1.放送であって「放送」とはちょっと違うデータ放送
データ放送は、音声、その他の音響、文字、図解そのほかの影像または信号を放送波で一斉配信するサービスである。データ放送と言っても、利用する電波によってその利用形態も異なるが、ここでは、画像を中心としたサービスを紹介しよう。データ放送では、いわゆる「放送」と違い伝送されたデータが画面にそのまま映し出されるのではなく、送られてきたデータは受像機やモデムに内蔵されたメモリーに一旦蓄積される。このデータは、自動的に更新されて行くし、利用者がどの情報を欲しいかをあらかじめ設定しておくこともできる。利用者は、利用したいときに、データ放送のメニューをクリックすることで、蓄積されたファイルを開いて内容を見れば良い。また、希望すれば、電話線などの通信回線を利用して放送局やそのほかの情報源にアクセスできる。端末として、テレビ受像機を含むパソコン、ファミコン、専用端末などの固定端末のほか、カーナビやPDAなどの移動体端末など多種多様な端末が利用できる。
実は、データ放送は、すでに10年前から文字放送や衛星放送の電波を利用して始められていた。このときは、視聴覚障害者向けの情報を送ったり、ゲームソフトを送ったり、かなり小さな範囲の人々が対象であったのだけれど、今度、テレビ端末を利用するデータ放送がより、身近なものなりそうだ(でも、しばらくはニッチな市場だと思います)。テレビ端末を利用した画像を中心とするデータ放送は、昨年のテレビ東京の「ITビジョン」を皮切りに次々と立ち上がっている。テレビ朝日が97年6月、TBSが10月に本格サービスを開始。通信衛星を利用した「パーフェクPC」も10月に実験を開始している。米国でも、インテルを中心として開発された「インターキャスト」方式を利用したサービスが昨年のアトランタ・オリンピックからすでにサービスを開始している。また、マイクロソフトがデータ放送の普及を押し進める力となると見られている。「Windows98」では、地上波、衛星、CATVのデータ放送受信機能「TV Viewer」が標準装備されるようになる。
データ放送は、端末までのデータ配信サービスであるのだけれど、サービスとした見たときデータ放送は、双方向サービスなのである。利用者までの下り回線はもちろん放送波。上り回線には電話線・ISDNなどをアクセス回線とした通信サービスをしばしば利用しているのだ。これらのは、利用者の端末で接しているが、利用者はデータ放送の画面上のボタンをクリックするだけで、モデムが自動的に電話を放送局のサーバーやインターネット・アクセス・プロバイダーにダイヤルしてくれており、回線はいわゆる「シームレス」に接続されている。
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