を利用するもの)の普及率を予測することにした。 もう一つの観点は携帯電話によるインターネット利用の急成長である。世界に先駆けて携帯電話からのインターネット利用が進んでいる日本の特性を把握するために携帯利用を含むインターネット利用人口を予測することにした。 |
日本のインターネット普及のステージ 1998年度のインターネット世帯普及率は11%という郵政省の調査結果があるが、99年度については13〜15%という調査結果がいくつかの調査機関から発表されている。 ロジャースの普及論を引用するまでもなく新技術、新サービスの普及は普及率10%を超えるあたりから加速されることは経験的に知られている。わが国におけるインターネットの普及がちょうどその段階にさしかかっているばかりでなく、普及を後押しする環境がちょうど今の時期に整い始めていることもあって、今後のインターネット普及は急速に進展するものと考えられる。 |
普及を促進する要因 普及を加速する要因としては、
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予測の結果 前記の要因などを考慮して行った世帯普及率の予測結果は図−1のとおりである。 図−1 固定網によるインターネット利用の世帯普及率 1998年度に11%であった世帯普及率は、2003年度には約60%に上昇する。カラーテレビはこの上昇プロセスをわずか3年間でクリアーしてしまったが、インターネットは5年間を要するという予測になった。
次にインターネット利用人口の予測については、電話網などの固定網利用と携帯電話などの移動体網利用の両者について予測を行った。その結果は図−2のとおりである。
1998年度に約1,700万人だった利用人口は2003年度に約1億1千万人まで増加する。 |
日本とアメリカの比較 インターネットの普及率について日米比較を試みた。 その結果が、 図−3 米国との比較(固定網世帯普及率)、 図−4 米国との比較(固定&携帯人口普及率) である。 現在時点では圧倒的な差をつけられているが、今後の日本の普及率の急上昇により世帯普及率では2003年度にほぼ肩を並べ、人口普及率では2001年度に日本がアメリカを追い越すという結果になった。 アメリカの普及率が伸び悩むのはいわゆるディジタル・ディバイドの問題が大きく今後低所得層などへの普及が遅れるという予測や、携帯電話のディジタル化が遅れている上、通信方式の混在、全国サービス事業者の不在など移動網を使うインターネットサービスの普及のネックになる原因が多いため携帯インターネットの普及が遅れるという予測を反映したものである。いずれにせよこれらの予測は現時点のものでありアメリカの今後の政策次第で変わって来ることも予想される。 |
おわりに 今回の予測は初めての試みということもあって今後改善したい点を多く残している。諸外国のインターネット普及のプロセスの分析も必要だし、日本についてもディジタル・ディバイドの問題やアクセスだけでなくコンテンツやアプリケーション、端末の問題も関連付けて予測作業を行う必要がある。環境は刻々と変化していくのでそれらを追いかけながらさらに精度の高い予測を目指して調査・研究を進めたいと考えている。
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常務取締役・情報流通研究グループ グループリーダー 小沢 隆弘 e-mail:ozawa-t@icr.co.jp (入稿:2000.4) |
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