トレンド情報-シリーズ[1997年]

[メガコンペティションは今?]
[第1回]メガコンペティションは今?

(1997.5)
  1. 「BT/MCI合併発足を前にテレフォニカとの提携を発表」
  2. 「競争環境の整備に努めるITU」
「BT/MCI合併発足を前にテレフォニカとの提携を発表」
英国BTと米国MCI及びスペインのテレフォニカは、北米・ヨーロッパ・南米市場に3社の地歩を築く戦略的提携に調印した。97年4月18日に発表された合意は、AT&T=WPパートナーズグループに少なからず打撃を与え、さらに連動してグローバル・メガキャリアーM&Aをもたらすと見られる。

BT/MCI/テレフォニカ提携の要点
 British Telecommunications plc、MCI Communications Corp.、Telefonica SA3社が調印した協定の主要点は次のとおり。
  1. BTは約4.5億ドルでテレフォニカ株式の2%を買い取り、テレフォニカはほぼ同額でBT株式の1%を買い取る。
  2. テレフォニカの国際通信子会社TISA(Telefonoca International)とMCIは米州対象通信会社Telefonica PanamericanaーMCIを折半出資で設立し、北米・南米17カ国に広がる通信網を建設する。
  3. TISAは、MCIとメキシコ最大手金融グループバナッチイ(Grupo Financiero Banamex-Accival SA)の合弁通信会社アヴァンテル(Avantel)の株式引受権(33%)を得る 。
 上記合意と並行して二つの合意がなされた。一つはテレフォニカとポルトガル・テレコムの株式持ち合い協定で、テレフォニカがポルトガル・テレコムの株式の3.5%を取得し、ポルトガル・テレコムがテレフォニカの株式の1%を取得することなった。第二はBT/MCIの現行提携事業Concert Communications Servicesとポルトガル・テレコムの提携である。
 したがってBT/MCI/テレフォニカ提携がEU独禁・通信規制承認を得るには時間がかかり、条件も課されよう。96年11月3日合意のBT/MCI合併は、5月14日EU欧州委員会の承認を得たが、大西洋横断ケーブルの他事業者に対する提供と言う条件がついた。

BT/MCI/テレフォニカ提携のインパクト
 ボンフィールドBT社長は「現在350億ドル、2000年には600億ドルに達する南米市場に足掛りを得た」と言い、ロバーツMCI会長は「我々は地域網と世界網を合体する新しい経営モデルを創造する」と語り、ヴィアロンガテレフォニカ会長は「この提携でテレフォニカはスペイン語圏のリーダーになる」と誇る。中南米ではメキシコとブラジルが電話大国である。両市場へのアクセスはBT/MCI/テレフォニカ組に重みをつけるが、具体的展開はこれからである。

 メキシコは、通信改革法(95年6月発効)により長距離市場(規模約40億ドル)を開放し(市内電話市場は既存事業者Telmexに2026年まで独占を保証)、アヴァンテルが新規参入第一号である。しかし、スプリントと提携したTelmex、鉄鋼メーカーとのAT&T合弁(49%)アレストラ、金融グループとのGTE合弁(24.5%)ユニコム、セルラー会社とのベル・アトランティック合弁(42%)イウサテルなど合計7社の乱立である。同一財閥(Garza Sada)系列のアレストラとユニコムが提携・合併すれば、Telmexはシェアを奪われ、アヴァンテルは苦戦を免れないと言う見方もある。
 ブラジルは、97年に入って戦略目標を絞っているドイツ・テレコムが第一の標的と明言しており、フランス・テレコム、スプリントとの合弁グローバル・ワンもこれに乗じる構えであり、メキシコ同様の競争となろう。

 テレフォニカのユニソース離脱は、AT&T-WPパートナーズグループにとって痛手である。オランダPTT会長は「ユニソース売上高といった事業上は大したことないが、表向きと士気の点で不幸なこと」と言う。

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(関西大学総合情報学部教授 高橋洋文)

(入稿:1997.5)

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