このような考え方に対しては、議論が混乱して原告の名誉が回復されないこともあるのではないかという批判がありうる、しかしXの名誉は最終的にはY1に対する法的手段によって回復されれば足りる。確定判決がなされればその結果を自ら当該フォーラムに書き込めばよいのであり、これ以上の名誉回復手段は無いであろう。
　シスオペが発言を削除してよいのは明確に法令に違犯していると判断できるものだけに限られるべきである。その具体例としては近時話題となっている少年法61条に違反するような氏名の書き込みやパソコンソフトの違法コピーのアップロード(発言にファイルを添付している場合など)が挙げられよう。

　判旨の理論を押し進めるとパソコン通信会社、シスオペとも萎縮して、問題を起こしそうな発言はすべて削除するという対策を取らざるをえなくなり、健全な議論すら制限しかねない恐れが出てくる。現に本判決後、会員規約を改定する通信業者が出てきており、事なかれ主義の過剰な発言削除も見受けられるようになっている。パソコン通信の電子会議は思想の自由市場であるべきであり、その誰もが自由に発言できるという特性に注目した判断が望まれるのではないだろうか。

現在ニフティなど被告らは判決を不服として控訴中であり、上級審の判断が注目される。

• 訴状
• いわゆるニフティ裁判について(関係者による事件の背景などの解説)
• 訴え提起時の一橋大学白田氏による論評
  「ネットワーク上の名誉毀損と管理者の責任」

  参考：白田氏の論文は大学院ゼミのレジュメとして作製されたもので、作成時点がかなり旧いものであることをお断りしておきたい。最新のアメリカの情報につい ては白田秀彰「情報テクノロジーの進展と法的課題」堀部政男編『情報公開･プライバシーの比較法』日本評論社(1996)377頁所収の特に第6節を参照のこと。
  なお、現在思想フォーラムでなされたという白田氏の上記論文への批判記事について調査中である。発見できればその情報を許諾を得て転載するなどの手段で本ページで紹介する予定である。なお、貴重な情報を提供してくださった白田氏にはここで感謝の意を表したい。

• 判決文を紹介するもの(小樽商科大学町村先生)
• 判決文を紹介するもの(NIFTY-Serve　現代思想フォーラム名誉毀損事件裁判資料)
• 牧野二郎弁護士による判例批評
• 公序良俗という危険

（入稿：1997.7）