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■はじめに 米国では、1996年通信法で、通信と放送の融合化を促進するため、市内電話会社は、市内電話サービスの提供でケーブルTVオペレータと相互接続していることを示すことができるのであれば、ケーブルTVサービスを自身の市内サービスエリアで提供してもよいことになり、既存ケーブルTVオペレータと同じフランチャイズエリアで2番目のライセンスを得たCable Overbuilderが出現した。一方、既存ケーブルTVオペレータは市内電話サービスを自身のフランチャイズエリア内で自身の施設を利用あるいは再販により提供してもよいことになり、衛星のDBSとともに3つどもえの競争がで展開されてきている。 これら多チャンネルTV番組配信業者(Multichannel Video Programming Distributors:MVPDs)間の競争では、単に、インフラの構築だけでなく、TV番組の購入が必要となり、その資金と料金割引による競争に対応できない多くのOverbuilderは、競争から脱落してきているとの指摘もある。すなわち、大手ケーブルTVオペレータがクラスタリングによるシステム集約化をすすめていくだけでなく、大手TV番組制作業者への資本的な垂直統合化、さらに、排他的な契約を独立系番組制作業者と結ぶことなどで、多くのOverbuilderの市場参入に対抗している。しかし、このケーブルTVオペレータとTV番組制作業者の垂直統合は不自然でなく、通信業界と同じように、DBSや地域電話会社からのチャレンジに呼応したものであるとの指摘もある。 本レポートは、2000年1月14日に公表された、ケーブルTVオペレータなどの多チャンネルTV番組配信業者(Multichannel Video Programming Distributors:MVPDs)の競争の実態をまとめている米国連邦通信委員会(FCC)の「TV番組配信市場での競争に関する第6回年次報告」にもとづいてを作成している。 米国TV、ケーブルTVの世帯普及概況(図表1)
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出展:Kagan Associates,1999年
■米国の多チャンネルTV番組配信(MVPD)事業者の動向 事業者の加入数の予測を図表2に示す。
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図表2:米国多チャンネルTV番組配信事業者の加入者数予測![]() 出展:Kagan Associates,1999年
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ケーブルTVオペレータの動向 図表2から、多くの多チャンネルビデオプログラム配信業者(MVPD)がでてきているが、ケーブルTVオペレータが依然として基本的な配信業者である。ケーブルTVシステムはアップグレードにより、デジタル伝送による高品質でチャネル容量を増加し、双方化でインターネットと電話サービスを提供している。サービスのバンドル化による提供が期待されているが、IP電話には数多くの技術的な問題を抱えているためCabelLabsはPacketCableと呼ぶケーブル施設を利用したIP電話標準仕様を策定しており、IP電話の提供テストを開始している状況である。したがって、多くのケーブルTVオペレータはIP電話の開発を待っている間に、回線交換ベースのケーブル電話を提供している。1999年6月に、Coxの住宅向け電話サービスであるCox Digital Telephoneは6市場で87万ホームパス、6万加入者にサービス提供している。 電話会社のケーブルTV事業(Cable Overbuilder) 衛星のDBS MMDS(Multichannel Multipoint Distribution Service) SMATV(Satellite Master Antena Television) |
■ケーブルTV市場の競争状況 ◇Cable Overbuilder Cable Overbuilderの発生経緯 2番目のフランチャイズライセンスを取得するCable Overbuildは1990年半ば以降、米国内でよく見られるようになってきた。事業者の多くは、電話会社と公益事業者である。アイオワ、オハイオ、ミシガン州内の市町村が、既存のケーブルTV事業者のサービスに不満を募らせた結果、2番目のフランチャイズライセンスを与えてきている。Iowa Association of Municipal Utilitiesでは、Cable Overbuilderの必要性の大きな理由に以下の4点をあげ、1994年以降、アイオワ州内の市町村で市営ケーブルTV事業が認可されてきている。
Overbuilderのタイプ
Open Video Systemライセンス * 実効的な競争とは以下の条件を満たす。
Cable Overbuilderの活動状況
◇MVPD配信市場での競争の実態
競争事例:Ameritech vs AT&T-BIS 競争事例:RCN vs Time Warner Cable 競争事例:Adelphia Cable vs DirecTV 競争事例:市内電話会社+衛星DBS vs ケーブルTVオペレータ ◇MDU(Multiple Dwelling Unit:共同居住単位)市場での競争の実態 これまで、ケーブルTVオペレータとSMATVオペレーターがMDU加入者にサービスを提供してきた。DBSは全米に配信できるがDBSシグナルが届く見通しがよくないと受信できないことと、ローカルTVを配信できなかったことから、MDUでは利用されてこなかった。市内電話会社やSMATVはDBSと共同でMDUにサービス提供する提携をおこなってきている。この提携で、市内電話会社はTV、電話、データを含むワンストップショッピングの提供を可能としている。DBSのDirecTVとEchoStarでは、MDU市場のシェアーを1999年の1%から2007年には9%まで増大すると期待している。
MDU市場では、既存のケーブルTVオペレータがMDU所有者と排他的な契約を結んでいたり、構内配線にアクセスさせないようにするために、lockboxes(鍵箱)の除去を拒むことでMDU内の既存の構内配線を他競争事業者は利用できない(構内配線の2重化のコストは高くつく)ようにするなどの新規参入者にとって不利な条件が多い。このため、Ameritech、BellSouth、RCNなどで構成するCoalition of Wireline and Wireless Overbuilders(CCC)は、既存のケーブルTVオペレータを非難している。
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■TV番組購入市場での競争実態 クラスタリングによるシステム集約化の進展 大手ケーブルTVオペレータはクラスタリングという散在する自社が保有しているフランチャイズ地域を売却したり交換したりして、集約化し、規模の経済を実現しつつある。この結果、TV番組の調達などで、市内電話会社などの新規参入者にコスト面で優位な立場にたっている。 番組配信に衛星から光ファイバー経由に切り替て他事業者がアクセスし難くしていく 市場の垂直統合化が競争を阻害している 図表3:上位20TV番組の加入者数とMSOの保有率
多くのMVPDsのTV番組はMSO、放送事業者等12社の支配下にある。例えば、加入数でみた上位50TV番組のうち、12社が46も保有している。 事例:地域のスポーツ番組 事例:ニュース番組 |
情報流通ネットワーク研究担当 シニアリサーチャー 段野 幹男 e-mail:danno@icr.co.jp (入稿:2000.5) |
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