トレンド情報-シリーズ[1997年] |
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(1997.11)
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三つ巴のMCI争奪戦は、ワールドコムが買値を23%引き上げたのをMCIが承諾し、正にカネが物を言う決着となった。今後のBTの対応とテレフォニカ提携の行方が注目される。
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1.ワールドコムが買収提案額を23%引き上げて決着 97年10月15日以来MCIの買収合戦は、MCI1株当たりの買値がワールドコム41.5ドル、GTE40ドル、BT37ドルと三つ巴になっていたが、11月9日にワールドコムが51ドル(23%up)に引き上げ、翌11月10日にMCI取締役会がこれを受け入れ、BTも合意したため決着することとなった。債務肩代りを含めるとワールドコムの支払額は418億ドルに達するものとみられる。 ワールドコム/MCI合併についての両社の発表文の要点は次のとおりである。 合併協定
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2.BTのグローバル戦略の今後 BTは合併実施の寸前にパートナーを失い、MCI持株売却と違約金(4.65億ドル)で合計約70億ドルを手にする。4年間の努力が税引き前利益22.5億ドルを生みだし、「株主の利益」になったのだが、米国市場への手がかりは再構築しなければならない。 BTはGTE・MCIとの三者提携を期待していたとみられるが、MCIワールドコム合併が覆える可能性はまずない。発表されてはいないが、MCIが合併協定を破棄した場合、ワールドコムに違約金7.5億ドルとBTへの違約金4.65億ドルの払戻しを支払う。また、1998年末まで規制上の承認手続が得られない場合、ワールドコムはMCIに16億ドル支払うことになっていると言う。 今後のBTの対応は、(1)MCIワールドコムの存在を前提にGTE、アメリテック、SBCコミュニケーションズ、ベル・アトランティックなどの市内電話会社 との提携を図る、(2)さしむき米国市場はMCIないしMCIワールドコムへの委託販売でしのぎ、中南米やアジアでのパートナー獲得に注力する、の二つの方向が考えられる。対応(1)のカギはMCIワールドコムの台頭に対する他社の警戒心が戦略的提携をどこまで促進するかである。AT&Tにしても、M&A依存の戦略はとらないとしているが、BTとの交渉の噂が絶えない。対応(2)では、中南米戦略のカギはBT/MCI合併に基盤を置くテレフォニカ提携の再構築である。既定計画の提携当事者はMCIだったため、MCIワールドコムとBTの両者がヴィロンガテレフォニカ会長を追う形になっている。アジア戦略の焦点は、NTTへの接近とC&W提携の再交渉であろう。 MCIワールドコムの合併実施まで間があるので、BTには戦略を練り直す時間がある。MCIワールドコム合併の発表後、BTはコンサート・コミュニケーションズのMCI持株24.9%の買収を提案した事実を認めた。価額未定で、実施時期はMCIワールドコム合併手続完了後なので、現在は権利の存在を誇示している感じである。 MCI争奪戦はカネで決まったが、これからのBTの戦略的対応こそ、知力を尽くした戦いになると思われる。 |
(関西大学総合情報学部教授 高橋洋文) (入稿:1997.11) |
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